井上順孝編『世界の宗教101物語』
新書館、1997年、1,785円。


目次

[総説]
古代宗教の世界(松村一男)
インド宗教の展開(宮元啓一)
キリスト教の展開(挽地茂男)
修道会とは―修道会の始まりと広がり(宮崎賢太郎)
プロテスタントの起源と展開(山中弘)
多様な中国仏教(池澤優)
仏教と日本人(星野英紀)
神道とは何か(井上順孝)
新宗教の展開(井上順孝)

[内容]
古代宗教
(ゾロアスター教、マニ教、ミトラ教)
ユダヤ教
(古代ユダヤ教、パリサイ派、エッセネ派、サドカイ派、アシュケナージ派、スファラディ、改革派、ハシディズム、正統派、保守派)
インド宗教
(バラモン教、ジャイナ教)
仏教
(原始仏教、上座部仏教、大乗仏教、密教)
チベット宗教
(ボン教)
仏教
(サキャ派、カギュ派、ゲルク派)
インド宗教
(ヒンドゥー教、ヴィシュヌ派、シヴァ派、シャクティ派、シーク派)
キリスト教
(原始キリスト教、グノーシス主義、アリウス派、アルメニア教会、コプト教会、エチオピア教会、ネストリウス派)
キリスト教・カトリック
(ローマ・カトリック、東方典礼カトリック教会)
キリスト教、修道会
(フランシスコ派、ドミニコ会、イエズス会、パリ外国宣教教会、ベネディクト会、カルトゥジオ会、シトー会、アウグスチノ会、ヨハネ騎士修道会、カルメル派、オラトリオ会、サレジオ会、神言会)
キリスト教・正教会
(東方正教会、ギリシア正教会、ロシア正教会、アルバニア正教会、ウクライナ正教会、コンスタンチノープル正教会、セルビア正教会、ブルガリア正教会、ルーマニア正教会)
キリスト教・プロテスタント
(改革派教会、ルーテル派教会、イギリス国教会、メソディズム、バプテスト派、会衆派、アナバプテスト、クエーカー、ユニテリアン)
キリスト教
(ワルドー派、カタリ派、フス派、メノナイト、ツゥイングリ派、スコットランド教会、シェーカーズ、モラビア兄弟団、キャンベル派、ホーリネス、オックスフォード運動、ペンテコステ派)
キリスト教系新宗教
(エホバの証人、キリスト教科学、モルモン教、アーミッシュ、セブンスデー・アドベンチスト教会、救世軍)
アメリカの新宗教
(サイエントロジー)
イスラーム
(初期イスラーム、スンニー派、ハワーリジュ派、ムータジラ学派、ワハーブ派、アフマディーヤ、アフマディーヤ教団・エジプト、シーア派、十二イマーム派、ザイド派、イスマーイール派、ニザール派、イスファハーン学派、シャイヒー派、アフバール学派、アハレ・ハック、ドルーズ教、ヌサイリー教)
仏教
(浄土教、禅宗、天台宗・中国)
儒教
(儒教、朱子学、陽明学)
中国宗教
(道教、白蓮教、太平道、五斗米道、浄明道、真大道教、太一教、全真教)
中国近代宗教(一貫道)
アジアの新宗教
(和尚ラジニーシ・ムーブメント、サイババ運動、ホアハオ教、ラーマクリシュナ・ミッション、バハーイ教、クリシュナ意識国際宗教協会、カオダイ教)
韓国近代宗教
(曹渓宗、世界基督教統一神霊協会、圓仏教、純福音教会、東学)
ラテンアメリカの宗教
(ラスタファリ運動、ブードゥー教、ウンバンダ、カンドンブレ、マクンバ)
アフリカの宗教
(キンバング教会、ムリディーヤ、ハリス教、基督の十字架軍教会、ブウィティ運動、ケルビム・セラフィム、デイマチスト教会、天上のキリスト教会、十字架と星の同朋団、ディーパー・ライフ聖書協会)
日本仏教
(奈良仏教、真言宗、天台宗、浄土宗、浄土真宗、曹洞宗、日蓮宗、臨済宗、時宗、真宗大谷派、浄土真宗本願寺派、黄檗宗、顕本法華宗、日蓮正宗、日蓮宗不受不施派、法華宗、融通念仏宗)
日本キリスト教
(カトリック中央協議会、日本ハリストス正教会、日本基督教団、日本福音ルーテル教会、イエス之御霊教会教団、キリストの幕屋)
神道
(伊勢神宮、出雲大社、北野天満宮、明治神宮、靖国神社、賀茂社、春日大社、石清水八幡宮、平安神宮、鶴岡八幡宮、熱田神宮、伊勢神道、両部神道、吉田神道、垂加神道、復古神道、烏伝神道、葛城神道、土御門神道、黒住教、禊教、御嶽教、出雲大社教、神習教、神道修成派、神理教、扶桑教)
修験道
(修験道、当山派、本山派)
日本の新宗教
(天理教、創価学会、立正佼成会、大本、生長の家、世界救世教、崇教真光、霊友会、真如苑、幸福の科学、オウム真理教、金光教、ほんみち、ほんぶしん、円応教、PL教団、天照皇大神宮教、善隣教、世界真光文明教団、白光真宏会、ワールドメイト、神慈秀明会、大山ネヅノ命神示教会、本門仏立宗、解脱会、仏所護念会、妙智会、妙道会、阿含宗)



【はしがきから】
時代・社会で姿を変える宗教に迫る
井上順孝
 宗教の歴史は実に興味深い。あるときある文化のもとで産声をあげた宗教が、まるで生き物のように姿を変えて、地球上のいろいろな地域に広まっている。また同じ民族、国家の中で長い間信仰されてきた宗教も、時代の移り変わりとともに、その内実をどんどん変化させていく。したがって、仏教、キリスト教、イスラームなどと一口に言っても、実際には個々の姿は実に多様であって、それは想像を超えるものがある。宗教名が同じだから、信仰形態も同じようなものだろうという先入見は、まずもって捨て去ることから、宗教史への理解は始まるといってもいいだろう。
 本書は古今東西の宗教を、ある程度バランスを考えながら、できるだけ網羅的に扱ってはいるが、実はひそかに狙った宗教史へのアプローチが背後にあった。それは、宗教がどんどん姿を変えていくとすれば、その節目節目に注目すると、どのような宗教史が描かれるかという視点である。記述の偏りは大きくなるのは承知の上で、この視点から、世界宗教史を概括してみようと考えたのである。だから、一種の「世界宗教運動ミニ事典」を目指したことになる。無謀な試みかもしれないが、おもしろさは抜群であることに、ご賛同いただけると思っている。
 そうすると、通常、分派とか分裂、あるいは再生運動などと呼ばれる現象は、それぞれの時代、社会において必然的に生まれた新しい宗教の動きとして、とらえられることになる。仏教に上座部仏教、大乗仏教という大きな違いが生じ、キリスト教にカトリック、オーソドックス、プロテスタントといった流れが生まれ、イスラームにスンニ派とシーア派、さらに後者の細分化という現象が生じたのも、多民族に受け入れられた宗教の当然の展開である。
 それぞれの時代の人間は、たえずそれまでの宗教の歴史を足場にしながら、新たな営みを創造していく。すなわち、自分たちの与えられた条件、つまりそのときどきの世界認識、社会状況、政治的・経済的条件などのもとで、宗教についての見方を「作り上げ」、ときに新しい係わりを「創造して」いく。宗教史をそのような営みの総体ととらえると、あまた出現した宗教運動や改革運動や再生運動といったものが、非常に興味深いものとなる。また、近代になって、宗教運動が多発するのも、人間を取り囲む情報環境が、複雑になっていくことが深く関係している。たえず宗教との新しい係わりが模索されやすい状況となるからである。
 古い宗教も繰り返し新しい解釈を受けることになる。その解釈をめぐって伝統派と革新派が生じるというのは、いろいろな宗教において観察されることである。革新派が別の宗教を生むこともある。また、創造性の強い人物が、同時代の他の宗教に影響を受けつつ、新しい流れを作ることもある。宗教は今後もそうした動きを続けるだろう。そこには世界を理解しようとしたり、自分の存在意義を確認しようとしたりする人間の営みの、もっともラジカルな姿の一つがみられると言っていいだろう。
 編者がこのような発想をもつのも、長年新宗教研究にたずさわってきたことが大きく関係している。新宗教というのは、近代に新しく興った運動ではあるが、教えや理念、また儀礼などの大半は、伝統的なものの「再利用」、ときに「再活性化」とみなせるのである。伝統宗教を否定していることなど滅多になく、それを現代社会に合わせつつ、むしろ自分たちこそ「本来の」教えを広めようとしているのだ、と主張するのが通例である。
 新宗教は近代世界に出現したものだが、それ以前の宗教の歴史にも、このようなパターンは数多く見いだされる。仏教にしてもキリスト教にしても、その時点における伝統宗教と無関係で出現したわけではない。伝統宗教を前提としながらも、一方で、それぞれの時代条件の中で、新たな宗教的創造をなしたわけである。本書を読めば、これまでの世界における宗教の展開の多くが、こうしたダイナミズムによって記述されうることが分かるであろう。
 全体として、日本宗教については、やや細かい運動まで含めた。また時代としては近代以降にやや比重がある。主流派の中でのさまざまな流れよりは、分派・異端的にみなされた運動がより多く扱われている。これらは意図的なものであり、宗教のたえず動いている側面に焦点を当てようとした結果である。従来の宗教史的記述からすれば、当然含められるべき「派」や「教団」が落ちていることもあろうが、それはこうした理由によることを、ご理解いただきたい。
 それぞれの分野でご活躍の多くの執筆者に依頼したので、関心、視点の置き方はいくぶん異ならざるを得ない。しかし、基本的には、編者のこの趣旨を理解して書いていただいたと考えている。つねに変容する宗教という視点を下敷きにして編集された本書が、宗教史のダイナミックな理解への一助となることを願っている。

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