インターネット時代の宗教(新書館、2000年6月)





国際宗教研究所編・井上順孝責任編集

目次

序章 インターネットが宗教に及ぼす影響 井上順孝
はじめに
一、激変したメディア環境
二、「インターネット時代」への突入
三、ゆらぐ信頼性と権威
四、ネット型組織とサイバー宗教―むすびに代えて

シンポジウム「インターネット時代の宗教」
T.発題
バーチャル参拝はいけないか?/神道のネットワーク/ポストエイオス研究会/喜びと悩み/
遅ればせながらの参入/メーリングリストの厄介さ/教会が発するおびただしい情報/
インターネットへの期待と恐れ/オンライン・マガジン方式/サイバー上の「ふれあい公園」/
時空を超えるインターネット/インターネットの諸特徴の確認/掲示板への対処法/
宗教サイトの現状/受信者の立場から/ユーザーにとっての信頼性/
「まずはインターネット」の世代/ラークは何をやるか/情報のなかの存在/

U.討議
コミュニケーションがどう変わるのか?/情報統制をするのか?/「宗門にもの申す」/
ライフ・スペース問題/カルト的な宗教団体/社会的問題への発言/
なぜ既成教団は動きが鈍いか/ネット上での発言への感覚/日常との連続と乖離/
インターネットへの依存/安らぎのサイン/問い返される聖性/

補論
インターネット上の宗教情報の現状―ホームページを中心に― 黒崎浩行
はじめに
一、日本の宗教団体の公式ホームページ
@数量的な面から A内容の面から
二、世界の宗教のホームページ
@キリスト教 Aイスラーム、ユダヤ教 B仏教
むすびにかえて
  表1 日本の包括宗教団体・公式ホームページ一覧
表2 宗教別リンク集
表3 世界の主な宗教のホームページ

インターネットの落とし穴 永崎研宣
一、便利さの反面
二、情報への判断
三、ソフトウェアの「穴」
四、ウィルス対策
五、むすび

あとがき


あとがき

 本書は、一九九九年十一月十二日(金)に、財団法人国際宗教研究所の主催で約四時間にわたって行なわれた公開シンポジウム「インターネット時代の宗教」の討議内容をもとにして、あらたに書き下ろされた三篇を加えてできあがったものである。

 シンポジウムは東京都文京区小石川の伝通院繊月会館で開催された。当日はパネリストの間で、きわめて熱心に討論が交わされ、フロアからも次々と鋭い質問が提起された。多くの関係者が非常な興味をもってこのシンポジウムの内容に耳を傾けていたことが実感された。

 テーマがテーマであるので、会場で直接インターネットに接続できるように、あらかじめ準備しておいた。発題者の話に合わせながら、関連するホームページをリアルタイムで大型プロジェクターで映しだした。さまざまな宗教関連のサイトや、パネリストが開設しているホームページも紹介された。そうした道具立てもあって、個々のテーマについて具体性に富んだ議論が展開された。また、シンポジウムの様子はCS(通信衛星)放送の番組用にも収録され、二〇〇〇年四月五日にスカイパーフェクTV(チャンネル216)で二時間にわたって放映された。

 当日のパネリストは以下の通りである。(敬称略)

発題

小林泰善(浄土真宗本願寺派長念寺住職)

設楽実(真如苑企画部社会交流課)

松岡里枝(愛宕神社権禰宜)

松隈康史(カトリック中央協議会広報部)

コメンテータ

井上順孝(国学院大学日本文化研究所教授)

紀藤正樹(弁護士)

司会              

石井研士(国学院大学文学部助教授)

 シンポジウムは、実際に宗教団体ないし一定の組織のホームページ作成になんらかの形で関わっている方々による発題があり、研究者と弁護士という宗教界からは距離を置いた立場からのコメントがなされるという形で始まった。また、フロアの参加者は、宗教関係者、報道関係者、法曹関係者、研究者、学生などと多様で、それぞれの立場から質問や意見が出された。本書をお読みいただいた方は、インターネットという新しいツールへの、期待と不安とが入り混じった討議内容となったことがお分かりいただけると思う。

 シンポジウムは大変に興味深いものであったが、日本の宗教教団を包むインターネット事情をもう少し幅広い視点から見る必要性があったので、本書の編集過程で書き下ろしの三篇を加えた。この企画の立案者としての立場から編集者が序説を書いた。インターネットはきわめて便利な反面、落とし穴も各所にある。その点については永崎研宣氏に触れてもらった。同氏は、ラークのコンピュータシステムの構築に関わっており、インターネットが宗教や宗教研究に与える影響には早くから注目してきた人である。また、黒崎浩行氏には、日本の宗教教団がインターネットにどう関わっているかの現状をマクロに紹介してもらった。同氏は、国学院大学日本文化研究所の「インターネットによる学術情報発信」のプロジェクトで、日頃からインターネットがもたらす文化的影響に関心を抱いている研究者である。宗教関係のサイトを提起的に収集するなどしておられる。

 また、このシンポジウムが行なわれた会場は、国際宗教研究所がその事業として行なっている宗教情報リサーチセンター(Religious Information Research Center・略称ラーク)の階下に当たったこともあり、ラークでの日常業務に携わっている研究員(大高まどか、田村貴紀、中山郁、藤田庄市、前川理子、森葉月、森瑞枝、弓山達也の各氏)に、この新しい試みに裏方として活躍していただいた。またシンポジウムにともなうさまざまな準備に遠藤潤、大谷栄一両氏にもお手伝いいただいた。これらの各氏に御礼申し上げたい。

 宗教とインターネットをめぐる問題は、今後本格化していくと予想される。ここでの議論がこれからどう展開するか、それはインターネットを使う技術の問題だけではなく、宗教が変容していく社会にどう対応していくかという姿勢によっても変わっていく。願わくは、新しいツールが、より好ましい形でこれからの宗教に関わっていって欲しいものである。

 最後になったが、本書の意義を認めていただき、刊行を積極的に引き受けていただいた新書館の小柳学氏に、篤く御礼申し上げたい。



戻る