「戦争論」の正しい読み方


評価と「映像のなかの戦争--美化の手法」
時間:14:00〜17:00
場所:全水道会館
料金:500円
主催:
先日、古本屋に行くと小林よしのりの「戦争論」が出ていた。まだちょっと高 めだったな。(^_^; 日曜日に、全水道会館で「戦争論」の講演会に参加しましたが、おもしろかっ たです。小林よしのり氏の変容の仕方というか、論調がだんだんと主義に引っ 張られるという主張は、確かによくわかる。 ただ「戦争論」に関しては、天皇制度にほとんど触れていない話が出ていた。 この日は古い映画も拝見できましたが、太平洋戦争当時でさえ、あの検閲の厳 しかった(といっても体験しているわけでもないけど)当時に、日本軍の行っ た蛮行を暗示するような映像で、映画を作った監督が居たのには驚かされる。 「戦ふ兵隊」('39東宝文化映画部) 実は、日本軍人が戦っている映画ではなく、日本軍が侵攻することで中国大陸 の人達がどんな状況になっているかを、描いている。 もちろん、直接手を下している場面はない(当たり前ですがそんな映像がその まま、検閲を逃れるわけがない)ですが、家が燃えている場面、村からその煙 が筋となっていくつも立ちあがっている、難民となって逃れる中国系?と思わ れる人達。 暗示的な映像で、被害者側に立った映画を作ってますが、もちろん暗示的であ っても戦争を否定するようなものは検閲の対象となり、監督は投獄されたそう です。 また 「土と兵隊」('39日活多摩川) では、原作の火野葦平の「土と兵隊」の内容が既に検閲を受けて、軍を批判す るようなものを除かれる。その上で、映画化すると、ただただ軍人が大陸を進 軍し続ける映画になる。 たまに中国の兵士がちらりと出ても、ほとんど描かれない。 戦う相手の見えない映画。 見ないことで、戦闘による被害者の存在も非常に見え難くなる。 私達が知っているような戦争映画とは異質。原作の「土と兵隊」シリーズでは 、投降してきた中国人兵士の少年を、日本軍が殺す場面もあるそうですが、そ れも除かれているために、とにかく問題のありそうなものは全部、検閲の対象 になる。(^_^; また、戦争に行った証言者のビデオで、東南アジアで中国系の住民をスパイ容 疑で殺害するのですが、400名前後をくぼ地状態の土地に押し込めて、殺す。 しかし実行する側の兵士は、殺意が起きない。 それでも陛下の命令という形で強行させる。とにかく当時はなんでもかんでも 天皇陛下のためにという口実でどんな命令でも実行させた。陛下からすれば、 そんな命令を直接だすわけもないのですが、末端まで「無残な命令」を実行さ せるために名前を使って実行させた。 証言をしている元兵士は、半数は殺せずにそのまま生き埋めにしたのでは?と 語ってます。 私達が、今そんな命令を出されて、何の理由もなく(なにしろ400名前後の中国 系住民に何かの落ち度があって殺しているわけでもない)ただゲリラやスパイの 容疑で証拠もなしに、殺せるのだろうか?と思うと怖くなる。 兵士の命令違反はもちろん重罰ですから、へたすると兵士自身の命の問題になり かねないですが、そんなことを強制的にやらされる一般兵士もたまったもんじゃ ないです。 戦争も嫌ですが、なにかの口実で相手を殺さなくていけなくなる、状況も私は怖 いです。侵略戦争の悲惨さは、加害者側だって怖気をふるうほど嫌なものなので しょう。 証言をしている元兵士は、涙ぐみながら当時の状況を語っていました。(;_;)

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