アムネスティ・インターナショナル日本による声明
 
「今こそ、アフガニスタン難民に難民認定を!法務省申し入れ行動」に寄せて


今こそ、難民としての保護を求める人びとの権利保障を
―「テロリズムとの戦い」という名の下に、新たな人権侵害を引き起こしてはならない―


 
 
 米国における9月11日の同時多発攻撃に端を発する一連の情勢を受け、日本においても人権の危機が訪れていることを、アムネスティ・インターナショナルは懸念している。「テロリズムとの戦い」が声高に叫ばれている今こそ、弱い立場に置かれやすい人びとの人権保障を徹底する措置が取られるべきである。アムネスティは日本政府に対し、特に、難民としての保護を日本に求めるアフガニスタン出身者の処遇について細心の注意を払い、国際人権基準を遵守するよう求める。 

 首都圏近郊で10月3日、入国管理局により、アフガニスタンから日本に逃れてきた人びとに対する取締りが一斉に行われ、家宅捜索、取り調べなどを受けた上、9名が外国人収容施設に収容された。9名は全員、日本政府に難民申請を行ないその結果を待っている人びとであった。アフガニスタンからの難民申請者の多くは、タリバンによる人権侵害から逃れて、あるいはそれを恐れてやってきたと申し立てる人たちである。一連の取り調べと収容については、出入国管理法違反という説明が当局よりなされているが、その実態は予防拘禁とも受け取ることができる。収容された人びとが人権侵害を受ける恐れのある国へ送還される可能性も心配される。このような形での取り締まりは、日本政府も批准している難民条約をはじめ、国際人権基準に違反している。アムネスティは、この事件を含め、 
とりわけアフガニスタンやアラブ諸国出身者に対する入国管理局の取り締まりが厳しくなっているのではないかという懸念を抱いている。 

 今、日本を含む各国の政府に求められているのは、世界各地で報告されているような、人種偏見にもとづく暴力や脅迫は、決して許されないということを周知徹底することである。しかしながら今回の日本政府の行動は、逆に差別を助長し、新たな人権侵害を引き起こすことにつながり兼ねない。アムネスティは、各国政府に自国民を保護する義務があることを認める一方、「テロリズムとの戦い」のための措置が、新たな―とりわけ、難民としての保護を求める人びとの権利を含む、市民の基本的権利の制限などの―人権侵害を引き起こすことが決してないようにすることもまた、政府の義務であるはずであると考える。 

 したがってアムネスティは、日本政府に対し、難民としての保護を日本政府に求める人びと―とりわけアフガニスタン出身者―が適正な難民認定審査手続きにアクセスできることを保障するよう、強く要請する。特に、アフガニスタンにおけるこれまでの人権状況、ならびにこの間の情勢を踏まえ、現在日本政府に難民申請を行なっている人びとが強制送還されることにつながる可能性のある措置を取らないよう求める。 

 この間の情勢を受け、アフガニスタンにおけるこれまでの人権侵害や迫害の深刻さは、国際社会に対してあらためて明らかにされることとなった。日本在住のアフガニスタン出身の難民申請者たちは、これまですでに、そうした深刻な事実を示す供述や資料を提出してきた。アムネスティは、難民認定申請を取り扱う当局が、この機会に、それらの供述や資料を再度徹底的に見なおすことを求める。 

 自衛隊を動員してのアフガニスタン難民、国内避難民への支援に固執するだけはなく、人道を至上の価値とする姿勢を内外に示す意思があるのであれば、アフガニスタンの隣国が国境封鎖を解除するようはたらきかけることと同時に、難民としての保護を日本政府に求めるアフガニスタン出身者を適切に保護することが重要である。 
                                      以上 
 



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