アムネスティ・インターナショナル日本による声明
 

アフガニスタン人難民申請者を保護し、真の国際貢献を
 
―東京地裁による11月6日の決定と、東京入国管理局による即時抗告を受けて―


  
  
 アフガニスタン人難民申請者の処遇をめぐって日本の人権基準が問われている。アムネスティ・インターナショナル日本は日本政府に対し、難民申請者に対する非人道的な処遇を止めるよう求める。

 10月上旬から入国管理局の外国人収容施設に収容されていた在日アフガニスタン人難民申請者5名に対する収容令書発布処分の取り消し訴訟で、東京地裁は11月6日、収容令書の執行停止を決定した。しかし東京入国管理局は翌日、これを不服として東京高裁に即時抗告を行なった。東京地裁の決定は、難民条約の精神を十分に考慮し、それを国内法よりも上位の規範と位置付け、難民申請者が収容されることによって被る損害を認めたものであった。

 日本政府が、国際社会の一員として責任ある行動をとると標榜しているにもかかわらず、国際的な人権基準を尊重した東京地裁の決定を受け入れず、それとはまったく反対の措置を継続する姿勢を示したことを、アムネスティは憂慮している。国際社会は今、アフガニスタン難民の保護についてその責任を問われている。アムネスティは日本政府に対し、東京地裁による決定の趣旨を尊重し、入国管理行政実務において、難民条約をはじめとする国際的な人権基準を最大限に尊重することを求める。とりわけ難民申請者の収容については、アフガニスタン人のみならず、すべての難民申請者に対する収容措置を見なおすよう要請する。

 難民申請者を収容することは、その身体的な自由を奪うだけでなく、その権利を著しく制限するものであり、保護を求める手続きにおいて申請者に多くの制限を課すことにつながる。また、申請者に多大な身体的、精神的損害をあたえる。日本政府が締約国となっている難民条約などの国際的な人権基準は、難民申請者を収容することは、あくまで例外的な措置とされるべきであると規定している。特に今回のような、在留資格の有無のみを理由とした収容は、難民としての保護を求める人びとの苛酷な状況を理解しない措置であり、決して許されるべきではない。

 今回の収容は明らかに、9月11日の米国での同時多発攻撃を受け、在日アフガニスタン人を標的にし、予防拘禁とも言える形で行なわれている。これは特定の集団に対する差別的な措置であり、難民条約に違反している。「テロリズムとの闘い」の名の下に、難民申請者を出身国によって差別し、収容し取り調べるという実務が正当化されてはならない。

 アフガニスタンにおけるこれまでの人権状況、ならびにこの間の情勢を踏まえれば、現在日本政府に難民申請を行なっているアフガニスタン人については、強制送還につながる可能性のある措置を取るべきではない。在日アフガニスタン人難民申請者たちはこれまでに、アフガニスタンにおける深刻な事実を示す供述や資料を当局に提出している。アムネスティは日本政府に対し、アフガニスタン情勢についてより一層の正確な情報収集を行ない、これまでに提出されたそれらの供述や資料を再度徹底的に見なおすことを求める。

 国際社会の一員として日本政府が今なすべきことは、アフガニスタン出身者を標的とした取り締まりを強化し、彼らに対する非人道的な処遇を続けることではないはずである。アフガニスタンから逃れてきた人びとを積極的に保護する姿勢を示すことなしに、国際貢献を語るべきではない。

以上
 



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