カトリック大阪大司教区国際協力委員会
  

アフガン難民、アブドル・ハメド氏に退去強制令書発付
無期限収容を前提としたもう一つの迫害に抗議する
(2002年3月13日)


 
  
 アフガニスタン出身のハザラ人で、日本政府に難民認定申請をしていたハメド氏に対し、法務省は、昨日3月12日、強制退去命令を下した。
 
 ハメド氏は、アフガニスタンを脱出後、イランでの滞在を経て、パキスタンでカンフー道場を開設し、カンフーを教えて生活の糧を得ていたが、タリバンの勢力がパキスタンでも優勢になり危険を感じたことから、ドバイを経て日本に逃れてきた難民である。
 
 ハメド氏は、1月17日に難民不認定処分の告知とともに大阪入管に収容され、収容されたまま異議申出を行い、異議申出も却下された。入管に収容されながら、不認定処分を覆すに足る資料を収集、立証することは不可能であり、異議申出制度の実質的な否定である。
 
 ハメド氏の事例は、従来であれば確実に在留特別許可が与えられていた事例である。にもかかわらず、難民不認定のみならず、在特が拒否されたことは、「法務大臣の裁量」を口実にした在特制度の恣意的運用といわざるを得ない。
 
 現在アフガニスタンでは、タリバン政権は崩壊したとされるが、旧タリバン兵の武装解除は進んでいない。暫定政権側はさかんに状況が改善に向かっていると宣伝しているが、カブールその他で、ハザラ人の顔の皮を剥がして殺すなど、タリバン時代を彷彿とさせる残虐行為が頻発している。また、アフガニスタン各地で地域を支配する部族間の衝突も依然として続いている。1992年以降のアフガニスタン内戦の背景には長年にわたる民族差別が存在しており、内戦期を通じて繰り返されてきたタリバンらパシュトン人勢力やタジク人勢力によるハザラ人大量虐殺の真相解明はその端緒にすらついていない。また、現時点でアフガニスタン人を実質的に送還できる方途も存在しない。
 
 にもかかわらず今回退令処分が下されたことにより、アフガニスタン難民であるハメド氏は無期限に拘留され、自由を奪われることになる。これは重大な人権侵害である。入管のいわゆる「全件収容主義」がアフガニスタン人にとって新たな迫害でとなっていることを改め告発するとともに、ハメド氏の即時仮放免を要求する。
 
 



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