クルド難民弁護団声明
 

東京地裁3月8日の判決に関する
クルド難民弁護団の声明


 
  
声    明

 2002年3月8日、東京地方裁判所民事第2部は、トルコ国籍クルド人に対して法務大臣がなした難民の認定をしない処分を取り消す判決を言い渡した。当弁護団は、同判決を、心から歓迎する。
 
  トルコ共和国においてクルド人は、そのアイデンティティを否定され、クルド民族意識とその自治・独立を意図する活動は、厳しく禁圧されている。
 このような事情を考慮して、諸国はトルコ国籍クルド人の多くに対して難民として庇護を付与してきた。たとえば1996年における各国のトルコ国籍難民申請者は38,300人であり全ての難民申請の8%を占めており、このうち条約上の難民と認められた者は約19%でありこれは他の国の難民申請者の認定率19%と等しい。同年約8,000人のトルコ国籍難民申請者に対して条約上の理由または人道上の理由による難民認定がなされた。
 このような世界の趨勢に比べ、日本では、従来ひとりとしてトルコ国籍クルド人が難民の認定を受けたことがなかったことは、異常な低認定率であり、認定数であった。
 さらに、我が国で1996年からトルコ国籍クルド人難民認定申請者が増加したことに対し、今日まで同申請者の少なからぬ人数が検挙・収容されるという、異常な事態も経験した。現在も入国者収容所東日本入国管理センターには1年以上に渡ったて収容が続いているクルド人難民が2名おり、東京入国管理局収容場には、今回の判決の原告を含む3名のクルド人難民が、西日本入国管理センターには1名のクルド人難民が収容されいている。
 このような過酷な扱いは、日本がトルコと友好関係を有すること、トルコがアメリカ合衆国と軍事同盟関係にあり、アメリカ合衆国が、クルド民族主義活動のみならずクルド民間人を抑圧する目的に使用される武器をトルコ共和国に供与していること、などの背景に鑑みると、日本政府の政治的意向に左右されたものと疑わざるを得ない。
 今回の判決は、法務大臣が従来1人としてトルコ国籍クルド人を難民と認定しなかったことの不当であったことを、明らかにした。当弁護団は、今後法務大臣が、トルコ国籍クルド人について政治的配慮に左右されない公正な判断をすること、従前不認定となった申請者についても公正な基準によって再審査をすることを要求する。また、現在収容中の上記トルコ国籍クルド人難民を、速やかに解放することを要求する。
 

2002年3月9日
クルド難民弁護団
 



 市民団体声明indexに戻る アフガン難民問題indexに戻る