WCC・CCA声明
 

在日アフガニスタン難民の現状に関する
WCC・CCA声明(日本語訳)


 
  
1 私たちWCC(世界教会協議会)・CCA(アジア・キリスト教協議会)調査団は、日本におけるアフガニスタン難民問題にかかわる教会やNGOの代表者、弁護団、そして政府当局者と面談を行った。これらの方々からの説明と、この問題についての資料・論文・記事などを通して、日本政府の難民政策とその現状について理解を試みた。
 同時に私たちは、多くの政治家、人権擁護運動に取り組む人々、教会指導者、市民団体の代表者や個人が、人道法、とくにアフガニスタン難民の拘禁に関する人道法の推進擁護に熱心に取り組んでいることを知り、非常に勇気づけられた。
 
2 私たちは、今回の調査により、以下のことを認識した。
 
a アフガニスタンから日本への庇護希望者は、昨年1月から11月末までで計77名であるが、そのうち難民認定を受けたのは1名に過ぎない。また、他の国籍の庇護申請者も含めて、日本が難民条約を批准した1980年からの認定総数は260名ほどに過ぎない。これは、他の先進国と比較すると格段に低い。例えば、去年だけで、オランダは2万3626人、カナダ9345人、アメリカ4321人のアフガニスタン人を受け入れている。
 
b アフガニスタンからの庇護希望者は、難民認定申請中であるにもかかわらず、不当にも、入国管理局の収容所に拘禁されている。また、収容所内の拘禁状況に関しては、様々な問題が指摘されている。収容所内の医療体制は貧弱であり、拘禁された人の中には自殺未遂者も出るなど、国際人権規範に保障されている人権の確保にも懸念が持たれる状況である。
 国際人権法の規範・基準に照らし合わせれば、生存のために保護を求めている地位の不安定な庇護希望者、避難民や外国人の拘禁は、(それがUNHCRの規定する基準に基づいて行われているのでない限り)恣意的で不当なものとみなされることを指摘しておきたい。新たな庇護希望者の到来を防止するためといった、受け入れがたい理由による恣意的な拘禁は、人権侵害をもたらす。
 
c 日本の難民認定制度は、出入国管理法の中で取り扱われており、入管から独立した庇護希望者の状況を聞くための難民認定審査機関もない。私たちは、日本の難民認定のプロセスには再検討の余地があると考える。これは庇護申請者に対する透明性と公平性の確保と、国際人権法の順守という意味で重要である。
 
3 私たちは、以上を踏まえ、以下の見解を表明する。
 
a 日本政府はアフガニスタン復興支援に対して5億ドルの援助を約束した。私たちはアフガニスタンの悲劇的な状況に対する政府の人道的な姿勢を歓迎する。しかし一方、日本政府のこの人道的な姿勢が、日本への庇護希望者、難民の受け入れに関しては、必ずしも貫かれていないことを懸念する。
 
b アフガニスタンからの庇護希望者は、ターリバーン前政権に迫害された経験を持ち、そのためのトラウマを克服できないまま入管収容施設に収容された者もいる。上陸後、摘発を受けて拘禁された者、空港から直接収容所に送られ数カ月を経た者もいる。これは、日本が批准している難民条約の前提である難民保護の精神に基づき、十分かつ公平な審査を経てなされた結果であるのかどうか精査すべきである。日本政府は、難民審査の全過程において人道的な姿勢が確保されるよう、日本が批准している難民条約が宣言する人道主義原則に基づいて、難民政策を検討すべきである。
 
c 2月21日、UNHCR日本・韓国事務所は、在日アフガニスタン難民の処遇について懸念を表明した。庇護希望者と難民の恣意的な拘禁はやめるべきである。この立場は、この世界中の様々な地域で広く受け入れられている国際的なものである。私たちは、日本政府がアフガニスタン庇護希望者を、判決が出るまでの間解放することを要請する。いずれにせよ、アフガニスタンの不安定な状態を考え、庇護希望者を送り返すことは決してしないよう、強く勧告する。
 
 現在拘禁されている庇護希望者たちは、一刻も早く解放され、難民として認定され、人道的な観点からの生活支援を受けるべきである。彼らを本国に送還するのは、アフガニスタンに永続的な平和と真に民主的で多民族共生の原則にたつ政府が確立されるまで中止すべきである。
 
以上
 
2002年3月11日
 
WCC国際問題担当幹事 クレメント=ジョン
CCA総幹事 アン・ジェウオン
 



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