2001年12月 最終回 「キラー・カーン チャカ・カーン ジェームス・カーン シネマックスこれにて完」 |
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スターバックスのレジ前にて、ラテにしようかフラペチーノにしようか。毎回悩み抜く優柔不断者にとって、非常にたすかる言葉が「オススメは?」。もちろんレストランなんかにも有効で、本当に食べたいモノを見失なう程、フルに使わせてもらっている。「オススメの前菜は?」「オススメのメインは?」「オススメのデザートは?」。で、全く注文するつもりのなかった「本日のオススメコーヒー」を飲みながら、少し不味くて後悔している私はやはりシナリオ通り。初めのラテにしとけばよかったが、既に遅し。 川島雄三監督「洲崎パラダイス 赤信号」。この作品にでてくる三橋達也は、「オススメは?」と聞き返す事もできないだろう煮えきらない奴。そんな自分にイライラしながら、吐きだすセリフといえば「死んでやる」。まさにベリーベストな優柔不断者と言える。新珠三千代扮する風俗嬢に、足を洗わせるものの、女一人養っていく生活力も無い三橋。「しっ、死んでやる」。そんな彼を見切りながらも、関係を清算する事ができない新珠。二人は酸いも甘いも、知り尽くした「大人」の関係なのかもしれない。もっと具体的に言えば、身体のどこにホクロがあるか数まで答えられる関係。さらに噛み砕いて言えば、夫婦漫才・正司敏江、玲司のような関係か。 以前、鈴木慶一さんとハナシさせてもらっていた時、最近観た一本という話題になり、彼はこの「洲崎パラダイス」を確か挙げていた。一瞬、目線を泳がせながら天井に顔をやる彼を、私は見逃さなかった。「素敵な人の家のまわり ウロウロするリアリティー それが恋恋でも心は とてもロンリー 僕は蝿になって君の 家のまわりグルグルまわる」なんて、女々しい曲が独壇場の彼の事、多分その時、劇中の三橋達也と自分を比較、照らし合わせていたのかもしれない。 「邦画はまずパワーある題名から」という信念を貫き通す私にとって、神代辰巳「悶絶!どんでん返し」、瀬々敏久「アナーキー・イン・じゃぱんスケ」と並びタイトル・内容共カッコイイと思う、この「洲崎パラダイス 赤信号」。それらはベスト・オブ・ベストな優柔不断の私が、「シネマックス〜」に一年間付き合ってくれたアナタに、逆に「オススメしたい」作品三本でもある。 |
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葛城佐平次さん、1年間ありがとうございました。 引き続き、来年もよろしくお願いいたします。 2002年からの新連載はタイトルも内容も一新。お楽しみに! |
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