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お母さんのための

日経新聞入門講座

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VOL066-特殊法人の会計 2001/JUN/16朝刊5面「淵に立つ特殊法人」

記事から引用します(以下、「」は記事よりの引用です)。

「特殊法人にも貸借対照表や損益計算書はあるが、企業のそれとは似て非なるものだ。」

「87年に「特殊法人等会計処理基準」が定められたが、77ある特殊法人はそれぞれの設置法や政令、内部規定などにより異なる経理処理を施している。減価償却をしない道路系の公団、減価償却していても賃貸住宅の耐用年数を税法基準を超える70年としている都市基盤整備公団など、特殊法人同士ですら比較するのは難しい。」

特殊法人の場合、記事もありますが、各法人ごとに設置法令などにおいて会計処理基準を決めています。また、そのルールが企業会計のルールとはかけ離れている場合もあるようです。従って、貸借対照表や損益計算書という企業会計でごく見慣れた財務諸表と同じ体裁でありながら、企業会計のルールとは異なったルールで作成されているため、企業会計のルールを前提に読みとろうとしても「言葉が通じない」ということになります。

なぜ、各特殊法人の会計処理基準は企業会計とは異なっているのでしょうか。2つの原因が考えられると思います。

第1の原因としては、元々の会計の目的が違っていたからだと考えられます。会計のルール、会計基準というのは、それぞれの会計の持つ目的を達成するために決められているものだと理解できます。従って、会計の目的が異なればその会計基準もまた異なると考えられます。特殊法人会計の目的が何であるのかについては、各法人の会計基準を見ないとわかりませんが、少なくとも、利害関係者に対してその企業の財政状態や経営成績を適切に報告するという、企業会計の目的とは異なる目的で設定されていたものと推測されます。

第2の原因としては、特殊法人の会計処理基準が、報告を受ける側の要求の変化に対応してこなかったからだと考えられます。会計はそれぞれ目的を持っていますが、誰かに何かを報告をするための手段であることには変わりはないと思います。報告を受ける側の報告内容に関する要求が変われば、当然、その変化に対応して会計基準も変化する必要があります。企業会計は、利害関係者の情報開示要求の変化に伴い、その会計基準を変化させてきました。最近の大きな企業会計の変化については、お母さんもよくご承知のことと思います。特殊法人の会計処理基準はこの変化をしないまま今日に至ってしまったようです。

そして、なぜ各特殊法人の会計処理基準が統一されていないか、ということですが、記事の冒頭にある「特殊法人等会計処理基準」には強制力が無かったからだと考えられます。この特殊法人等会計処理基準は昭和57年の行政改革に関する第三次答申の議論がスタートだとされています(特殊法人等における会計処理基準の解説と実務:新法規出版刊:平成元年6月:以下解説)。その後様々な議論が行われ、昭和62年に「特殊法人等会計処理基準」が発表されましたが、その位置づけは「各法人に強制的に適用されるといった性格のものではない(解説)」とされ、「基本的には現行の処理を尊重(解説)」しています。そして、設定当初は「統一的な基準を設けた意味での最初の出発点(解説)」という認識であったのが、そのまま・・・ということなのでしょう。

企業にしても特殊法人にしても私たち一人一人にしても、社会の中の存在であることには変わりはありませんよね。社会がこれだけ大きな変化をしているなかにあって、特殊法人だけが、あるいは私だけが変わらずに存在できる、というのはやっぱり無理な話ではないでしょうか。社会とのつながりを隔絶しない限り、社会という環境の変化に影響を受けないでいられるわけはないと思いますし、社会の変化に対応できなければ氷河期の恐竜のような運命が待っているのだろうと思います。

運命論はさておいて、まずは、特殊法人の「言葉が通じない状態を解消し、関連会社や関連公益法人も含めて情報開示を徹底させる」ことが重要です。本当の姿を、特殊法人へ流れている資金(税金)を支払っている側の私たちが知らないことには何も始まりません。本当の姿を知るための道具として会計がその役割を果たしてくれることでしょう。9月までに作成されるという企業会計ベースの財務諸表と行政コスト計算書(どのような計算書なのかはまたご説明する機会を設けたいと思います)をお母さんと一緒に待ちたいと思います。

と、書いていたら、22日に特殊法人見直し中間取りまとめが特殊法人等改革推進本部より発表されました。「8月下旬に個別事業の存廃などの結論を出し、年内に整理合理化計画を発表・・中略・・特殊法人改革のテンポを速める(日経新聞6月23日朝刊1面)」ことにしたそうです。記事の中には新たに作成する財務諸表のことは書かれていないようでしたが、個別事業の整理合理化にあたっての重要な判断材料のひとつになるのではないかと思います。

 

日本経済新聞社 http://www.nikkei.co.jp/

 

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