Volker Kriegel _Zoom - The Legendary MPS Sessions_ (MPS, 559 909-2, 1999, 2CD) - CD1)_The Sideman_ 1)Mathar 2)Vian-De 3)Teaming Up 4)Riff For Rent 5)The Secret Mystery Of Hensh 6)Big Schlepp 7)Country Shit 8)Inside Crime 9)Suspicious Child 10)Soul-Eggs 11)A)Four Seasons B)Sitting On My Knees 12)Baiafrock/Volker 13)Q 14)Where's My Sunshine 15)Harp Revolution CD2)_The Bandleader_ 1)Zoom 2)More About D 3)Ach Kina 4)Slums On Wheels 5)Fuer Hector 6)Lift! 7)Mindwill 8)Saturnalia 9)Und Schoen Ist Die Fahrt 10)Chana Marathon 11)Resonance 1970年代に MPS レーベルを拠点に活動した (現在は、絵本作家として活動しており、 フォルカー・クリーゲル『王様はロックンローラー』(ブロンズ新社, 1985) という翻訳絵本もある。) Germany 出身の jazz rock / fusion 的な guitar 奏者 Volker Kriegel のベスト盤CD 2枚組がリリースされている。1枚目はサイドメン としての録音からのものなのだが、15曲中12曲が The Dave Pike Set の録音で、 実質的にそのベスト盤になっている。Dave Pike Set のベスト盤は、数年前にも 次のようにリリースされているが、重なる曲は2曲のみ。The Dave Pike Set の ベスト盤の続編としても楽しめる作品だろう。 The Dave Pike Set _Masterpieces_ (MPS, 531 848-2, 1996, CD) - 1)Regards From Freddie Horrowitz 2)Noisy Silence - Gentle Noise 3)Mathar 4)Walkin' Down The Highway In A Raw Red Egg 5)Greater Kalesh No.48 6)Goodtime Charlie At The Big Washdown 7)Nobody's Afraid Of Howard Monster 8)But Anyway 9)Rabbi Mogen's Hideout 10)Raga Jeeva Swara 11)Send Me The Yellow Guys 12)Big Schlepp 13)Salomao Dave Pike は Detroit 出身の vibe 奏者で、Bill Evans と共演したりしているが、 1969-1972年の間、Germany に拠点を移して活動しており、そのときのバンドが、 The Dave Pike Set だ。 Dave Pike の vibe と Volker Kriegel の electric guitar の掛け合いが、 このバンドの魅力なのであるが。しかし、vibe / electric guitar の組み合わせ といえば、ほぼ同時期の ECM レーベルの Gary Burton Quartet (Burton の vibe に Larry Coryell / Pat Metheny / Mick Goodrick の electric guitar) があるだけに、 それに比べて印象が弱いのは否めない。ライナーノーツによると、実際、 Gary Burton Quartet のライヴを観たことが The Dave Pike Set 結成の契機、と、 Kriegel は自著エッセー _Jazz & Rock_ で言っているらしい。 もちろん、全くのフォロワーというわけではなく、The Dave Pike Set は Gary Burton Quartet に比べて泥臭い音になっている。これは、ECM と MPS の録音時の音作りの 違いもあるが。Pike / Kriegel の演奏の個性も大きいと思う。The Dave Pike Set の 名曲 "Mathar" のように、Kriegel が sitar を弾くこともある、ということも、 泥臭さの原因になっているだろう。Kriegel 自身、rock 的な背景が強いようだし。 Dave Pike にしても、Gary Burton がポリフォニー的というか垂直的な音出しを するのに対して、音数少なくリズミカルに演奏する。そのため、The Dave Pike Set の 方が jazz *rock* 的に聴こえるように思う。"Regards From Freddie Horrowitz" のようなアップテンポの曲は、夜のドライヴにうってつけという感じの速度感も あって、僕は気にいっている。 さて、Volker Kriegel のベスト盤の2枚目は、Eberhard Weber らと結成した Spectrum をはじめとする、彼のリーダー作からの音源だが。1970年代前半の 音源など、guitar / sitar の音や反復感を強調したリズムがサイケデリックな 感じだったり、Albert Mangelsdorff らを迎えて free jazz / improv. 色濃く なったりしたりと面白いが。後半は、fusion としていささか平凡になって しまったかもしれない。それでも、Dave Pike Set のベスト盤的な1枚目と 2枚目の前半だけでも、十分に楽しめる内容だと思う。 Gary Burton Quartet を含む1970年前半の ECM の試みというのは、post-free、 post-electric-Miles、という文脈もあるものだけど、その展開の別の可能性を 聴くという意味でも、それが概観できる興味深いベスト盤かもしれない。 2000/1/30 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕