Cesaria Evora は、西アフリカの先の大西洋上の島国 Cabo Verde の貫禄満点の ベテラン女性歌手。1990年代半ばからフランスを中心に注目されていたし、 輸入盤店の店頭で度々みかけていたが、最近までちゃんと聴いたことが無かった。 3ヶ月ほど前に house DJ である Francois Kervorkian の remix シングル _Sangue De Beirona_ を入手して、それが大変に気にいったので、その後、 その曲が収録されているアルバム _Cabe Verde_ を含む近作を少しずつ入手して 聴いている。それらを軽く紹介。 Cesaria Evora _Cabo Verde_ (Lusafrica / RCA, 74321 45393-2, 1997, CD) - 1)Tchintchirote 2)Sabine Larga'm 3)Partida 4)Sangue De Beirona 5)Apocalipse 6)Mar E Moada De Sodade 7)Bo E Di Meu Cretcheu 8)Coragem Irmon 9)Quem Bo E 10)Regresso 11)Zebra 12)Mae Velha 13)Pe Di Boi 14)Ess Pais - Produced by Paulino Vieira. - Cesaria Evora (vocal), Bau (10 & 12 string guitars,violin,solo cavaquinho), Luis Ramos (guitar), Ze Paris (acoustic bass guitar), Jacinto Pereira (cavaquinho), Nando Andrade (piano); and guests. Cesaria Evora remix de Francois K. _Sangue De Beirona_ (Lusafrica / RCA, 74321 57092-2, 1998, CDS) - 1)Sangue De Beirona (Remix de Francois K - Radio Edit) 2)Sangue De Beirona (Remix de Francois K) 3)Sangue De Bairona (Dub Version) - Remix et Production comlementaire: Francois Kervorkian. "Sangue De Beirona" は、シングルでは、Francois Kervorkian による house な 仕上がりなのだが、元曲はアコーディオンの音色もいい感じのダンス曲。ダンス曲 といっても、techno / breakbeats 的なものでは全く無い。アコースティックな もので、むしろ、Latin America 〜 Caribbean の音楽に近いように思う。 Cabo Verde は元 Portugal 植民地であり、大航海時代に奴隷貿易の中継島として 人が住みつくようになった、という経緯もあり、Africa 的な色が薄く、もっと Creole 的な混血音楽になっている、ということなのだろうが。 もちろん、元 Portugal 領ということもあって、Portugal の Fado や、Brazil、 Angola の音楽に通じるサウダージの感じのある深みある歌唱が聴かれる。もちろん、 声の深みは、Evora の貫禄のある体ならではのところもあると思うが。Portuguese (か、それを元にした Creole 語) で歌われるので、その語調や声の響きの印象もあ るのだろうが。それから、guitar の使い方も Brazil の音楽に近いように思う。 といっても、スローな曲など Cuba の son とかにも近いように思う。 ほとんど知らないミュージシャンの演奏なのだが、"Coragem Irmon" で US の jazz sax 奏者、James Carter がソロを聴かせてくれている。どういう経緯で 参加することになったのか、ちょっと気になる。 "Sangue De Beirona" を収録した _Cabo Verde_ は最新作ではなく、その後、去年 Cesaria Evora, _Cafe Atlantico_ (Lusafrica / RCA 74321 65401-2, 1999, CD) をリリースしている。Havana, Cuba で録音されており、現地のミュージシャンも 多く参加しているうえ、Caetano Veloso や Egbert Gismonti との共演で知られる Brazil の cello 奏者 Jacques Morelembaum がストリングスのアレンジ・指揮で 参加している。が、そのストリングスがいささか大仰になり過ぎているように思う。 _Cabo Verde_ のシンプルな背景の方が、Evora の歌の魅力が生きているように 僕は思うのだが。また、_Cafe Atlantico_ からも、remix シングル Cesaria Evora, _Carnaval De Sao Vincente - remixes par Francois K. & Joe Claussell_ (Lusafrica / RCA, 74321 68158-2, 1999, CD) がリリースされている。やはり、 前のシングルと同じような趣向で、悪くはないが新鮮味も無いかもしれない。 ただ、"Sangue De Beirona" の別 remix を収録しており、これから入手しようと いうのなら、これが良いとは思うが。 というわけで、旧作になってしまうのだが、これから Cesaria Evora を聴くなら、 _Cabo Verde_ (と _Sangue De Beirona_) を僕は薦めたい。 2000/2/6 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕