Talking Heads, _Stop Making Sense_ - USA, 1984/1999 (re-mastered version), color, 1h28min. - Directed by Jonathan Demme. Conceived for the Stage by David Byrne. Recorded live in Hollywood, 1983/12. - David Byrne (lead vocals,guitar), Chris Frantz (drums,vocals), Jerry Harrison (guitar,keyboards,vocals), Tina Weymouth (bass,vocals); Edna Holt (backup vocals), Lynn Mabry (backing vocals), Steve Scales (percussions), Alex Weir (guitar,vocals), Bernie Worrell (keyboards). 1970年代後半から1980年代半ばにかけて活躍した NY の代表的な post-punk / New Wave バンド Talking Heads の1983年の3日間ライヴを収録編集した 音楽映画がニュープリントとリマスター音源で再公開された。有名なロック 音楽映画で、1980年代前半に New Wave にハマっていた人なら必ず、そうで なくても洋楽のロックに興味のあった人の多くが観ている映画だと思うが。 この映画を、というよりも、動く David Byrne の映像を観たのも10余年ぶり。 あのギクシャクした踊り、パフォーマンスと引き攣ったような歌唱の組合せは、 New Wave にありがちの組合せだったけれども、Byrne の存在感もあって、 今観ても面白くカッコ良いと思う。有名なだぶだぶのスーツというより、 短髪にスーツという姿が、いかにも New Wave っぽく感じたけれども。 むしろ、15年前 (中学高校時代) は「カッコいい New Wave お姉さん」として 観ていた Tina Weymouth の、小柄な体に大きなベースを抱えて、(特に ミニスカートから覗く足さばきが) ピョコピョコした感じで踊る姿が、 とっても可愛く見えた、という所に、時の流れを感じてしまった。彼女の ミニスカートに造形的なジャケットというのも、1980年代前半のファッション という感じがしたし。 編成は核となる4人に、P-Funk の Bernie Worrell をはじめとする黒人 ミュージシャンを加えた拡大編成。「このグループは黒人と白人両方の 男女から成るバンドとしては世界でただひとつのバンドであるかもしれない。」 (Greil Marcus, "Songs of Random Terror: Real Life Rock Top Ten 1980") と言われた一方、特にその当時は日本国内で「白人音楽による黒人音楽の搾取」 という批判のあったものでもある。現在なら、バンドとDJのコラボレーション (「デジタルロック」) に相当するものとして済まされるようなことだろうし、 むしろ、ダンス音楽によるロックの脱構築、バンド内の性的役割分担の脱構築、 と評価できるものだと思うが。 何も無いステージにアコスティックギターとリズムの入ったラジカセを持って 登場する "Psycho Killer" から、少しずつセットを組みたてて編成が完成する "Burning Down The House" までの展開が _Talking Heads '77_ (1977) から _Speaking In Tangue_ (1983) の音作りの変遷 ― folk rock 的な要素が濃い 時代から、funk のリズムを導入しての rock 脱構築へ至る道を見るようで 面白いのは確かなのだけど、僕は、やはり、後半の暗闇とスポットライトを 多用したコントラストの強いライティングのステージを捉えた映像の方が好きだ。 (これも New Wave っぽい、といえばそうなのだが。) 特に、横からの白い強い スポットライトを使い、Byrne のクネクネした動きを集中的に捉え続ける、 "Once In A Lifetime" のところが、最も好きかもしれない。こういう画面を 撮影した Jordan Cronenweth が、この直前に Ridley Scott (dir.), _Blade Runner_ (1982) を撮っていた、というのを、今回の上映で初めて 知ったのだけれど。 Talking Heads のライヴは生では観たことが無いので、実際の所はMCがあったの かもしれないけれど、演奏間のMCは無く、もちろん客席の反応を捉えるシーンも 希で、良く構成された舞台をミニマルに捉えた作品だ。ライヴの場の熱気を 捉えるというよりも、ダンスのようなパフォーマンスを捉えた映像に近い。 監督は Jonathan Demme なのだが、その2年後に、やはり Demmi が監督した 音楽クリップ・ビデオ New Order, _Perfect Kiss_ (1985) を見比べると、 1970年代の rock の主観主義 (「歌詞やパフォーマンスは、歌手の主観の反映 である。」) を排するような、演劇的というか機械的な演奏や構成が共通する ようで、面白いように思う。ただ、Demme の資質というより、Talking Heads や New Order といったバンドが持っていた資質の問題、という気もする。 1980年代前半の Post-Punk / New Wave の良く構成されたパフォーマンスの ドキュメンタリー映画だと思う。未見の人は特に、この機会に是非。 2000/4/15 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕 _ _ _ このリマスター音源版の公開に合わせて、この映画のDVDも発売されている。 Talking Heads, _Stop Making Sense_ (Palm Pictures, PALMDVD3013-2, 1984/2000, DVD) - 1)Psycho Killer 2)Heaven 3)Thank You For Sending Me An Angel 4)Found A Job 5)Slippery People 6)Burning Down The House 7)Life During Wartime 8)Making Flippy Floppy 9)Swamp 10)What A Day That Was 11)Naive Melody (This Must Be The Place) 12)Once In A Life Time 13)Genius Of Love 14)Girlfriend Is Better 15)Take Me To The River 16)Cross-Eyed And Painless; Bonus Tracks 17)Cities 18)Big Business / I Zimbra Widescreen の画面で、ステレオの他、5.1チャンネルの音声も収録されている。 David Byrne のインタヴューは、字幕が無いので、話についていくのがちょっと きびしかった。ライヴのストーリーボードのような資料も見ることができ、 どういう計算の演出が行われたのか、比較して見ていくのも興味深いし、この手の 資料は DVD ならではの楽しみだが。作品の楽しみ方を増すものでもないようにも 感じた。 むしろ、ここでは、2トラックのボーナス・トラックが一番嬉しかった。 同じツアーでの映像だが、映画と違いかなり粗い画面なのだが。結局、音楽と 演奏している David Byrne たちの動きが、もっとも面白いのだった。 2000/6/19 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕