Dit Terzi
_Dit Terzi_
(Boucherie Prod., BP1481, 2000, CD)
- Recorded by Gilles Martin & Fabrice Debuire, 1999/7,1999/12,2000/1.
Mixed by Gilles Martin.  Produced by Gilles Martin for Flam and Dit Terzi.
- Claire Touzi Dit Terzi (vocals,guitar,dobro,kalimba),
Sylvestre Perrusson (contrebass,programming,samples),
Erick Pigeard (percussions,samples,appeaux);
Arach Khalatbari (percussions), Danielle Charaud (harp).

France は Centre 地方出身の Dit Terzi は、元 Forguette Mi Note の女性
シンガーソングライター Claire Touzi Dit Terzi のプロジェクト、とでも
いったもの。ジャケットに用いられている写真からして、ちょっとエキゾチックな
顔立ちで、配給/通販元の NetBeat の紹介からすると、Algeria の Kabyle (Berberes)
系の血を引くのかもしれない。

といっても、歌詞は全てフランス語で、その影響はほとんど感じられない。
強いて言えば、darbukka (hand drum) 風の音色が、もっとも影響を感じるだろうか。
歌声や節回し、コーラスも、ちょっとエキセントリックな感じだが、これは、
エキゾチックなような気もする一方で、むしろ、1980年代初頭の new wave 風の
ようにも思う。

背景は、2人の男性の作り出す打ち込みやサンプリングが中心の音なのだが、
その音使いは、techno 〜 breakbeats 風というよりも、electronic pop 風。
この制作を手掛ける Gilles Martin は、Miossec, _Boire_ (Play It Again Sam,
PIAS311CD, 1995, CD) や Dominique A, _La Memoire Neuve_ (Lithium, 840378-2,
1996, CD)、Autour De Lucie, _Immobile_ (Le Village Vert, VIVE26, 1997, CD)
など、1990年代後半の France の indies pop/rock の制作を多く手掛ける
代表的な制作者で、そのnouvelle chanson の文脈に乗るものなのかもしれない。
特に女性の歌声は、フランス語の響きのせいか、Les Elles と共通するようにも思う。

しかし、むしろ、ここで聴かれるのは、Martin が制作を多く手掛けていた
1980年代前半の Crammed Discs の音に近いように思う。少々硬質な音で、
旋律を中心に中近東風なものを感じさせる音、という意味で、Minimal Compact
に近いと思う。そして、そういう音が、僕は気にいっている。

2000/5/28
嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕