Karin Krog & John Surman _Bluesand_ (Meantime, MR9, 1999, CD) - 1)The Nightingale 2)Ribbon Of Sand 3)Sombre Woods 4)Voice Shadow 5)It Could Be Hip 6)Don't Just Sing 7)Sas Blues 8)So Blue 9)Bluesand 10)Hidden Dreams 11)Secret Games 12)Fly Away - Produced by Karin Krog and John Surman. - John Surman (soprano & baritone saxes,bass & contrabass clarinets,piano, synthesizers), Karin Krog (voice,electronic voice effects). 月桂冠の CM で "Aria On The G String" (いわゆる『G線上のアリア』) が 採用されて話題になり、日本盤までリリースされてしまった、Norway のベテラン (60歳くらい) 女性 jazz 歌手 Karin Krog の John Surman と組んでの最新作品。 ちなみに、日本盤はジャケットが変えられ、"Aria On The G String" がボーナス トラックとして収録されている。 エコーを中心に電気的に変形された Krog の歌声が、Surman の吹く飄々とした 音数少ない管楽器や鍵盤楽器を背景に浮遊するという、というのが、基本スタイル。 ほとんど原型を残さず変形された歌声に bass clarinet が絡む free improv. 的 な "Voice Shadow" のような曲もあるが。全体としては、音弄りの割には抽象的 ではなく、少なからず jazz のテイストを残しており、また、時折 folk 的にもなる。 個性的で掴まれるというほどではないが、その低めの歌声が魅力的である。 夜にゆったりと B.G.M. で聴いているとハマる音だ。個人的には folk / country 的なニュアンスも感じる "Ribbon Of Sand" がベストトラック。 この2人のセッションは1978年から活動を始め、Karin Krog & John Surman _Freestyle_ (Odin, ODIN17, 1985, LP/CD) の他、他のミュージシャンを迎えて John Surman / Karin Krog / Pierre Favre, _Such Winters Of Memory_ (ECM, ECM1254, 1982, LP/CD) や John Surman / Karin Krog / Terje Rypdal / Vigleik Storaas, _Nordic Quartet_ (ECM, ECM1553, 1995, CD) などの録音を 残している。Rypdal の参加した _Nordic Quartet_ など、その歪んだ electric guitar の響きもあり、ちょっと緊張感が高めなのも良いし、それも好きなのだが。 _Bluesand_ のリラックスした感じも、それはそれで良いと思う。 Karin Krog は1963年に活動を始めた Norway の jazz の女性歌手で、比較的 スタンダードな曲・演奏から、free jazz / improv 的な試みまで、幅広い活動を してきた歌手。1960年代末に Jan Garbarek などのミュージシャンによって ECM 的な post-free の試みが Norway で行われるようになってからは、 その近傍での活動が目立つ。そんな活動を纏めたCDが1994年にリリースされている。 Karin Krog _Jubilee - The Best Of 30 Years_ (Verve (Norway), 523 716-2, 1994, 2CD) エコーをはじめとした歌声の変形を多用した最初のアルバムは、Jan Garbarek ら 北欧の post-free のミュージシャンを使った、_Mr. Joy_ (Sonet, 1405, 1968, LP) ではないかと思うのだが。これは、当時の (psychedelic) rock の影響もあると 思うのだけれど、シュールというか、艶めかしい感じが、とても好きだ。しかし、 このアンソロジーには一曲も収録されていないのが残念。このアルバムは単独でも CD化されていない。また、当時未発表曲として、John Surman とのセッションが 2曲収録されていたのだが、2曲とも _Bluesand_ に収録されてしまった。 Karin Krog & Archie Shepp, _Hi-Fly_ (Polydor, 1976) も、僕の大好きなアルバム なのだが、その収録曲から始まり、John Surman とのセッションが多く収録された 2枚目の方が良いように思う。枯れて良くなったというより、積極的に新しい音に 挑戦しつづけているというのが、良いと思う。 2000/6/25 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕