CT: The Quartet
_Nailed_
(FMP, CD108, 2000, CD)
- Recorded live at the Bechstein Concert Hall in Berlin on 1990/9/26.
- Evan Parker (soprano and tenor saxophones), Cecil Taylor (piano),
Barry Guy (double bass), Tony Oxley (drums).

CT: The Workshop Ensemble
_Melancholy_
(FMP, CD104, 1999, CD)
- Recorded live at the Bechstein Concert Hall in Berlin on 1990/9/30.
- Tobias Netta (trumpet), Wolfgang Fuchs (sopranino,bassclarinet),
Harri Sjoestroem (sopranosaxophone), Evan Parker (soprano and tenorsaxophones),
Thomas Klemm (tenorsaxophone), Joerg Huke (trombone),
Thomas Wiedermann (trombone), Cecil Taylor (piano), Barry Guy (doublebass),
Tony Oxley (drums).

Cecil Taylor の1990年頃の録音が FMP (Free Music Production) からリリース
されたのだが、顔合わせ的にも意外で、なかなか良かったので、簡単に紹介したい。
2枚のうち、1枚は 4tet、もう1枚は big band emsemble なのだが、その核になって
いるのは、1管の 4tet だ。そして、その管は Evan Parker 。

Cecil Taylor - Tony Oxley の軸は、これに William Parker (bass) を加えた
The Feel Trio を思わせるもので、特に Oxley の2人分はあろう手数の多さが、
Taylor のドシャメシャな piano と合わさって、構成的な熱狂を作り上げていく
感じがある。free improv. でのセッションのような循環奏法を多用したピロピロ
いう淡々とした演奏、という印象も強い Evan Parker もこれに応じたか、むしろ
濁った強い音も多用しているように聴こえる。といっても、Peter Broetzmann の
ような咆哮ではないので、ちょっと新鮮に聴くことができた。最近の Evan Parker
の 4tet (Parker (sax) / Marilyn Crispell (piano) / Barry Guy (bass) /
Paul Lytton (drums)) の抑制された演奏に比べると、編成が同じだけに、その差は
際立つだろう。

といっても、今まで Evan Parker はこういう演奏を聴かせたことが無かったわけ
ではなく、1970年代の Alexander von Schlippenbach Trio (Schlippenbach (piano)
/ Evan Parker (sax) / Paul Lovens (drums)) を思い出させもする。この編成は、
当時の Cecil Taylor Trio (Taylor (piano) / Jimmy Lyons (sax) / Andrew Cyrill
(drums)) と同じものでもあり、今では忘れられがちな free jazz と free improv. の
軸の交わりを想起させるような音といえるかもしれない。そして、それが、聴いて
いて掴まれる理由かもしれない。もちろん、1970年代によく見られた bass-less
piano trio と異なり bass が入っているので、音のニュアンスは異なるし、
この bass と piano の共存が、単なる回顧的なセッションと一線を画している
とも思う。

big band ensemble の方が構造が際立つ、という意見もあるのだが、僕が聴くと
ドシャメシャな感じの音の厚さに構造が埋もれてしまうようにも感じる。この2枚を
聴き比べても、むしろ、核となる 4tet の方が、コンセプトが明確になるように
思うのだが。

2000/6/25
嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕