Simon Nabatov - Nils Wogram _As We Don't Know It_ (Konnex, KCD5092, 2000, CD) - 1)Mark This 2)As We Don't Know It 3)Sequenza V 4)Dream On 5)The Beauty Of Meat 6)Big Decision Part I 7)Big Decision Part I - Recorded 1998/2/2. - Simon Nabatov (piano), Nils Wogram (trombone). 1970年代末に Rome, New York と移住し現在は Cologne を拠点に活動する Russia 出身の piano 奏者 Simon Nabatov と、1990年代に入って本格的な 活動を開始した Germany 若手 trombone 奏者 Nils Wogram の duo 。 今まで、この2人に bass と drums を加えた 4tet で、2枚の録音 Nils Wogram, _Round Trip_ (Enja, ENJ-9307-2, 1996, CD) Nils Wogram, _Speed Life_ (Enja, ENJ-9346-2, 1998, CD) を残している。今までその2枚を聴いたときの印象では、ノリの良い jazz は 楽しめるが、いささかまっとう過ぎるところが物足りないというものだった。 しかし、このリズム隊を抜いた duo は、swing 感のある jazz の演奏は もちろん、improv. 風にビートなくフリーキー音で展開するところや、 Luciano Berio, "Squenza" のような現代音楽曲まで、多彩な演奏しており、 それが楽しい出来になっている。 Wogram の出す trombone は丸い音を多用し、早いフレーズの歌うような 軽さも良いのだが。それに対する Nabatov の piano のタッチは強め。 このパーカッシブな感じが、ノリの良さを生んでいると思うのだが。 それも、トーンクラスターのようなフリーキー音はあまり使わずに、 弱い音でもトレモロとかを多用するため、ちょっと華やかな印象を受ける。 その結果はテンションが高い掛け合い、とはならないが、ノリ良く 楽しめる作品になっていると思う。もう一楽器、drums を入れて、 bass-less の trio にでもすると、もっと変化のある作品になったかな、 と、聴いていて思うこともあるが。 Simon Nabatov Trio _Sneak Preview_ (hatOLOGY, 548, 2000, CD) - 1)For Steve 2)One-Track Mind 3)The Lake 4)Let's Go Baby 5)Sneak Preview 6)Inndustrial Strength 7)Happy Buchki Break Tune - Recorded 1999/1/20-21. - Simon Nabatov (piano), Mark Helias (double bass), Tom Rainey (drums). Nils Wogram と組んでいる piano 奏者がリーダーの trio の新作も出ている。 この編成で、以前にも Simon Nabatov, _Tough Costomer_ (Enja, ENJ7063-2, 1992, CD) をリリースしており (残念ながら未聴)、1990年代を通して活動して いるようだ。 Anthony Braxton や Ray Anderson らとの活動で知られる Chicago の Helias 、 Tim Berne 界隈での活動が目立つ Rainey との trio で、もっと緊張感の高い free jazz trio になっているかと思ったが、演奏は、Nils Wogram と演奏して いるときと同じようなもの。 最近あまり piano trio を聴きたいと思うようなことが無かったのだけれど、 この Nabatov の trio は、1990年代初頭の、Myra Melford、Geri Allen、 Craig Taborn といった piano 奏者が組んでいた、華やかめ piano trio を 思わせて、良いなあと思う。ただ、これからの展開を感じさせるような音で 無いのも確かなのだが。 2000/7/9 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕