Various Artists _Don't Call Us Immigrants_ (Pressure Sounds, PSCD28, 2000, CD) - 1)Six One Penny (Misty) 2)Rat A Cut Bottle (Lion Youth) 3)Sticksman (Black Slate) 4)Don't Call Us Immigrants (Tabby Cat Kelly) 5)Where Is Jah? (Reggae Regular) 6)Skip Away (Trevor Hartley) 7)Gimme African Love (African Brothers) 8)The Man In Me (Matumbi) 9)Hard Times (Pablo Gad) 10)Nyah Love (Steel Pulse) 11)It's Not Our Wish (Aswad) 12)Run Rasta Run (African Stone) 1970年代の British reggae 第一世代を概観できる編集盤がリリースされている。 Matumbi (Dennis Bovell) はもちろん、Misty (Misty In Roots のこと)、 Steel Pulse 、Aswad などは、その当時から日本に紹介されていたように 思うけれども、その他は、ちゃんと紹介されてきたとは言い難く、僕もこの 編集盤でほとんど初めて聴くミュージシャンばかりだ。 以前から、Linton Kwesi Johnson / Dennis Bovell Dub Band はもちろん、 Aswad や Steel Pulse には、Jamaica の reggae とは異なる独特の雰囲気が あると思っていたのだが、こうやって多くのバンドを聴いても、一聴して British reggae だと判るような独特の雰囲気があるのだなぁ、と痛感した。 具体的にどこが British reggae らしいか指摘し辛いのだけど。 例えば、オープニングの Misty など Jamaican root reggae グループ Burning Spear に近い感じもするのだけど、シャーというキーボードの 音色や切れ味の良いギターの音色など British reggae ならではだと思う。 Dennis Bovell 率いる Matumbi はもちろん、その前身のバンドである African Brothers、Bovell 制作の Tabby Cat Kelly、Steel Pulse の トラックなど、これらの録音以降、Linton Kwesi Johnson との協働で完成 した音作りの先駆を感じさせるものだし、このシャキシャキとした感じの 音作りが British reggae 第一世代の音の典型になったようにも思う。 Dennis Bovell が The Pop Group や Orange Juice のような post-punk の rock / pop バンドを制作したことに象徴されるように、第一世代の British reggae は punk 〜 post-punk のミュージシャンと "Rock Against Racism" などを通して交流があった。しかし、post-punk の音作りに reggae の影響が強く見られるのに対して、British reggae の方は ちょっと音の切れ味が良くなったかな、という程度の影響しか聴かれない のも面白いと思う。むしろ、表題曲 "Don't Call Us Immigrants" (「俺たちを移民と呼ばないでくれ」) のような歌詞の中に影響が現れて いるのかもしれない。そしてそういう歌詞のスタイルが、それ以降の 世代の British reggae (第二世代の Adrian Sharwood (On-U Sound)、 Mad Professor (Ariwa)、Jah Shaka。第三世代の Zion Train、The Disciples、 Bush Chemist など。) との、最も際立つ違いのようにも思うのだが。 しかし、reggae のリイシュー専門レーベルとしては、1970年代の roots に 拘る Blood And Fire に比べて、この Pressure Sounds の方が柔軟に良い 企画をしてくれるなあ、とも思う。dancehall style の最初期を捉えた Various Artists, _When The Dances Were Changing_ (Pressure Sound, PSCD22, 1998, CD) も名編集盤だ。これからのリイシューも楽しみにしたい。 2000/7/30 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕