Au Pairs
_Shock To The System - The Very Best Of The Au Pairs_
(Cherry Red, CDBRED161, 1999, CD)
- 1)We're So Cool 2)Repetition 3)Headache For Michelle 4)Come Again 5)You
6)Diet 7)It's Obvious 8)Inconvenience 9)Instant Touch 10)America
11)Sex Without The Stress 12)Steppin' Out Of Line 13)Fiasco
14)Taking Care Of Him 15)Love Song 
- Lesley Woods (vo,g), Paul Foad (vo,g), Jane Munro (b), Pete Hammond (ds).
- 1-4)from _Playing With A Different Sex_ (Human, HUMAN1, 1981, LP).
5)from _You_ (021, OTO2, 1979, 7").
6,7)from _Diet / It's Obvious_ (021, OTO4, 1980, 7").
8)from _Inconvenience_ (Human, HUM8, 1981, 12").
9-13)from _Sense And Sensuality_ (Kamera, KAM010, 1982, LP).
14)from unreleased third album.
15)from _Live In Berlin_ (Line, LICD9.00111 0, 1984, LP/CD)

1970年代末から1980年代初頭の脱パンク期に活動した Birmingham, England 出身の
男女混成バンド Au Pairs のベスト盤が Cherry Red からリリースされている。
脱パンク期には、The Slits や The Raincoats のような女性中心のバンドや、
Delta 5 のような男女混成バンドが活動し、フェミニスティックな歌詞はもちろん、
その編成においてもバンドにおける男女分業を、さらには rock における音の
階層構造すら問い直すような試みをしていた。そして、Au Pairs はそんな中では、
最左翼の位置にいた。そんなバンドのアンソロジーCDがリリースされている。

スタジオ盤アルバム全2枚が RPM からリイシューされているので、どちらも良い
ので、ベスト盤よりそれを聴いて欲しいとも思うのだが、とりあえずの入門盤と
して聴くのも悪くないかもしれない。

これを機会に、Au Pairs のCD化されている作品をざっと紹介したい。

Au Pairs
_Playing With A Different Sex_
(RPM, RPM107, 1992, CD)
- 1)We're So Cool 2)Love Song 3)Set-Up 4)Repetition 5)Headache For Michelle
6)Come Again 7)Armagh 8)Unfinished Business 9)Dear John 10)It's Obvious
11)You 12)Domestic Departure 13)Kerb Crawler 14)Diet 15)It's Obvious (7")
16)Inconvenience 17)Pretty Boys 18)Headache For Michelle (remix)
- Lesley Woods (vo,g), Paul Foad (vo,g), Jane Munro (b), Pete Hammond (ds).
- 1-10)Originally Released as _Playing With A Different Sex_
(Human, HUMAN1, 1981, LP).
11-13)Originally Released as _You_ (021, OTO2, 1979, 7").
14,15)Originally Released as _Diet / It's Obvious_ (021, OTO4, 1980, 7").
16-18)Originally Released as _Inconvenience_ (Human, HUM8, 1981, 12").

話題のデビュー作 _Playing With A Different Sex_ にシングル曲を加えて
CD化されたもの。デビューシングル _You_ はまだ粗削りな punk といったもの
だけれども、それ以外は、dub と funk に影響を受けた音になっている。
guitar は Gang Of Four のような鋭いカッティングで rhythm guitar に徹し、
bass がむしろリードを取り、drums と共に、ギクシャクした感じのリズムを
作りだしている。

その音も刺激的なのだが、印象的なのはそれよりも、女性歌手 Lesley Woods の
低く辛辣な歌声。この歌声と男性歌手 Paul Foad の取り乱したような歌声で、
「異性と遊ぶこと」というアルバムの題名とおり、堕胎、家庭内暴力、不快な
セックス、男性女性の役割に関する寸劇を展開するように歌が展開するのが、
とても面白い。

そして、この食い違うような二人の歌声、その芝居を切り刻むような guitar の
音色やリズムは、わかりきったこととされている性的な役割分担を問い直させる
ように構成されているように感じる。例えば、ヒット曲 "It's Obvious" の
「男女は平等だけれど違っている。そんなのあたりまえ。」という歌声を聴いて
いると、何事もあたりまえだとは思えなくなってくる、そんな気になるような
音楽だと思う。

Au Pairs をまず聴くなら、この _Playing With A Different Sex_ をぜひ薦めたい。

Au Pairs
_Sense And Sensuality_
(RPM, RPM111, 1993, CD)
- 1)Instant Touch 2)America 3)Sex Without Stress 4)Intact
5)Stepping Out Of Line 6)Shakedown 7)Don't Lie Back
8)(That's When) It's Worth It 9)Tongue In Cheek 10)Fiasco
11)She Runs With Honey 12)No More Secret Lives 13)Beat Of A Machine
14)Lion Love 15)Hokka He Ha 16)Taking Care Of Him
- Lesley Woods (vo,g), Paul Foad (vo,g), Jane Munro (b), Pete Hammond (ds);
Chris Lee (tp), Oliver Moore (sax), James Johnstone (sax),
Keith Knowles (synth), John Suddick (synth).
- 7,8,1,3,10,4,9,5,6,2)Originally Released as _Sense And Sensuality_
(Kamera, KAM010, 1982, LP).
11-14)Devid Jensen Show: Recorded 31/3/83, 1st Transmission 24/2/83.

続く2ndアルバムは、1983年の BBC session をボーナス・トラックに付けて
CD化されている。メンバーの意向であるようだが、オリジナルのアルバムと
曲順が異なっているのが残念 (オリジナルの曲順は7,8,1,3,10,4,9,5,6,2)。

歌詞や、寸劇がかった歌唱の掛けあいなどは、1st と同じなのだけれど、
punk rock 色が薄まり、electro / funk 色が強くなっている。Pigbag の
ホーンセクションがバックに付いていることもあって、彼らの演奏するような
硬質な funk を背景に Lesley Woods と Paul Foad が歌うように聴こえる。

その結果、1stアルバムがかなり激しい印象を受けるのに対して、この2nd
アルバムはなかり抑制された印象を受ける。もちろん、その抑制された感じも
カッコいい作品なのだけれど。

Au Pairs
_Equal But Different - BBC Sessions 1979-83_
(RPM, RPM139, 1994, CD)
- 1)Monogamy 2)Pretty Boys 3)Come Again 4)Ideal Woman
5)Dear John 6)Love Song 7)It's Obvious 8)Repetition 9)Unfinished Business
10)Diet 11)We're So Cool 12)Armagh 13)Set Up 14)Headache
15)Intact 16)Shakedown 17)Instant Touch
18)America 19)Stepping Out Of Line 20)Sex Without Stress 
- 1-4)John Peel Show: Recorded 26/9/79, 1st Transmission 9/10/79.
5-8)John Peel Show: Recorded 28/5/80, 1st Transmission 12/6/80.
9,10)Richard Skinner Show: Recorded 8/1/81, 1st Transmission 12/1/81.
11-14)John Peel Show: Recorded 21/1/81, 1st Transmission 28/1/81.
15-17)Richard Skinner Show: Recorded 27/8/81, 1st Transmission 1/9/81.
18-20)John Peel Show: Recorded 15/3/82, 1st Transmission 31/3/82.
- Lesley Woods (vo,g), Paul Foad (vo,g), Jane Munro (b), Pete Hammond (ds).

1979〜82年の間のUKの放送局 BBC のラジオのために録音したセッションを集めた
編集盤もリリースされている。2曲を除いて、アルバム収録曲であるので、
ファン向けだと思う。しかし、punk 色濃い最初のセッションも興味深いし、
_Sense And Sensuality_ からの曲を演奏した最後のセッションは、オリジナルの
抑制された感じに比べ、スタジオ・ライヴならではの熱い演奏が楽しめる。

Au Pairs
_Live In Berlin_
(Line, LICD9.00111 0, 1984, LP/CD)
- 1)Diet 2)Headache For Michelle 3)Dear John 4)Love Song 5)Set Up
6)Inconvenience 7)Armagh 8)Repetition 9)We're So Cool 10)Come Again
11)Piece Of My Heart
- Recorded and Produced live by Au Pairs during Women's Festival, Berlin.
- Lesley Woods (vo,g), Paul Foad (vo,g), Jane Munro (b), Pete Hammond (ds).

RPMからのリイシューではないため、入手が困難になっているが、_Playing With
A Different Sex_ の頃のライヴ盤もリリースされている。アルバムやスタジオ
セッションに比べてもぐっと粗い演奏、録音ではあるのだが、勢いは充分。
最後の Janis Joplin, "Piece Of My Heart" のカヴァーが格好いい。この歌の
「女性がどれだけタフになれるか、見せてあげる。」という歌詞が、ぐっと
くるライヴ盤だ。

2000/7/30
嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕