Emir Kusturica & The No Smoking Orchestra _Unza Unza Time_ (Rosebud / Barclay, 543 804-2, 2000, CD) - Recorded in Studio O Belgrad, 2000/1-4. Produced by Vojislav Aralica. - Emir Kustrica (g), Stribor Kustrica (ds,perc), Glava The Head Markovski (bass,bass balalaika), Nenad Gajin Goce (g), Her Dralle Draugentaller (key), Alexander The Great Balaban (tuba), Nesho Blackbird Petrovic (sax), Zoki Miloshevic (accordion), Dejan Sparavalo (violina), Dr Nelle Karajic (vo); Zaklin Pula (cymbal), Bokan Stankovic (tp), Zoran Marjanovic Cheda (perc), Vojislav Aralica (perc,key), Gorica Popovic (vo), Ljilja Dragutinovic (vo), Sloba Bronson (gypsi vo), Bodgan The Kuguar Diklic (cowbell). _Underground_ (1995) や _Black Cat, White Cat_ (1998) のような Balkan の gypsy 音楽を大胆にフィーチャーした映画を撮ってきた Yugoslavia の映画監督 Emir Kusutrica が、かつて参加していたバンド、The No Smoking Orchestra と 組んだアルバムが出ている。このバンドは、_Black Cat, White Cat_ で音楽を 担当していたバンドでもある。ちなみに、Unza Unza とは、彼らが自分たちの 音楽に付けた名前でもある。 Balkan の様々な音楽、特に、Gypsy band の影響を強く受けているとは思う けれども、やはりベースは rock だなと思う。僕の知る、Macedonia の Kocani Orkestar や Rumania の Ivo Papasov などで聴かれる、独特の変拍子 (11/8、7/8、9/8 など) が無く、それが生み出す回転するようなノリが無いのが、 その印象を強く与えていると思う。むしろ、Balkan っぽさを生んでいるのは、 フィーチャーされる tuba や sax、fiddle (violin) の節回しだろう。 特に、オープニングの "Unza Unza Time" をはじめ、"Drang Nach Osten"、 "Gruess Gott Trauer" のようなアップテンポのツービートの曲など、スカコア ならぬジプシーコアと呼びたくなるような所もあるし、そういうパンキッシュな 印象を全体的に臭わせてはいるのだけれど。一曲一曲は、そんな言葉ですくい きれない雑多さがある。パンキッシュに聴こえるのは、ちょっとしゃがれて 細かく強く切るような歌唱のせいもあると思うのだが、エンディングの "Furja Djildje" の歌唱はぐっと Balkan 的だと感じるし、"Devil In The Business Class" は背景の音の東欧風の節回しに比べて平坦な歌唱がとても New Wave 風に聴こえる。"Lubenica" のようなスローなインストゥルメンタル 曲もあって、guitar の使い方などぐっとモダンな印象を受ける。 歌声がもう少しキャッチがあると、ぐっと楽しめる作品になったと思うのだが。 悪くはないんだけれども、pop / rock 的な割には掴みが弱い気もする。 そんなアルバムだ。 映画 _Black Cat, White Cat_ のテーマソングにもなっていた "Djinji Rinji Bubamara" や、この映画の中では dance mix になっていた "Pitbull Terrier" など、_Black Cat, White Cat_ の中で聴いた曲も多く収録されている。 といっても、別テイクになっている。サウンドトラックの方が音処理に凝って いたように思うのだが、逆に、このアルバムでは勢いのある演奏になっている ように感じる。 2000/8/6 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕