A.D.D. Trio _Sic Bisqueitus Disintegrat (That's The Way The Cookie Crumbles)_ (ENJA (MW), ENJ-9361-2, 2000, CD) - 1)Hopscotch 2)Sic Bisqueitus Disintegrat (That's The Way The Cookie Crumbles) 3)Endless Noise 4)Photosynthesis 5)Crinkum-Crankum 6)Headjoint 8)Whammy Bar 9)Three Characters - Recorded 1998/8/18,19. - Robert Dick (flutes), Steve Arguelles (drums,percussion), Christy Doran (guitars). New York 出身のマルチ flute 奏者 Robert Dick をフィーチャーした bass-less guitar trio の新作が出た。前作 _Instinct_ (L+R, CDLR45104, 1996, CD) が、 既作曲の持寄りながら、かなり勢いの良かった面白い作品だったので、期待して いたのだけれども、正直に言えば、ちょっと肩透かしか。けれども、佳作だと思う、 あまり明確な旋律を吹くことは無いが、flute とは思えない contrabass flute の ボーボーいう音から、ピーピーいう piccolo まで、多彩な音色で Dick は 聴かせてくれるし。Christy Doran のギターは、リズミカルに刻むときもあれば、 ディレイ効かせて音を引っ張ることもあれば、ガギガシと掻き毟るような展開も ある。この、2楽器のリード/バッキング、高音部/低音部などを巡る駆け引きが、 この編成の魅力の一つだと思うし、このCDでも充分に楽しめる。 それでは、この作品に何が物足りなく感じていると、リズムだ。ノリの良い "Endless Noise" など好きな曲なのだけれど、これにしても、ほぼ一定にリズムを 刻んでいて、単調さは否めない。続く "Photosynthesis" は背景に微かに流れる 細かいリズムだけで展開し続けるし。この trio の原型ともなった A.B.D. Trio (Ray Anderson (trombone), Han Bennink (drums), Christy Doran (guitars)) もそうだったし、前作 _Instinct_ の中だと "ReDug Me Not" や "Way Up There" とか典型的だとも思うのだけど、リズムが走り出したり止まったりするような ところが、時間軸の自由度を感じたし、何よりギクシャクした感じもユーモラスで 楽しかったのだけれども。その感覚が、だいぶ弱まってしまった感がするのだ。 確かに、このような編成の音を聴きなれてしまったこともあると思うし、期待過大 だった面もある。実際、新作もけっこう楽しんで聴いている。お勧めできる佳作だ。 しかし、前作がレーベルもマイナーだったため話題にもならずに消えてしまったのが、 大変に惜しまれる。この新作で興味を持った人は、これに続いて、ぜひ前作の _Instinct_ (もはや入手困難か。) や、Ray Anderson, Han Bennink, Christy Doran, _Azurety_ (hatArt, CD6155, 1994, CD) や Ray Anderson, Han Bennink, Christy Doran, _Cheer Up_ (hatArt, CD6175, 1996, CD) に聴き進んで欲しい とも思う。 2000/8/12 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕