Evan Parker with Kjell Bjorgeengen 原美術館, 品川 2000/10/2, 19:00-20:30 - Evan Parker (soprano sax), Kjell Bjorgeengen (video). 3年前の原美術館の展覧会『ノルウェー現代美術の3人 − 場としての表現』に 出展されたビデオ作品 Kjell Bjorgeengen, _Relative To Zero_ (1997) は、 録音されたものであるが Evan Parker のソロの演奏が付いていたのだが、 そのライヴ版が実現した。この展示を観たのが、ちょうど、1997年の横浜 ジャズプロムナードに合わせて Evan Parker が来日する予定があった (結局キャンセルされたのだが) 直後だったこともあり、この展示もライヴ だったら良かったのに、と思ったものだったが。それから3年。実際に実現した ものを観ることができたのだが、期待を裏切らない、いや、期待以上に良い ものだったと思う。 楽器の演奏は Evan Parker のソロ。休憩をはさんで前半、後半約30分ずつ。 それぞれビデオ無し、ビデオ有りの順で2セットずつ。ビデオ無しでの アンコールを含めると計5セットの演奏。全て soprano sax による演奏で、 循環気法を用いて切れ目なく、細かい指使いでトレモロするかのように ピロピロと音を出し続ける演奏が基調。セットの頭ではリードを振動させずに 弱い音を出したり、強いブロウが出てくると終わりが近づいたかな、と 思わせるような展開もあったが。ピロピロ繰り出してくる音の強さは一様 ではなく、強調された音を拾っていくと旋律のようなものが浮き上がってくる 感もあって面白い。特に、高音でピロピロと音を繰り出しながら、 間に低音の強調された音を織り交ぜていくようなところが、良かった。 今回の来日での 4tet の演奏ではこういった点が目立たないように思うので、 ソロならでの楽しみかもしれない。 ビデオのと関係を言えば、3年前の展示で流されていた演奏は、循環気法も 使っておらず、弱めの音を断片的に吹くような演奏だっただけに、印象が かなり違った。前半に使われた映像は、_Relative To Zero_ (1997) とほぼ 同じで、モノトーンでむらのある「砂嵐」のような映像。強めの音の Parker の 演奏の方がいささか勝ってしまっていたような感も。むしろ、おそらく _True Blanking_ (1997) のあたりの映像を使ったものの方が、同じ粗い粒子の 動きからなる映像でも、変化に富んでいて音とのバランスが良かったように思う。 粗い粒子がもくもく動く様子は、Parker のもくもく湧き上がってくるような 演奏にぴったりマッチしているように感じるのは確かなのだけれど。最初に ビデオ作品を観たときは、演奏に合わせて live で画像処理しているの だろうかと思ったくらいだ。ちなみに、_True Blanking_ のスチルは、 Evan Parker with Noel Akchote, Lawrence Casserly and Joel Ryan, _Live At "Les Instants Chavires"_ (Leo, CDLR255, 1998, CD) のジャケット にも使われている。もともとは、Marc Ribot の演奏が付けられていたよう。 このビデオ作品を制作した Kjell Bjorgeengen は、Parker や Ribot の他にも、 Joelle Leandre や Jon Balke (Nils Petter Molvaer 界隈の人) と コラボレーションしているよう。もっと他の音楽付きの作品も観てみたいと 思うのだが。なかなか日本では紹介される機会も無さそうな気がする。 会場は、原美術館のザ・ホール。変則的な三角形の形状のスペースの角の所に ステージが設けられ、その角をはさむ2つの壁に同じビデオが上映されていた。 スポットライトが丸く当てられていたのだが、縁ぎりぎりでスポットライトの 円の中に入らない位置に立って演奏する Parker が面白かった。後半の1セット 目はスポットライトの中に入ったのだが、顔だけ光が当たらない位置だったし。 ビデオを背景にした演奏も良かったけれども、立ち位置の選び方がユーモラス だったのも、印象に残ったライヴだった。 2000/10/2 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕