今年も行ってきました、横浜ジャズプロムナード。今年は、神奈川県民ホールの 小ホールに腰を据えて、ゆっくり観た。毎年のように設定されている欧州の free jazz / avan-pop jazz を集めたホールだけれども。今回は、Timbre、 Carlo Actis Dato、Heinz Geisser - Guerino Mazzola と Leo レーベルがらみの ミュージシャンが並んでいて、少々その色を感じさせるものがあった。 Compagnie de Facteur Soudain - Denoit Cancoin (contrabass), Philippe Gilbert (alto sax), Paul Herve (electric guitar). 予備知識は無かったのだが、フランス出身。編成からして、ゆったりした〜軽快な リズムの演奏のときは、1950年代末の Jimmy Giuffre 3 (それも、Jimmy Giuffre, Jim Hall, Ralph Pena の編成のときの。) を連想させられる。このような変則的な 編成のときは guitar が鍵になると思うのだけれど、このトリオは guitar が 引き気味に感じられて、それが弱く感じた。手数の多い展開になったり、guitar で 音弄りしたりと、1970年代以降の free jazz/improv. の要素もあったけれども、 それはもっと半端。むしろ、Jimmy Giuffre 3 的展開の時の方が良かったように 思うし、それをもっと徹底した方が面白くなるように思った。 巻上 公一 (voice,Jew harp) - 梅津 和時 (reeds) - Lauren Newton (voice) 予定を変更しての特別セッション。3人揃ってのときは、巻上と Newton の声が 被るし、reeds の声も肉声に近いせいか、展開に広がりを感じなかったが。 巻上 - 梅津 の duo になってから盛り上がった。巻上が Jew harp を吹き、 梅津が余分に咥えたリードを弾きながらの演奏で始まったセッションは、 音が面白かった。続くラストのセッションは、ちょっとしたユーモラスな声 対フリーキーな音の出し合いという感もあって、それも面白かったが。 Vocal Quartet "Timbre" - Lauren Newton (vocal), Elisabeth Tuchmann (vocal), Osker Morth (vocal), Berti Mutter (vocal). ex-Vienna Art Orchestra/Choir の Lawren Newton 率いる男女2人ずつの voice performance の 4tet。Leo レーベルから Lauren Newton - Elisabeth Tuchmann - Osker Morth - Berti Mutter, _Timbre_ (Leo, CDLR221, 1995, CD) という リリースがある。実際にステージを見ると、舞台上での立ち位置も含めてかなり 芝居がかっており、ちょっと抽象的な音楽劇といったところ。男性一人は trombone を併用するが、楽器的というより小道具的な使い方をしており、 これが道化役っぽかったが。しかし、音楽としても劇としても中途半端な感じで、 いささか頭でっかちな印象が否めなかった。 Carlo Actis Dato Quartet - Carlo Actis Dato (reeds), Piero Ponzo (reeds), Enrico Fazio (double-bass), Fiorenzo Sordini (drums) Italia 出身で、主に Splasc(h) レーベルから何枚かリリースのある 4tet。 Latin 風だったり東欧風だったり、実は Italia 民謡風?だったり、その手の旋律や リズムを生かした演奏をする Italia 出身の4tet。multi reed 2人のおかげで、 小編成のブラスバンド並みの元気さを感じる楽しい演奏。Dato と Ponzo が キャラクタ的にもうまく住み分けているのが良かった。ステージの上での やりとりからして芸人なのだが、最前列に座った女性を躍らせたり、被りものを 被って客席を歩き回ったり、と、サービス精神旺盛。最後に、CDを翳して買う ことを促すあたりまで、大道芸人と同じノリだった。 後に知ったのだが、このステージは、サーカスや大道芸のルーツの一つとしても 知られる Italia の伝統的な即興喜劇 Commedia dell'Arte を踏まえたものだった。 ちなみに、Carlo Actis Dato は Pantalone の、Piero Ponzo は Zanni (Bagatino) の格好をして演奏していたのだっが。(Pantalone、Zanni (Bagatino) は、Commedia dell'Arte のストック・キャラクター。) Heinz Geisser (drums) - Guerino Mazzola (piano) William Parker (contrabass), Jeff Hoyer (trombone) を含む Collective Quartet の活動で知られる (Leo から何枚かリリースがある) 2人の duo 。William Parker 絡みということから想像付く通り、Cecil Tayler のフォロワーというか、むしろ、 冒頭から強い音と多い手数で突っ走るあたりは、ecstatic jazz という感じの音。 しかし、頭からこれではメリハリに欠けて単調だと思う。 Steve Lacy Trio - Steve Lacy (soprano sax), Jean-Jacques Avenel (bass), John Betsch (drums). Steve Lacy の旬は1970年代から1980年代前半にかけて (特に Saravah や Hat Hut での録音。) だと思っていて、この編成に Roswell Rudd (trombone) を加えた編成 での Steve Lacy - Roswell Rudd, _Monk's Dream_ (Verve, 543090-2, 1999, CD) を聴いても、最近は枯れたなぁと思っているが。そのCDで聴かれた良い感じの枯れ 具合を確認したステージ。Lacy はもともと吹きまくるタイプではないけれども、 それでも強めに吹き続けるようなところはちょっときつい感じもしたが。 新しい音、スリリングな音というわけではないが、Monk チューンをはじめ、 おなじみのフレーズを、飄々と吹く感じが楽しめた。やはり、アーンコールの Monk, "Bemsha Swing" はサービスか。 2001/5/27 (2000/10/9) 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕