確か9月頃に来日ライヴをしているし、ちょっと時機を逸したという感もある けれども、やはり良いので、紹介しておきたい。 Ponga _Ponga_ (Loosegroove, LG0018-2, 1999, CD) - 1)Pimba 2)Pick Up The Pieces Of Saturn 3)Naugahide 4)Blowtorch 5)Awesome Wells 6)Ponga Amore 7)Liberace In Space 8)Bookin - Wayne Horvitz (keyboards), Dave Palmer (keyboards), Bobby Provite (drums), Skerik (sax,samples). 1980年前後から New York を拠点に主に free jazz / improv. の文脈で John Zorn 界隈で活動してきた piano / keyboard 奏者 Wayne Horvitz は、 最近は Seattle に拠点を移しているのだが、そこで結成したバンドが、 Ponga だ。drums は 1980年代から Horwitz と多くのセッションを共に してきた Bobby Previte 、sax は Critter's Baggin の Skerik だ。 かなり techno 〜 breakbeats を通過してきたと感じる dance-oriented な 音作りだが、録音のほとんどはライヴ音源であり、それもオーヴァーダブは 一切行われていない。"Pick Up The Pieces Of Saturn" など典型的なのだが、 人力で drum'n'bass 的な drums を聴かせる Previte の演奏が圧巻。もちろん、 downtempo の時も良いのだが。Horwitz らの keyboard は organ 的な使われ方を しており、音の歪ませ方と反復するフレーズが、psychedelic な印象を受ける。 Skerik の sax はそれほどフリーキー音は多用せずに旋律を吹いている。 あまりこの手の音を聴いていないが、僕が知る最も近い音を出している バンドは Medeski Martin & Wood だろうか。 Ponga _The Remixes_ (Loosegroove, LG0026-2, 1999, CD) - 1)Silencio (Ponga) 2)Naugahide (Remix) (Spacetime Continuum) 3)Pimba (Remix) (Capsule 150) 4)Pimba (Fromunda Mix) (Even Schiller) 5)Pick Up The Pieces Of Saturn (Stereo Vacuum) 6)Pick Up The Pieces Of Saturn (Mosh Mix) (Amon Tobin) 7)Hidden Propolsion Unit (Mix) (Element 115) 8)Liberace In Space (Ponga Party Mix) (Firing Bullits) 9)Naugahide (Remix) (Fila Brazillia) 10)Naugahide (Remix) (Master Cylinder) 11)Come As You Went (Ponga) オーヴァーダブを否定しライヴ指向の強い Ponga だが、その一方で _Ponga_ の 音源を remix したCDもリリースされている。 オリジナルの演奏も人力 drum'n'bass な "Pick Up The Pieces Of Saturn" が やはり印象に残る。歪んだ音を残した Stereo Vacuum による remix よりも、 drill'n'bass という言葉を思い出させるようなシャープな dumb'n'bass チューンになっている Amon Tobin の remix の方が、面白いように思うが。 "Naugahide" はむしろ downtempo breakbeats な remix に向いていたようで、 1990年代半ばに _Freezone_ シリーズ (SSR レーベルの編集盤シリーズ) で 聴かれたような ambient がかった Spacetime Continuum の remix も気持ち 良いし。オリジナルの方が remix と思うような音が整理された Fila Brazillia の remix も対称的で面白いように思う。 free jazz / improv. と techno 〜 breakbeats の折衷という1990年代後半に なると比較的よく見られるようになったし、ある意味でこれらの作品もその 延長にあると思う。しかし、free jazz / improv. の文脈で techno 〜 breakbeats の試みを導入した場合、電子音響的な指向を除くと、カシャカシャ した高速の打ち込みをいれてみました、という程度のものが多かった。 その一方で techno 〜 breakbeats の文脈に jazz 的な生演奏を取り込む ような場合も、単に雰囲気を出すために引用するというレベルに終わっている ものが多かった。(もちろん、Courtney Pine の作品は reggae を導入していた 頃から足が地に付いた活動だと思っているし、Koch-Schuetz-Studer の一連の アルバムや、Derek Bailey, _Play Backs_ (Bingo, BIN004, 1998, CD) など、 面白いと思っている試みもあるけれど。) そんな中で、ライヴに拘る Ponga と、 その remix アルバムは、その両方が対等に組み合わさっている作品になって いるように思うし、それが、これらの作品を面白くしているように、僕は思う。 2000/11/14 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕