1980年代の中ごろまで、特に UK の Post-punk の文脈で、それ以前の1970年代的な
ロックの対比としてのダンス音楽としての funk (hip hop) と reggae / dub の
手法の導入が行われた。そのような funk / reggae から影響を受けたバンドの
一典型として、Colourbox を挙げることができると僕は思う。Colourbox は1980年
代半ばに 4AD レーベルを拠点に活動した、Martyn Young, Steven Young の2人を
中心とし、soul 風の女性歌手 Lorita Graham をフィーチャーした electro pop の
バンドだった。現在も入手が可能なCDは次の2タイトルだ。

Colourbox
_Colourbox_
(4AD, CAD508CD, ?, CD)
- 1)Sleepwalker 2)Just Give 'em Whiskey 3)Say You 4)The Moon Is Blue
5)Inside Informer 6)Punch 7)Suspicion 8)Manic 9)You Keep Me Hunging On
10)Arena 11)Edit The Dragon 12)Hipnition 13)We Walk Aroud The Streets
14)Arena II
- Produced by Martyn Young (except 6 by Bob Carter).
- Martyn Young, Steven Young, Lorita Graham;
Chris Karan (tabla) on 10, William Orbit (guitar) on 8,
Tony Persons (guitar) on 2.
- 1-10)Originally released as _Colourbox_ (4AD, CAD508, 1985, LP).
11-14)from _Colourbox_ (4AD, MAD509, 1985, MiniLP).

Colourbox
_Colourbox_
(4AD, MAD315CD, ?, CD)
- 1)The Official Colourbox World Cup Theme (12") 2)Baby I Love You So (12")
3)Looks Like We're Shy One Horse - Shoot Out 4)Shutgun 5)Keep On Pushing
6)Nation 7)Justice 8)Breakdown (12")
- 1-3)Produced by Colourbox.
1)from _The Official Colourbox World Cup Theme_ (4AD, BAD605, 1986, 12").
2-3)from _Baby I Love You So_ (4AD, BAD604, 1986, 12").
4-7)Produced by Paul "Groucho" Smykle. Post-production: Colourbox & John Fryer.
4-7)from _Colourbox_ (4AD, MAD315, 1983, miniLP).
9)Produced by Mick Glossop.
8)from _Breakdown_ (4AD, BAD304, 1983, 12").

僕が Colourbox というバンドを知ったのは、This Mortal Coil, _Sixteen Days /
Song To The Siren (4AD, BAD310, 1983, 12") というシングルを通してだった。
もちろん、このシングルで最も魅力的なのは Liz Fraser (Cocteau Twins) の
エキセントリックな歌声だったが、その背景のドライヴ感のあるビートを作って
いたのが、Colourbox の Martyn Young だった。

実際のところは、Colourbox は、Liz Fraser とは対称的な soul / R&B 的な女性
ヴォーカルをフィーチャーした electro/synth pop だった。1980年代初頭に活動した
Yazoo (Vince Clarke (ex-Depeche Mode) の作るシンプルなトラックに soul 的な
女性歌手 Alison Moyet をフィーチャーした synth pop バンド。) のフォロワー
とも言えるバンドで、実際、Colourbox のデビューシングル _Breakdown_
(4AD, AD215, 1982, 7") は、初期 Depeche Mode や Yazoo と同じく Blackwing
Studios で Eric Radcliff によって録音されています。 といっても、ミニマルな
Yazoo に比べて、 Colourbox は guitar solo をフィーチャーしたりと、もっと
雑食的な音作りだし、それが Yazoo とは違った魅力になっていたと思う。

特に、Yazoo には無く、Colourbox にある特徴は、reggae の要素だ。 最初の
ミニアルバム _Colourbox_ (4AD, MAD315, 1983, miniLP) は、Sly & Robbie /
Black Uhuru の dub で名を馳せていた Paul "Graucho" Smykle を制作に迎えていた。
このミニアルバムは他のシングル曲を数曲加えてCD化されている。

続くシングル _Say You_ (4AD, BAD403, 1984, 12") では、early reggae の名曲
Ken Booth, "Say You" をカヴァーしている。これは、オリジナルに負けない素敵な
pop 曲になっており、特にアルバムとは違う dubwise な12"のヴァージョンがお勧め。
Colourbox は、後にも、roots 期の Jacob Miller の名曲 "Baby I Love You So" を
カヴァー (_Baby I Love You So_ (4AD, BAD604, 1986, 12") 所収) している。

といっても、Colourbox は、実際のところは、R&B 〜 hip hop 的な要素の方が強く、
60s Motown の名曲 Diana Ross & The Supremes, "You Keep Me Hanging On" の
カヴァー (_The Moon Is Blue_ (4AD, BAD507, 1985, 12") 所収) も、electro
hop hop 的なバンバンいうビートがカッコ良い仕上がりになっている。

この "You Keep Me Hanging On" や "Say You" を収録した唯一のアルバム
_Colourbox_ (4AD, CAD508, 1985, LP) は、当時、初回プレス10,000枚限定の
ボーナスとして付けられたミニアルバム Colourbox (4AD, MAD509, 1985, miniLP) の
A面分と併せてCD化されており、これからまず一枚聴くとしたら、このCDがお勧めだ。 

funk (hip hop) と reggae / dub の方法論を、post-punk の文脈で pop に生かす
試みをしていた Colourbox だったが、その試みも1986年までだった。Colourbox と
A.R. Kane によるプロジェクト M/A/R/R/S によるシングル _Pump Up The Volume_
(4AD, BAD707, 1987, 12") では、funk / hip hop や reggae からの影響が消え、
その代わりに導入されたのは house のリズムだった。それは、ダンス音楽の流行の
変化を敏感に察知したものだったとは思うが。それは、Colourbox の活動自体を
終わらせてしまうものでもあった。

2000/10/31 (2000/12/12)
嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕