The Slits
_Cut_
(Island Masters, IMCD275 / 548 186-2, 2000, CD)
- 1)Instant Hit 2)So Tough 3)Spend, Spend, Spend 4)Shoplifting 5)FM
6)New Town 7)Gnop Gnip Affair 8)Love Und Romance 9)Typical Girls
10)Adventures Close To The Home 11)I Heard It Through The Grapevine
12)Love Und Romance (Slow Version)
- Created by The Slits and Palmotive.  Drummer: Budgie except 11)Maxi.
Produce by Dennis Bovell except 11) by The Slits, Rema, Stuart.
All titles by Viviane Albertine, Tessa Politt, Arianne Foster, Paloma Romero,
except 11) by Norman Whitfield and Barrett Strong.
- 1-10)Originally released as (Antilles, AN7072, 1978, LP)
and (Island Masters, IMCD90, 1990, CD).

脱 punk 期1980年前後に活動した女性のみによるバンド The Slits の1stアルバムが
追加曲2曲を加えてリマスタリングされ再CD化された。ちなみに、10年前のCD化の際は、
追加曲は無かった。

裸で泥まみれのメンバーの写真を使ったジャケットというのもスキャンダラスで、
その活動開始時期の早さから女性による punk バンドというイメージも強い彼女達
だけれども、このアルバムで聴かれる音はもはや rock'n'roll 的なものは無い。
Linton Kwesi Johnson / The Dub Band の活動で知られる Dennis Bovell を制作に
迎えており、やはり Bovell を制作に迎えて _Y_ (Raderscape, RAD20, 1979, LP)
と同様、rock の語彙を解体するかのように reggae / dub の mixing の手法を
用いた作品になっている。拙い演奏、という点では、同時代の dub の影響下の音
としては、The Flying Lizards, _The Flying Lizards_ (Virgin, V2150, 1978, LP)
とも共通するところが多いだろう。

この再CD化の一つのウリは、追加曲。"Typical Girl" とカップリングされた
シングル曲 Marvin Gaye, "I Heard It Through The Grapewine" は、他の曲に
比べて重く funky なリズムとギターのカッティングが Au Pairs のような強さを
感じさせてカッコイイ曲だ。もう一曲は、Slow Version とあるが、実質、"Love
Und Romance" の破壊的な dub とでもいったもの。

ブックレットは、20年後の今のインタヴューに基づくちょっと長めのライナー
ノーツも悪くないが、それよりも、泥を塗りたくったり、ブールで洗い流している
シーンなどの、ジャケットの写真と同じセッションで撮られたと思われる5枚の
モノクロ写真が載っているのが、興味深い。

1990年版のCDも持っていたが、この追加曲とブックレットのためだけでも、
買いなおした甲斐があったと感じた再CDリリースだ。

Pigbag
_Dr Heckle And Mr Jive_
(Camden, 74321 78953 2, 2000, CD)
- 1)Getting Up 2)Big Bag 3)Dozo Don 4)Brian The Snail 5)Wiggling 6)Brazil Nuts
7)Orangutango 8)As It Will Be 9)Whoops Goes My Body 10)Sunny Day (12" Version)
11)Another Orangutango (Remix) 12)Papa's Got Brand New Pigbag (7" Version)
- Produced by Pigbag & Dick O'Dell.  Engineered by Dave Hunt.
11)Remixed by Simon Underwood & James Johnstone.
- Chip Carpenter (drums,percussion),
Simon Underwood (electric bass,upright bass,cello,violin,percussion),
James Johnstone (guitar,alto sax,percussion),
Ollie Moore (tenor sax,sanza,alto clarinet), Chris Lee (trumpet,percussion),
Rodger Freeman (percussion,trombone,keyboards,piano);
Chris Hamlyn (clarinet,bongos) on 12.
- 1-8)Originally released as (Y, Y17, 1982, LP).
10) from _Sunny Day_ (Y, Y12, 1981, 12").
11) from _Papa's Got Brand New Pigbag_ (Y, Y10, 1982, 12").
12) from _Papa's Got Brand New Pigbag_ (Y, Y10, 1981, 7").

The Slits と1980年前後に活動を共にした The Pop Group だが、その解散後に
結成された1980年代前半に活躍した一連のバンドの一つ Pigbag の1stアルバムも、
CD再発されている。ちなみに、現在は既に廃盤になっている Pigbag, _Discology
- The Best Of Pigbag_ (Kaz, KAZCD3, 1987, CD) に収録されていない曲は、
3,4,5,7,8,9 の6曲。

Pigbag は脱 punk 期に funk のリズムを導入したバンドの一つだが、戦闘的な
ブラスのフレーズは、Fela Kuti のような Afro-beat の影響を強く感じる音で、
それが他の脱 punk 期の funk と際立っている。リズムセクションもしっかりして
おりダンサブルだ。特に、ヒット・シングル曲、"Papa's Got Brand New Pigbag"
と "Sunny Day" はカッコイイ。

もはや _Discology_ は入手困難であるが、ヒット曲2曲が追加されているし、
今から聴いて見ようという人には、このCDがお薦めだ。

Weekend
_La Variete_
(Vinyl Japan, ASKCD118, 2000, CD)
- 1)The End Of The Affair 2)Weekend Stroll 3)Summerdays
4)Carnival Headache 5)Drum Beat For Baby 6)A Life In The Day Of...Pt. 1
7)A Life In The Day Of...Pt. 1 8)Sleepy Theory 9)Woman's Eyes
10)Weekend Off 11)Red Planes 12)Nostalgia
13)Drumbeat 14)Red Planes 15)Nostalgia 16)Summerdays (Instr.)
- 1-12)Produced by Robbin Millar.  Engineered by Norman Mighell.
Recorded 1982/7-8.
- Alison Statton (bass,vocals), Simon Booth (guitar), Spike (guitar,viola);
Roy Dodds (drums), Dave Harwood (double bass,violin),
Dawson Miller (percussion), Phil Moxham (bass,sliding octave bass),
Larry Stabbins (tenor and soprano saxophones), Annie Whitehead (trombone).
- 1-12)Originally released as _La Variete_ (Rough Trade, ROUGH39, 1983, LP).
13-16)Originally released as _The '81 Demos_
(Vinyl Japan, TASKCD47, 1995, CDS).

脱 punk 期の UK のバンドの Africa 音楽から影響というと、この Weekend で
聴かれるのは、South Africa の Lulu Jive もしくは、Zimbabwe のポップを
思わせる、リズミカルな guitar のフレーズだ。Brasil 音楽からの影響も
感じられ、その絶妙なミックス具合は、Johnny Dyani, _Witchdoctor's Son_
(SteepleChase, SCCD-31098, 1978/1987, CD) のような UK を拠点に活動した
South African jazz の試みを受け継ぐものとも言える。

Weekend は Cardiff, Wales 出身の post-punk バンド Young Marble Giants の
女性歌手 Alison Statton が参加した、1980年代初頭に活躍したバンド。
_La Variete_ は彼らが残した唯一のアルバム。これが、去年に再CD化された。
かつて、Rough Trade 自身によってCD化 (Rough Trade, ROUGHLCD39, 1990, CD)
されていたが、既に廃盤だ。Rough Trade 版のCDでは、シングル3枚
(_View From Her Room_ (Rough Trade, RTT097, 1981, 12")、_Past Meets Present_
(Rough Trade, RTT107, 1982, 12")、_Drum Beat For Baby_ (Rough Trade, RTT116,
1982, 12")) の曲がすべて収録されていたが、オリジナルのLPの一曲目、
"The End Of The Affair" が収録されていなかった。この再CD化では、
シングルの曲は収録されていないが、LPの曲は完全に収録されているのが嬉しい。
1995年に発表された1981年録音のデモ4曲も全て収録されている。演奏や録音は
良いとは言えず、ファン向け以上のものではないと思うが。ちなみに、
ブックレットは Rough Trade 版CDのものがそのまま流用されている。

このCD化で収録されなかった、シングル3枚とライブ盤 Weekend with Keith Tippett,
_Live At Ronnie Scotts_ (Rough Trade, RTM139LP, 1983, 12") を纏めた形で
完全収録したCDがリリースされることを期待したい。

2001/1/14 (2001/1/17)
嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕