Clusone 3 _An Hour With ..._ (hatOLOGY, 554, 2000, CD) - 1)Medley 1: Pippistrello; Rollo II; Tinglit; I Am An Indian Too 2)It's You 3)Medley 2: Bella Coola; The Peacocks 4)Medley 3: Duck; O Pato; Duck; Turkey In The Straw 5)Medley 4: My Bird Of Paradise; I Never Had A Chance 6)Medley 5: Le Cygne; A Velho Pedro; Marie Pompoen 7)Baltimore Oriole - Recorded 1998/3/21. - Michael Moore (as,cl,melodica), Ernst Reijseger (cello), Han Bennink (ds). オランダの free jazz / improv. 集団 ICP (Instant Composers' Pool) Orchestra の 1990年代に入って活躍するサブプロジェクトともいえる Clusone 3 の6枚目のCD。 今回は、鳥が御題だった前作 _Rara Avis_ (hatLOLOGY, 523, 1999, CD) のライヴ盤、 とでもいうもの。といっても、録音は _An Hour With ..._ の方が古いので、ライヴ を経て _Rara Avis_ のコンセプトが固まったのだろうか。 Clusone 3 のコンセプトが最も際立った形で出たCDは、Irving Berlin song book である _Soft Lights And Sweet Music_ (hatART, CD6153, 1994, CD) だと思うし、 このCDで、"甘い"曲を「断片化、間テキスト性、換喩」(_An Hour With ..._ での John Corbett のライナーノーツより) といった手法で、解体し構築し直していく 醍醐味を堪能できると思うのだが。もちろん、この新作でもそのやり口は変わらない。 確かに、もはやコンセプト的には新鮮味は欠けるかもしれないけれども、フリーキー な演奏の対比で引き締まった甘さを持つ演奏はさすがだ。 Bennink の叩く締まった4ビートからはちゃけたドラミングまで、そして、Reijseger の広くサポートする cello の演奏も良いのだが。このCDを聴いて改めて良さに 気付かされたのは Michael Moore。特にこのCDで良い、というわけでもないが。 端正な clarinet の響きがとても落ち着く感じで、下手をすると散漫な演奏に なりそうなこのコンセプトを巧く抑えているように思う。1950年代の Jimmy Giuffre や Lee Konitz が作りだしていたような雰囲気を巧く甦らせている。 思えば、Clusone 3 の最初の2枚のアルバムは、Moore のレーベル Ramboy からの リリースだったし (_Clusone 3_ (Ramboy, 01, 1990, CD) と、_I Am An Indian_ (Ramboy, 05, 1993, CD))、彼がこのバンドの要なのかもしれない。Moore は Ramboy にリーダー作を多く残しているが、piano 3 の編成による演奏 (Marylin Crispell (もしくは Fred Hersch) (p) と Gerry Hemmingway (drums)) も、いささか Anthony Braxton 風のところがあって、Clusone 3 ほどのユーモアは無いが、 なかなか良い作品だ。 Han Bennink _Solo_ (ICP, 035, 2000, VHS) - Han Bennink (drums,percussions). その Clusone 3 の、というよりも、1960年代末からオランダの free jazz / improv. シーンで活躍する Bennink のソロ演奏を収めた30分弱の限定ビデオ。彼の参加した レコード/CD のジャケットでよく使われている、彼のイラスト・オブジェが、 彼のスタジオに並ぶ様子が楽しい。というかアトリエのようだ。演奏で叩き破って しまったと思われるドラムの皮をオブジェに再利用している、というのが笑えた。 演奏は、レコード演奏にあわせて4ビートを聴かせるようなところもあるけれど、 基本的にフリーキーで、ハプニング的な要素が強いもの。けど、さすが元 Fluxus がらみ、というよりも、もっと枯れて和やかな印象を受けてしまった。木靴を履いて いて、時折、それをパーカッションとしても使っていたのも印象的だった。 30分弱という収録時間は短いし、目新しい凄い演奏という感じでもないけれど、 ファンなら持っていて楽しいビデオかもしれない。 Steve Beresford / Han Bennink _B + B (In Edam)_ (ICP, 037, 2000, CD) - 1)Teas Not Made 2)Billow Your Pillow 3)Crumbs In Bed 4)Hagelslag - 1,4)Recorded 2000/2/24. 2,3)Recorded 2000/2/17. - Steve Beresford (piano,toy electronics), Han Bennink (percussion). その Bennink が、UK 出身の Steve Besesford (1970年代末に David Toop らと 組んで出てきた) とのデュオの作品もCD化している。Beresford はいろんな楽器を 操る人だけれども、この作品では、電子音を出すおもちゃを操っているときより、 piano を弾いているときの方が楽しい。というか、次第に壊れていくような Clusone 3 と似たような展開を僕が好きなだけかもしれないが。 Tristan Honsinger _A Camel's Kiss_ (ICP, 036, 2000, CD) - 1)Squitty Geshee 2)Stopera 3)Mary Contrary 4)Go East 5)A Camel's Kiss 6)Waves 7)From Time To Time Suite 8)Restless In Pieces - Recorded 1999/12/2,21. - Tristan Honsinger (cello). ICPから、といえば、1970年代から free jazz / improv. 演奏を聴かせてきた Tristan Honsinger のソロもリリースされている。もう一人の ICP の cello 奏者 というと Clusone 3 の Reijseger がいるわけだが、軽快な Reijseger に比べて ざらっとした印象を受ける音色を多用する。(だから、ICP で共存できるのだろうが。) The Pop Group や The Ex といった post-punk の文脈のバンドや、Cecil Taylor などとの共演では、その音色が生きるのも確かなのだが、ソロで聴いていると いささか重過ぎるように感じることの方が多い。悪くはないのだけど…。 2001/3/11 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕