Stefan Keune + John Russell w/ 近藤 等則 世田谷美術館講堂, http://www.setagayaartmuseum.or.jp/ 2001/4/27, 19:30-21:30 - Stefan Keune (soprano saxophone), John Russell (acoustic guitar), 近藤 等則 (electric trumpet). 1970年代から UK の free improv. というか Incus 界隈で活動する John Russell が、Germany の free improv. 界隈では若い世代の Stefan Keune と組んで来日した。 世田谷美術館では、1970年代から欧州 free improv. の人たちと交流もあった 近藤 等則 との共演という形でライヴが行われた。まずは Keune + Russell、 続いて 近藤 のソロ、さらにトリオ編成で。最後にトリオで短めのアンコール、 という4セットの演奏で、2時間ほどのライヴだった。 最も存在感のあった Russell に比べて、Keune は一癖足りなかったように思う。 マウスピースをあまり鳴らさず空気が抜けるような音を多用し、音をあまり切らずに 細かく音を変えていく、というのは、free improv. の演奏で比較的よく聴かれる ものだけれども、そこからもう一癖踏み出して欲しかったように思う。 Russell は acoustic guitar ということで、特に電気的に音を変形する妙も無い わけだし、プリペアドの類は全く用いない。それに、特に派手なフリーキーな 演奏を行うことはほどんど無い。指とピック一本とだけで、多彩な音を繰り出して くるという感じで、それが良かった。特に、最初のうちは席の位置から Russell の 手元が見えなかったので、どうやって音を出しているのだろう、という感じだった。 実際、ほとんど、フレットを押さえてピックでかき鳴らしているだけ、なのだが。 ライヴの間じゅう、彼の様子に目がくぎ付けになってしまった。途中2回ほど弦を 掻き切ってしまったのだが、弦の張り替えも演奏のような感じになっていたのが 良かった。切れた弦を振りまわして、フューフューいう風切り音を立てたり。 この手の音だしとしては、指を guitar のボディに擦り付けて音を響かせる、 ということもやっていたが。最後のアンコールで、ギターの頭を床に擦り付けて、 弦と胴をブォーンと響かせるという演奏をしたのも、他の2本との管楽器との マッチングという点でも良かった。 近藤 の electric trumpet の演奏は、レコードなどで聴いてきており、ある程度 予想ついたものだったが。pocket trumpet の音を拾って、ディレイをかけて音を 変形して重ねていくというもの。ソロのときは、かなり大きめな音で聴くことが できたし、音の重層感もそれなりにあったのだが。どうも ambient 的な感じに なりがちで、それほど強力な印象は残さなかった。 Keune + Russell の duo も improv. の演奏にありがちかなぁ、という気もして いたので、結局、最も楽しめたのは、trio の編成のときだった。聴く前は、 acoustic な2人と electric の音のバランスが悪くなるんじゃないか、と不安 だったのだが。実際にやってみると、たまにふと 近藤 がメロディアスなフレーズを 吹いてもそれが、それが Keune や Russell の音と合わさって違いに異化するような 感じもあったし、何より時間のメリハリもぐっと出たように感じた。最初の2セット だけなら、こんなものかな、という感じだったろうが、結局、楽しめたライヴだった。 2001/4/28 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕