Matthew Shipp's New Orbit _Matthew Shipp's New Orbit_ (Thirsty Ear, THI57095-2, 2001, CD) - 1)New Orbit 2)Paradox X 3)Orbit 2 4)Chi 5)Orbit 3 6)U Feature 7)Syntax 8)Maze Hint 9)Paradox Y 10)Orbit 4 - Recorded 2000/9/14. - Matthew Shipp (piano), Wadada Leo Smith (trumpet), William Parker (bass), Gerald Cleaver (drums). 1990年代に入って注目を浴びるようになった piano 奏者 Matthew Shipp の新 プロジェクト New Orbit は、実質レギュラーの Matthew Shipp Quartet, _Pastoral Composure_ (Thirsty Ear, THI57084-2, 2000, CD) の Roy Campbell が Wadada Leo Smith に置き換わった編成。 Shipp は William Parker や David S. Ware と活動を共にしてきており、1990年代 半ばまで Cecil Taylor からの影響が濃い、パーカッシヴで熱狂的な印象を受ける 即興演奏が特徴的だった。そして、その勢いが Shipp の魅力だったように思う。 しかし、1990年代後半になると、次第に静的な作曲傾向が強くなった。非調性的な ものだけでなく、メロディアスだったりするのだが。それが、ちょっと半端で つまらなくなった、という印象があった。 そんな中でこの新作が比較的良く感じるのは、AACM のメンバー、ベテラン Wadada Leo Smith の強い trumpet の音。多用するタンギングも切れ味良いし。 1960年代の free jazz を思わせるようなちょっと感傷的な節回しも、その音色に 合っている。正直に言って、以前から、Shipp や William Parker の界隈 (いわゆる ecstatic jazz) は brass 奏者がいささか役不足のように感じて いたので、brass との組み合わせがそれなりに新鮮に聴かれた一枚だった。 このリリースは、Thirsty Ear 傘下の jazz / new music シリーズである The Blue Series から。 Mat Maneri Quartet _Blue Decco_ (Thirsty Ear, THI57092-2, 2000, CD) - Recorded 2000/6/10. - 1)Hush Little Baby 2)It #2 3)Blue Decco 4)The New Lord's Prayer 5)It #3 6)Mute 7)Blue Sun 8)I Got it Bad - Mat Maneri (violin), Craig Taborn (piano), William Parker (bass), Gerald Cleaver (drums). 同じく The Blue Series からの Mat Maneri の quartet の新作は、bass - drums は変わらないものの、piano 奏者が Shipp ではなくて Craig Taborn。やはり、 Shipp と同じく1990年代に出てきたわけだが、Taborn の方がぐっと jazz 的。 トレモロも華やかな印象を与えるオープニングの伝承曲 "Hush Little Baby" に、 Shipp とTaborn の違いが際立っているように思う。といっても、いささか piano の 音が引き気味に感じられるのが惜しいか。エンディングの Ellington ナンバーと いい、全体としては swing するようなニュアンスの強い作品になっていて、 そこで Taborn のキャラクタも生きているし、それが気にいっていたりする。 1990年代半ばのテンションの高さからは、遠くに来てしまった、という感覚は 否めないが、落ち着いて楽しめる佳作にはなっているだろう。 2001/3/28 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕