2月のライヴで素晴らしいパフォーマンスを見せてくれた、UK の techno / house 系 ミュージシャン Matthew Herbert (a.k.a. Doctor Rockit, Wishmountain, Radioboy) 関係のレコードをざっと紹介。 Herbert _Leave Me Now_ (Soundslike / Studio K7, !K7097CDM, 2001, CDS) - 1)Leave Me Now 2)Leave Me Now (Recloose Mix) 3)Back To The Start 4)Leave Me Now (Richard Devine Mix) 4)Leave Me Now (Richard Devine Edit) - Produced by Matthew Herbert. - Matthew Herbert, Dani Siciliano (vocals), Phil Parnell (piano), Herbert 名義のニューシングルがリリースされている。去年に限定の promo 盤 (Soundslike, SL01, 2000, 12") が出回っていた "Leave Me Now" をタイトル曲と するCDS/12" (曲目は promo 盤と異なっている) で、5月にリリース予定のアルバム _Bodily Functions_ からの先行シングルだ。_Around The House_, (Phonography, GRAPHCD01, 1998, CD) 同様、女性歌手 Dani Siciliano をフィーチャーしている。 タイトル曲は2月の来日ライヴで聴いていたもの。聴いていても「リズムを刻んで いるこの音はステージ上のマイクを叩いて作っていた音だ」とかステージの様子が 思い出される。僕にとってはそれが一番の楽しみ方だが、そんなことを知らなくても 楽しめる音だと思う。 シングル曲ということもあるのか、_Around The House_ の隙間が大きく取られ、 淡くエコーがかった音作りに比べて、比較的くっきりして厚めな音作りだ。 Siciliano の声の扱いも厚めに前にでてきているように感じる。ちょっとポップに なったと思うけれども、ノリ良く楽しめる。 しかし、Detroit house の Recloose の remix となると、単なる女性歌手ポップに 過ぎなくなっているようにも思う。こういう remix と比較すると、Herbert と絶妙な 音のサンプリングやエコーやディレイの使い方が、曲や歌唱をポップから引き離して いるのだとも思う。 Phoenecia と同じく Miami のレーベル Schematic を拠点に活動している Richard Devine の remix は、かなり編集をしているのだが、せっかくなのだから、もう少し ギクシャクしたリズムやメタリックな音を使うと、良くなりそうなのだが。そういう ことなら、Funkstoerung あたりに手がけさせたら面白そうなのに、と思ってしまった。 ちなみに、"Back In The Start" は、もともと、Plug Research からリリースされた もので、CDとしては、Various Artists, _Voices In My Lunchbox_ (Plug Research, PR19CD4, 2000, CD) に収録されている。"Leave Me Now" を構成し直した曲だった、 ということに、このシングルで気付いた。 Doctor Rockit _Cafe De Flore_ (Likelike, LL11, 2000, 12") - A1)Cafe De Flore (Original Mix) 2)Paradisiac B1)Cafe De Flore (Charles Websters Latin Lovers Mix) 2)Little Sparkler - Written and Produced by Matthew Herbert B1) Additional Production by Charles "Red Star" Webster. - Matthew Herbert (accordion), Ashley Marlowe (drums), Shez Sherridan (guitar), Pete Wraight (trumpet). Doctor Rockit 名義によるシングルで、アルバム _Indoor Fireworks_ (Lifelike, LL10CD, 2000, CD) からのシングルカット。アルバムは、いろいろやり過ぎて、 全体としてはあまり良い仕上がりだとは思っていないのだが。_Cafe De Flore_ は Pairs にあるオープンカフェ Cafe De Flore で拾った音を使った曲で、Herbert の 拙い accordion による感傷的なメロディが魅力的。こうして一曲だけ聴くと良い と思う。B面の remix は、この緩い accordion の音を引かせて、その代わりに guitar をフィーチャーしている。それに会わせてリズムをシャキシャキさせて いるのが面白い。trumpet もソロを聴かせるが、その使い方は控えめだろうか。 ちなみに、残りの2曲は、アルバム未収のサンプル音からリズムを軽く組み上げた ような小品だ。house というより IDM 風だ。 Phil Pernell _Barcelona_ (Soundslike, SL02, 2001, 12") - A1)Barcelona 2)In Search Of... B1)Runaway 2)Fabric - Written and Produced by Phil Parnell. Herbert のレーベル Soundslike から、最近の Herbert の作品で piano / keyboards を演奏している Phil Parnell の12" もリリースされている。制作や remix などに Herbert がクレジットされているわけではないが、その雰囲気に とても近い音作りだ。歌もフィーチャーされず、キャッチのあるメロディも無いので、 いささか抽象的な印象は受けるけれども。こういう音は好きではあるのだが、 一癖あると面白くなるようにも思ってしまった。 Mouse On Mars _Idiology_ (Domino, WIGCD93, 2001, CD) - 1)Actionist Respoke 2)Subsequence 3)Presence 4)The Illking 5)Catching Butterflies With Hands 6)Doit 7)First : Break 8)Introduce 9)Unity Concepts 10)Paradical 11)Fantastic Analysis - Composed and Produced by Andi Toma / Jan St. Werner. Word by Andi Toma / Jan St. Werner / Dodo Nkoshi. - Andi Toma, Jan St. Werner, Dodo Nkoshi (voice), Harald Sack Ziegler (french horn, trumpet), Isolde Hermanns (clarinet,bass clarinet), Peter Stahlhofen (trumpet), Miriam Hardenberg (cello), Sebastian Reimann (violin), Hartmut Frank (viola), Matthew Herbert (piano), Adam Butler (electronics), F. X. Randomiz (programming), Alois Andre (guitar), Uli Thiesz (rubboard, drums), Josef Hoeltgen (broom bass), Matti Rouse (voice) Mouse On Mars _Actionist Respoke_ (Domino, RUG122CD, 2001, CDS) - 1)Actionist Respoke 2)Actionist Extension 3)DJ Collapse (Mouse On Mars & Herbert) - 1,2)Music by Andi Toma / Jan St. Werner. Words by Andi Toma / Jan St. Werner / Dodo Nkoshi. 3)Music and Words by Andi Toma / Jan St. Werner / Matthew Herbert. Duesseldorf, Germany の electronica / post-rock 界隈で活動する duo の 5th アルバムと、そこからカットされたシングルに、Herbert が参加している。 といっても、piano 奏者としてであり、サンプル音やエコー、リバーブの扱いは 独特なのだが、Herbert 風の音作りとは異なる、ギクシャクして、いささか ピリピリした感じだ。 Mouse On Mars はそのギクシャクした pop な音作りはそれなりに面白いと思って はいるが、どうも小粒さは否めない。このアルバムでは、前作 _Niun Niggung_ (Sonig / Our Choise, RTD195.3611.2, 2000, CD) 以上に strings や winds など 生楽器をフィーチャーし、さらに、_Niun Niggung_ では drums を叩いていた Dodo Nkoshi の歌をフィーチャーしている。少々音は厚くなったようには思うが、 ポップになったというほどではないように思う。 そんな中で最も耳に残るのは、"Subsequence" 。ダブワイズなベースラインも 気持ち良いのだが、聴くからに拙い Herbert の piano フレーズが、ギクシャク 気味の展開の曲にハマっている。Herbert との共作というと _Actionist Respoke_ に収録された "DJ Collapse" もあるが、さほど Herbert 色濃くはない。 2001/5/4 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕