Herbert _Bodily Functions_ (Soundslike / Studio K7, !K7097CD, 2001, CD) - 1)You're Unknown To Me 2)It's Only 3)Foreign Bodies 4)Suddenly 5)I Know 6)Leave Me Now 7)The Last Beat 8)You Saw It All 9)On Reflection 10)About This Time Each Day 11)Addiction 12)I Miss You 13)It's Only A Reprise 14)The Audience - Produced by Matthew Herbert. Recorded 1996-2001. - Matthew Herbert (piano,violin,bass guitar,rhodes), Dani Siciliano (vocals,clarinet), Phil Parnell (piano,rhodes), Peter Wright (bass clarinet,flugelhorn,flute,trumpet), John Matthias (violin), Shingai Shoniwa (vocal samples), Dave Green (bass), Paul Clarvis (drums), Luca Santucci (vocals), Ashley Marlowe (ride cymbal), Jim Mullen (guitar), etc. Doctor Rockit 名義での活動もあるが、_Around The House_, (Phonography, GRAPHCD01, 1998, CD) 以来3年ぶりとなる、Herbert 名義でのアルバム。 2月の来日公演も、先行シングル _Leave Me Now_ (Soundslike / Studio K7, !K7097CDM, 2001, CDS) も、大変に良かったため期待が大きすぎたか、 アルバムを通して聴くとあと一歩物足りない。 ほぼ全曲に歌がフィーチャーされており前作以上に歌物の作品という感じであり、 さらに、楽器の演奏を用いて jazz 的なイデオムを多く取り入れているのも、 この作品の特徴だろうか。もちろん、house におけるミニマルとでもいう 音作りから、次の一歩を歩み出しているのだろうが、どうも半端に感じる。 歌物という点に関して言えば、歌にキャッチが足りない。シングルカットされた "Leave Me Now" は良いのだが、それ以外が。それほど歌物という面を押し出して いなかった _Aroud The House_ に収録されていた "Around The House" や "Going Around" という歌の方がずっとポップでキャッチを感じるように思う。 これは、多分に _Around The House_ にもフィーチャーされていた女性歌手 Siciliano の歌唱にも依るところがあると思って、jazz 的なイデオムと合わせて 使われがちな呟くような歌唱が、逆に線の細さが目立ってしまって逆効果の ように思う。ほとんど、エフェクトを使っていない "It's Only" など、かなり辛い。 jazz 的なイデオムでリメイクされた "The Last Beat" にしても、歌声の処理に 関しては _Around The House_ の方が良かったように感じてしまう。ちなみに、 歌手は、Siciliano だけでなく、男性歌手と女性歌手がもう一人が1曲ずつ フィーチャーされている。それほど個性的な歌唱ではないので、可もなく 不可もなく、という所か。 jazz 的なイデオムに関して言えば、雰囲気以上のものでもないように思う。 といっても、ほとんど techno 〜 breakbeats 的なビート感を捨てたものもある。 "I Know" など、この手の典型とも言える曲で、さりげなく live electronics 的に音を変えたりする瞬間は好きだけれども、そういう live electronics 的な 処理なら、jazz の文脈でも充分に行われてきたと思うし。女性歌手をフィーチャー したものなら、John Surman / Karin Krog や Jerry Granelli / Jay Clayton の 試みなどをまず連想するし、そちらを聴いていた方が良いと思ってしまう。 といっても、シングルカットされた "Leave Me Now" はもちろん body percussion の音を多用した背景に低い声で切るように歌う Siciliano の歌唱がハマッた "Foreign Body" など、Herbert らしい魅力的な曲だと思う。次のシングルカットが 予定されている "Suddenly" の、多重な歌声の処理も悪くない。それなりに楽しめる 佳作ではある。 2001/5/22 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕