Taraf De Haidouks _Band Of Gypsies_ (CramWorld, CRAW24, 2001, CD) - 1)Sirba Pompierilor 2)Turcoaica Angali 3)Doru Meu E Numai Dor 4)Intoarcercea Cailor Magica 5)O Tsigan Ave O Casa 6)Barza Nachlea A Pai, Arachlieape La Ciorai 7)Pelin Bau, Pelin Maninc 8)Joc A Lui Cacurica 9)Carolina 10)Foaie Verde, Foaie Trifoai 11)Barbugiu 12)Mugur, Mugurel 13)Louloudji 14)Jea Kere - Neculae Neacsu (vocals,violin), Ilie Iorga (vocals), Dumitru Baicu "Cacurica" (vocals,small cymbals), Paul Giuclea "Pasalan" (vocals,violin), Marin P. Manole (vocals,accordeon), Gheorghe Falcaru (flute), Anghel Gheorghe "Caliu" (violin), Constantin Lautaru "Costica Boieru" (violin,vocals), Ionel Manole "Ionitsa" (accordeon,vocals), Marin Manole "Marius" (accordeon), Ion Tanase "Ionica" (small and large cymbalums), Viorel Vlad (contrabass), Cristinel Turturca (large cymbalum); Filip Simeonov (clarinet), Tarik Tuysuzoglu (darbuka), Roger Manole (vocals); Kocani Orkestar: Ismail Saliev (saxophone), Mendu Saliev (bariton tuba), Turan Gaberov (trumpet), Esat Saliev (baritone tuba), Saba Jasarov (tupan), Ismail Jasarov (bass tuba), Redzai Durmisev (bariton tuba), Deladin Demirov (clarinet), Ajlur Azizov (vocals), Zlate Nikolov (accordeon). Romania の Gypsy band 、Taraf De Haidouks の新作は、Bucarest, Romania での ライヴを収録したもの。正直に言えば、ヴァイオリン中心の音作りが伝統的な色を 強く感じさせる感もあって、今までの Cramworld からのアルバムからはそれほど 強く面白いという印象を受けていなかったのだが、この作品は強烈。ライヴ盤と いうことで客の手拍子とかも収録されているのだが、それも演奏として聴こえる くらいの勢いのある作品になっている。 ライヴという勢いもあるのだろうが、豪華なゲスト陣も良い方向に働いている。 Bulgaria 出身で Norway の jazz / folk 折衷バンド Farmers Market にもゲスト 参加していた clarinet 奏者 Filip Simeonov や、Turky 出身の darbuka 奏者 Tarik Tuysuzoglu、さらに、Macedonia 出身の Gypsy brass band、Kocani Orkestar。 短い歌の後、これらのゲストの顔見世的なソロが入る2曲で "Turcoaica Angali" で、 いきなり炸裂。同じ Gypsy band とはいえ、Taraf De Haidouks と Kocani Orkestar では背景も音楽性もかなり異なるわけだが、弦中心の前者と管中心の後者が互いに 変化を与えているように思う。Taraf De Haidouks も速いリズムが骨太になったように 感じるし、Kocani Orkestra も自身のみのアルバムよりも速吹きの演奏を聴かせて くれている。 様々なタイプの音楽の混交という点では、Kocani Orkestar が大きな役割を果たして いるのだろうか、と思うところも。"Carolina" は、ragga のような MC が入る曲 なのだが (カヴァーなのだがオリジナルは判らなかった。) 、こういう曲が楽しく 演奏できるのも、horn section のおかげのようにも思う。 ちなみに、制作リリースは、今まで Taraf De Haidouks や Kocani Orkestar の 作品をリリースしてきた Belgium のレーベル Cramworld 。1980年代から post-punk な rock/pop をリリースしてきた Crammed Discs 傘下のレーベルで、 techno レーベル SSR を兄弟レーベルとして持つくらいで、ライヴ盤とはいえ、 その音作りもクリアでクッキリ。洗練されている。それも、この魅力だろう。 しかし、ここでは Gypsy が橋渡しなっているとはいえ、この CD で聴かれるのは、 Gypsy 音楽というよりも、汎 Balkan 音楽というべきものなのかもしれない、と ふと思ってしまった。こういう様々なルーツを持つ音楽をネットワークして組み 合わせる、というのは、結局、実に world music っぽい、というか。 ちなみに、ジャケットをはじめライヴの写真は、石田 昌隆 が撮影しており、この アルバムに関する 石田 によるドキュメンタリ記事が、『ミュージック・マガジン』誌 に「バルカン・エキスプレス」として、『ラティーナ』誌に「ジプシーの楽士たちを 追って」と題して連載されている (2001年4月号〜)。 さて、この Taraf De Haidouks に参加している Kocani Orkestar だが、実は、 _L'Orient Est Rouge_ (CramWorld, CRAW19, 1997, CD)、_Gypsy Mambo_ (Materiali Soniri, MASOCD90114, 1999, CD) と素晴らしいアルバムを残した Naat Veliov が率いるものではなくなっている。実は、Kocani Orkestar が分裂 してしまったようで、Crammed Discs に残ったのはリーダー Naat Veliov 率いる 方ではなく、Ismail Saliev の方。元メンバーは Ismail & Mendu Saliev の二人 だけだが、ノリの良さは全く損なわれていない。 The Original Kocani Orkestar _Cigance_ (Dunya, FY8031-2, 2001, CD) - 1)Zikino Kolo 2)Muli Devla 3)Tehnicki Cocek 4)Pavketov Stakato 5)Malajka 6)Sevinc Oro 7)Alo Daje 8)Cigance 9)Bitola 10)Ej Mala 11)Eleno Mome 12)Pajduska - Naat Veliov (trumpet), Orhan Veliov (trumpet), Hikmet Veliov (tuba), Vinko Stefanov (accordeon), Ezgan Dautov (saxophone), Durak Demirov (saxophone), Mazlem Ramadanov (bariton), Dalkran Asmetov (bariton), Redzaim Juseinov (percussion), Ali Memedovski (darbuka). さて、Naat Veliov が率いる方は、Original Kocani Orkestar として活動している ようで、Italy の folk / world music レーベル Dunya (contemporary classical 〜 jazz / improv の New Tone を兄弟レーベルに持つ Felmay 傘下のレーベル) から新作をリリースしている。 以前の作品では、クリアにカンカンいう darbuka の音が魅力だったのだが、それが 控えめになり、シンバル+ドラムが打ち込みのように細かくリズムを刻んでいるのが 表に出ている。Ali Memedovski は以前からの darbuka 奏者なので、むしろ録音 制作のせいだと思われる。brass の吹きっぷりや曲は悪くないので、なんとも惜しい。 こういう folk / world music 系の音でも録音制作が重要なのだなぁ、と実感 させられる。前2作 (_L'Orient Est Rouge_、_Gypsy Mambo_) と異なり歌が フィーチャーされる曲があるのだが、その歌唱が魅力的でないのも、ちょっと残念。 こちらの方が元からのメンバーを多く揃えているのに音がショボく感じられるような 制作は残念だが。もっと良い録音制作での今後の展開を期待したいと思う。 バンドが2つに割れて、可能性が広がった、と思いたい。 2001/6/5 (2001/6/24) 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕