Lucas Niggli Zoom _Spawn Of Speed_ (Intakt, CD067, 2001, CD) - 1)Oxygene Beats 2)Superblues 3)Spawn Of Speed 4)Poems & Theorems I: Brain Ballad 5)Hoax 6)Light Night 7)Blue & Grey 8)Poems & Theorems II: Alma 9)Evergreen 10)Poems & Theorems III: No Noodle 11)Poems & Theorems IV: Peace 12)Lost 13)Poems & Theorems V: Sch! - Recorded 2000/9/28,29. - Nils Wogram (trombone), Philipp Schaufelberger (guitar), Lucas Niggli (drums) 1990年代に入って Germany の jazz / improv. 界隈で活躍しはじめた、比較的 若い世代の trombone 奏者 Nils Wogram が参加した bass-less guitar trio の 初録音がリリースされた。 今までの Wogram の2枚のリーダー作 (_Round Trip_ (Enja, ENJ-9307-2, 1996, CD) と _Speed Life_ (Enja, ENJ-9346-2, 1998, CD)) は、piano trio + trombone な 4tet 編成が保守的で、ノリは良いけどまっとう過ぎるのが物足りない所だった。 それに比べて、この trio 編成は、リーダーではないが、Wogram に自由に吹き まくらせるのにうってつけ。丸い音の速吹きだけでなく、濁った音などもより 効果的に使っているように思う。 しかし、この編成といえば、A.B.D. Trio (Ray Anderson (trombone) / Han Bennink (drums) / Christy Doran (guitar)) という強力な trio が1990年代 に録音を残しており (_Azurety_ (hat ART, CD6155, 1994, CD) と _Cheer Up_ (hat ART, CD6175, 1995, CD)) 、それらと比べると、小粒さは否めない。 特に、Schaufelberger がいささか物足りない。ディストーションやリバーブを 多用しないこともあって、live electronics も一般的になっているこの界隈の 音に比べて大人しさは否めない。もちろん、そういう技を用いなくても、 オープニングの "Oxygene Beats" には、Zulu jive (South Africa の音楽) の リズムギターを思わせるようなフレーズを繰り出す、はっと耳を惹くようなところ もあるのだが。そういう展開では続かなかったのが、少々残念。Frank Moebus (Der Rote Bereich, _Love Me Tender_ (Act, 9286-2, 2001, CD)) の guitar に 似ているように思う。 リーダーの Niggli は Switzerland 出身の若手 drums 奏者で、やはり同郷の 先輩 drums / percussion 奏者である Pierre Favre の ensemble などに参加 している。A.B.D. Trio の Bennink のようには、歌うようなユーモラスな演奏は 聴かせないが、比較的軽めの音で緩急のあるリズムを刻んでいる。 A.B.D. Trio を知っているだけにちょっと小粒だと思うが、Wogram の trombone は こういう編成の方が生きると思う。これからの展開に期待したいところだ。 2001/6/13 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕