Lee Perry _Divine Madness... Definitely_ (Pressure Sounds, PSCD32, 2001, 2CD) - CD1-1)Woman And Money (DD Dennis) 2)10 Cent Skank (Upsetters) 3)River To Cross (Viceroys) 4)Sweet Taste of Memory (Milton Henry) 5)Stand Up (Eric Donaldson) 6)Dub for Yah Rights (Upsetters) 7)So Many Ways (Reggie Antoine) 8)So Many Skanks (Upsetters) 9)Africa We Are Going Home (Time Unlimited) 10)Africa Dub (Upsetters) 11)Oh Me Oh My (Bree Daniels) 12)Oh Me Oh Dub (Upsetters) 13)Take Warning (Ralph Haughton & The Ebony Sisters) 14)Warning Of Dub (Upsetters) 15)Sons Of Negus (Jimmy Riley) 16)King of Dub (Upsetters) 17)To Be A Lover In Dub (Upsetters) CD2)Radio Scratch (A 26 minutes interview with Lee Perry by Steve Barker and Roger Eagle) - Produced by Lee Perry - Released 1,2)1974 3)1975 4)c.1974 5,6)1977 7,8)c.1975 9,10)1973 11,12)1977 13,14)c.1976 15,16)1975 17)1977. King Tubby と同時代に、しかし、彼とは対称的な音を複雑に重ねるような音作りの dub を形作った Lee Perry の、最も制作がノッていた Black Ark Studio 時代の アンソロジーが、reggae 再発専門レーベル Pressure Sounds からリリースされて いる。Lee Perry については、再評価が進み様々な質の再発が行われているわけだが、 この Pressure Sounds の再発の仕事は、Blood And Fire と並んで最も丁寧で、 お薦めできる内容だ。 3,4,17 の3曲を除いて、シングルのA面とそのヴァージョンであるB面を並べた ショーケース形式であり、シングルのリリースされた年までライナーノーツに クレジットされている。この手の形式は、1990年前後からの Steve Barrow の Trojan 〜 Blood And Fire の仕事やそれに続く Pressure Sounds の仕事を通して 洗練されてきた再発の形式だが。いままでの2枚の Pressure Sounds による 1970年代後半の Lee Perryの再発に比べても、データがちゃんと記載されるように なっている。 既に多くのアンソロジーが組まれてきているわけで、確かに名の知れた名曲は無い。 しかし、まだまだ音源が枯渇しそうもない勢いが、このアンソロジーにはある。 最も耳を捉えるのは、この中では末期ともいえる1977年リリースのものなのだが。 "Cherry Oh Baby" (_Open The Gate_ 所収) というキラーチューンとほぼ同時に 制作された Eric Donaldson, "Stand Up" は、同様の深いエコーっと浮遊する歌声が 楽しめる。カツカツいう攻撃的なパーカッションがカッコイイ Bree Daniels, "Oh Me Oh My" など、無名なものの中にもこんな良い曲があったのか、と思う。 もちろん、欧米でもリリースされた名曲 George Faith, "To Be A Lover" の August Publo のメロディカをフィーチャーした version (JA盤12"に収録されて いたという。) もとても嬉しい。 その一方で、1975年にリリースされた Reggie Antonie, "So Many Way" など、 その dubwize な音作りは完成していないけれど、R & B の影響がとても強い甘い バラード曲と、その絶妙にオフな歌唱の録音の組合せが、実に艶かしくて良い。 音作りはいかにも Lee Perry なのだが、こういう R & B バラードっぽい曲って Perry には無かったように感じて、実に新鮮に聴かれた曲だった。 1970年代後半の Black Ark 期の Lee Perry をこれから聴こう、という人には、 このアンソロジーより先に聴くべきアンソロジーがある (特に _Arkology_ ) が あるように思うが、さらに聴き進もうという人にはお薦めできる内容だ。 レアで高価になったシングルを集めるよるも、ずっと良いだろう。 ちなみに、1970年代後半に Island から欧米にリリースされた有名曲については、 以下の決定的なアンソロジーがリリースされている。 Lee Scratch Perry, _Arkology_ (Cronicle, CRNCD6 / Island Jamaica, 524 379-2, 1997, 3CD) さらに、同時代の7"を集めたアンソロジーとしても、リイシュー専門レーベル Blood And Fire の先駆けとなる Steve Barrow の手による Trojan レーベルでの 以下の2つの仕事がある。特に、この手の再発の先駆けとなった _Open The Gate_ には名曲が多い。 Lee `Scratch' Perry & Friends, _Open The Gate_ (Trojan, CDPRY2, 1989, 2CD) The Uspesseters with Lee Perry & Friends, _Build The Ark_ (Trojan, CDPRY3, 1990, 2CD) Pressure Sounds からも、既に以下の2枚のアンソロジーがリリースされている。 Lee Perry, _Voodooism_ (Pressure Sound, PSCD09, 1996, CD) Lee Perry, _Produced And Directed By The Upsetters_ (Pressure Sound, PSCD19, 1998, CD) これらの4枚のアンソロジーは、基本的にシングルA面の歌物とそのB面を続けて 並べて行ったショーケース形式になっている。レアなシングルを収集するほどの 気合が無い一般の聴き手にはお薦めだ。この他にも、Justice League からも良質の アンソロジーが出ているが、それらはいささかマニア向けだろうか。 1960年代末から1970年代前半の方に目を向けると、Trojan からの精力的な アンソロジーのリリース (特に、_The Complete UK Upsetter Singles Collection_ 全4巻は素晴らしい。) が目立つ。最近では、伝記 David Katz, _People Funny Boy - The Genius Of Lee "Scratch" Perry_ (Payback Press, ISBN0-86241-854-2, 2000) の筆者によるレアトラック集 Lee "Scratch" Perry, _Born In The Sky_ (Motion, FASTCD006, 2001, CD) も、いささかマニアック良質な編集盤だろう。 2001/6/24 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕