Vyacheslav Guyvoronsky / Evelin Petrova スペース・オルタ, 新横浜 2001/7/19, 19:00- - Vyacheslav Guyvoronsky (trumpet,voice), Evelin Petrova (accordion,vocal); guest: 巻上 公一 (voice). _Chonyi Together_ (Leo, CDLR268, 1999, CD) の、folk 的な味を利かせた jazz / improv 演奏が良かった Russia の duo が来日したので、そのライヴを 観てきた。客の入りが非常に悪かったのと、音楽評論家/ジャーナリスト Nikolay Dmitriev の解説を挟みつつの演奏だった、ということもあってか、 盛り上がったとか音にのめり込めたという感じでは無かったのだけれども、 それなりに楽しめたライヴだった。 選曲は、来日直前に出た2作目 _Homeless Songs_ からと半々くらいだったの だけれど。歌声というかヴォイシングの重みが、CDで聴かれるよりずっと重かった のが最も新鮮に聴かれたところだった。このヴォイシングが、丸くなりがちな 演奏にザラッとした印象を与えていた。地声で唸ったり掛け声をかけることも あるが、improv で多用されがちなちょっと不自然にさえずるような発声が主なの だけれど、それでも土着的な泥臭い感じという印象を受けてしまったのが、 我ながら不思議。_Chonyi Together_ は楽器音が中心でシットリ目の B.G.M. にも 使える感じなのだけれど、もっと引っ掛かる感じだ。ちなみに、最後の演奏は、 会場にいた 巻上 公一 のヴォイスを加えての演奏だった。 楽器の演奏はフリーキーの演奏をさほど行うわけでないので、CDから想像される ものから大きく外れることは無かったけれども。Guyvoronsky が trumpet 以外に 民族楽器的な縦笛を吹いていて、その音色も良かったように思う。 Irish folk ベースの曲もやっていたし、jazz / improv. の文脈というよりも、 例えば Celtic folk をはじめ Europe の folk が好きな人にもっと聴いて欲しい ような音だったように思った。 Vyacheslav Guyvoronsky / Evelin Petrova _Homeless Songs_ (SoLyd, SLR0288, 2001, CD) - Recorded 2000/2. - Vyacheslav Guyvoronsky (trumpet,voice), Evelin Petrova (accordion,vocal). リリースされたばかりの2枚目のアルバムは、"Song 1" から "Song 10" まで、 無題と言っていいような題の曲が10曲収録されているのだが。音は抽象的なもの ではなく、会場の演奏時の解説からするといろんな題材が隠されているという感じ。 "Homeless" というのも、旅芸人/大道芸人とかそういう所を意識している ところもあるようだ。かといって、いかにも大道芸時の音楽というのは演奏 していないのだけど。"Songs" の方はまさにそういう感じで、ライヴ同様に前作 _Chonyi Together_ よりぐっと声の要素が大きくなったように思う。綺麗に 聴かせるインストゥルメンタルで決めてみて欲しいと思うところもあったが、 ライヴからすると、それはこのプロジェクトの方向性でも無いのだろう。 しかし、folk 的な要素を用いつつ、jazz / improv. 的な (もしくは rock / dance 的な要素を取り入れた) 活動をするミュージシャンは Europe に多くいるし、 そこから大きく外れた音ではないと思う。そんな中で accordion はよく用い られると思うけれど、violin や clarinet ではなく、trumpet との duo という 組み合わせが、このバンドが新鮮に聴かれる一番のポイントのように僕は思う。 しかし、Guyvoronsky にしろ、Arkady Shilkloper にしても、Russia には folk 的な指向のある音楽に brass を用いるミュージシャンが多いように思う。 Russia の folk にはそういう要素が強いのだろうか。 2001/7/20 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕