Various Artists _Srbija: Sound Global_ (Free B92, CD008, 2000, CD) - 1)Balkan Rumba (Ognjen I Prajatelji) 2)Felix Koro (Lajko Felix & Boban Markovic Orkestar) 3)Idem Putem Pesma S Ori (Orkestar Milocana Mice Petrovica) 4)Sto Morava Mutna Tece (Drina) 5)Rroma Adagio (Earth-Wheel-Sky Ensemble) 6)Citeras (Lajko Felix) 7)Rudarima Balkana (Darko Macura) 8)Oz Dol Ide (Dragoslav Pavle Aksentijevic) 9)Gde Si Bilo Jare Moje (Svetlana Spajic) 10)Accordion (Vladimir Nikic) 11)Momina Igra (Boban Markovic Orkestar) 12)The Last Balkan Tango (Boris Kovac & LaDaABA Orchest) Serbia の folk 的なアプローチからの新しい音楽 (Milosevic 政権下で民族主義 高揚に利用された turbo-folk に代わる音楽) を集めた好編集盤が出ている。 Ritual Nova Ensemble を率いて、Recommended や Victo からリリースのある Boris Kovac の新バンド LaDaABa (LaDanzaApocalypsoBalcanica) Orchest の 新曲 (_The Last Balkan Tango_ (Piranha, CD-PIR1573, 2001, CD) 所収) の、 accordion や clarinet の響きと節回しが醸し出す Balkan ぽさは好きなのだ けれども、もう一つ吹っ切れてないかなぁ、とも思う。 というわけで、このCDでの聴き所は、Boban Markovic Orkestar と Lajko Felix。 Boban Markovic Orkestar は Emir Kusturica (dir.), _Underground_ に出演 していた Serbia の Gypsy brass band 。Lajko Felix は、Voivodina の Hungury 系の fiddle 奏者で、Boris Kovac と共演したり、France の alt. rock Noir Desir, _666.667 Club_ (Barclay, 1996) に客演したりしている。 突っ走る brass band と唸る fiddle が衝突するハイテンションな "Felix Koro" は、 Taraf De Haidouks と Kocani Orkestar の共演の和やかさとは対称的だろう。 citar をまるで rock guitar のようにかき鳴らす Lajko Felix, "Citeras" も、 テンション高めでカッコいい。もちろん、brass band のみで、いささか落ち 着いた演奏を聴かせる "Momina Igra" も、良い。 _Underground_ は Gypsy brass band を世界に知らしめた映画とも言えるわけで、 そこに出演していた Boban Markovic Orkestar は、もっと注目されて良いように 思うのだが。西欧のレーベルからリリースのある Kocani Orkestar (Macedonia) や Fanfare Ciocarila (Romania) に、知名度の点で遅れを取ってしまった感もある。 しかし、今年は、Moers Festival (1972年に始まった Germany の jazz festival。 free jazz / improv. に強い。) に出演しているし、今後の展開に期待したい。 このCDは、軽快な clarinet の節回しも楽しい Ognjen I Prijatelji など、 インストゥルメンタルものが中心だが。Drina や Svetlana Spajic のような 地声のヴォーカルもある。ただ、ソロもしくはデュオなので、ポリフォニーの ような凄さは無く残念。 このCDをリリースしているのは、Belgrade, Serbia, Yugoslavia のラジオ局 Free B92 ( http://www.freeb92.net/ ) だ。独裁的な Milosevic 政権下で 独立系の自由ラジオ局として政府の批判を続け、1999年3月24日のNATOによる 空爆開始と同時に、放送中止に追い込まれたが、インターネットで支援の輪が 広がり、インターネット・ラジオとして活動を続けたことで、知られる。 Milosevic 政権や NATO の空爆や経済制裁に反対する様々なコンセプチャルな イベントも企画していた。また、Yugoslavia の様々な alternative な音楽の 発信源の一つにもなっており、CDもリリースしている。_Srbija: Sound Grobal_ のような folk 的な音楽だけでなく、techno 〜 breakbeats 物も多くリリース している。 Boris Kovac _Mirror Of The Voice_ (Radio 021, 0008, 2000, CD) - 1)All Under The Celestial Cap 2)Falk Prelude: Love Sick 3)The Singing 4)Quasi Begin 5)Adagio 6)Voyage Of The Madmen's Ship 7)Sunny Voyage 8)Fragment Of Invisible Side 9)DAMARI - You... Within And Out Of Time (Part III) 10)Tango Apocalypso - 1) from _Ritual Nova I & II_ (ReR Megacorp, 1985-1988). 2) from _Profana Liturgija_ (ADN, 1990-1991). 3) from _Anamnesis - Ecumenical Mysteries_ (Victo, 1992). 4,5) from _Play On String_ (More Music, 1995). 6,7) from _The Mask_ (Interzone, 1995-1996). 8) from _East Off Europe_ (Victo, 1996-7). 9,10) previously unreleased. _Srbija: Sound Global_ でトリを取った Boris Kovac のベスト盤が、リリース されている。Kovac 自身によるエッセーを収録した56頁にわたるブックレットが、 CDケースと共に、タイトルがエンボス加工された段ボールのスリーブに収まっている。 ブックレットも白黒ながらレイアウトやタイポグラフィに凝ったもの。 パッケージの凝り方はファン向けだろうが。Recommended や Victo から リリースされたもの以外は、なかなか耳にする機会も無い音源で、概覧するのに いいアンソロジーかもしれない。 strings 使いや soprano の女性歌手など、現代音楽的な雰囲気も多い Kovac の 音なのだが、こうして通して聴くと、次第に folk 的な要素が大きくなっている ように感じてしまう。最後の "Tango Apocalypso" は LaDaABa Orchest で演奏 している曲でもあるのだが。 このCDをリリースしているのは、Kovac の出身地 Novi Sad, Vojvodina, Yogoslavia の自由ラジオ局 Radio 021 ( http://www.radio021.co.yu/ )。Belgrade の Free B92 に比べて知名度が低いけれども、NATO 空爆に対するマルチメディア・ プロジェクト "I Live Here" (1999) (International Local TV Festival in Kosice で特別賞を受賞) などの活動もある、Free B92 と似たような活動をしている ラジオ局だ。この Kovac のCDや、"I Live Here" のCDの他、alternative rock や 現代音楽のCDもリリースしている。 Free B92 や Radio 021 は、Yugoslavia における新しい音楽の動きの拠点の 感もあり、そのCDのリリースも注目だろう。 2001/9/30 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕