David S. Ware Quartet _Corridors & Parallels_ (AUM Fidelity, AUM019, 2001, CD) - 1) 2)Straight Track 3)Jazz Fi-Sci 4)Superimposed 5)Sound-A-Bye 6) 7)Corridors & Parallels 8)Somewhere 9)Spaces Embraces 10)Mother May You Rest In Bliss 11) - Produced by Steven Joerg. Recorded 2001/2/26,27 - David S. Ware (tenor saxophone), Matthew Shipp (synthesizer), William Parker (bass), Guillermo E. Brown (drums). 1970年代に Cecil Taylor Unit や Andrew Cyrille & Maono といった界隈から 出てきて、今や ecstatic jazz の中核的な saxophone 奏者 David S. Ware の、 メジャー Columbia から古巣の独立系レーベル AUM Fidelity に戻っての新作は、 面子的には今までと大きくは変わらない。Ware のちょっと叙情的で唸るような tenor のプレイも大きくは変わらない。しかし、piano 奏者 Matthew Shipp が 楽器を synthesizer に持ち替えたこともあって、かなり音の色合いが変わった ようにも思う。 どうしても、強めでパーカッシヴな piano から Cecil Taylor 的なところに 注意が行ってしまいがちなだけに、そういう色が引いているだけでも、あれっと 思うところがある。ambient 風な synthesizer の音色はちょっと、とは思う けれども。 ちょっとしたアルバムのインターリュードの後、オフビートな感じもある打ち込み リズムと Parker にしては落ち付いた感じの弓弾く bass をバックに、Ware の tenor が唸るタイトル曲 "Corridors & Parallels" は、カッコイイ仕上り。 次ぎに気にいったのは、whistle の入り方もいささか samba 的なポリリズミックな パーカッションがリズムを取る "Superimposed"。リズムも攻撃的な感じで良い。 今までの quartet だと free jazz 的な時間的な伸縮を感じるリズムのことが 多かっただけに、"Superimposed" や "Corridors & Parallels" のような反復感 のあるリズムに Ware の tenor が乗るのは、新鮮だった。こういう曲でもいける じゃないか、と思った。 barell organ のような音色を使った "Straight Track"、toy piano のような 音色を使った "Sound-A-Bye" などの syntheziser を使ったならではの曲だとは 思うけれども、サウンド作りの問題だと思うが、sax の音に比べて弱いように 感じて、ちょっと惜しい。"Sound-A-Bye" で聴かせる Ware の引き伸ばした音は、 ちょっと意外な吹き方と思ったけれど。 と、この synthesizer 導入の試みはそれなりに成功しているように思う。しかし、 (ポストリュードを除くと) 最後の曲 "Mother May You Rest In Bliss" で、 David S. Ware, _Birth Of A Being_ (hat Hut, W, 1979, LP) のオープニング "Prayer" のような、いささか大袈裟と感じさせるくらいの感傷的な感じの Ware の ソロを聴くと、こういうのもやっぱりカッコイイなぁと思う。さりげなく、 synthesizer で同じフレーズを辿っていたり、と、全く昔のままではないけれど。 David S. Ware は参加していなかったが、このアルバムに先立って、Matthew Shipp のレーベルから DJ を使って ecstatic jazz を再構成する Spring Heel Jack / The Blue Series Continuum, _Masses_ (Thirsty Ear, THI570103-2, 2001, CD) が リリースされたわけだが。この界隈にも、やっと、electronica の影響が表面化 してきた、というところだろうか。_Masses_ や _Corridors & Parallels_ からして、 今後の展開が楽しみだ。 2001/11/12 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕