Trigon 六行会ホールロビー, 新馬場, 品川 2001/11/16, 19:00-21:30 - Anatol Stefanet (viola,vocal), Alexandru Murzac (double-bass,guitar), Marian Caldararu (drums,marimba,percussion). 旧ソ連の Moldova から、Eugene Ionesco や Samuel Beckett といった、かつて 「反演劇」として知られた劇作家の作品を主なレパートリーにしている劇団 Teatrul "Eugene Ionesco" が来日している。その公演も気になっていたのだが、 予定が合わずに観ることができなかった。しかし、演目を切り替えるために公演を 行わない日を使って、ホールのロビーで Moldova の folk-influenced な jazz の バンド Trigon がライブ行ったので、観に行ってきた。 ライヴ前の予備知識は 3rd アルバム _Free Gone_ (Boheme, CDBMR912115, 2000, CD) だけだったのだけれども、それからはちょっとシリアスな印象を受けていたのだ けれども、実際はユーモラスなところも見せる楽しいパフォーマンスをみせてくれた。 基本的に、東欧〜バルカン風のテーマを、jazz 的 (bass が electric だけに jazz rock 的) なリズムに乗せて演奏するのだが。リードが viola だけに Romania の Taraf De Haidouks などを思わせる所もあったが、むしろ、Turkey っぽかったり、 Burgaria か Macedonia ぽかったりするように感じるところも。女性の司会によると、 現地の人ならすぐにわかるような曲が元になっているそうで、実際は現地でも いろんな要素が交じりあっているのかもしれない。 Stefanet の viola な electric なピックアップを付けていたが、大きく音を 弄ることはなし。Murzac はタッピングしたりと、打楽器的な演奏をするもあったが ちょっと地味だったかも。Caldararu は drums だけでなく marimba でメロディに 参加したり。 前半は比較的スタンダードな演奏をしたのだが、後半はかなり逸脱を見せるところも。 Duke Ellington ナンバーの "Caravan" では、客席最前列に座った女性客の膝の上に viola を置き、手本を見せるかのように弦をリズミカルに叩いてみせ、viola を客の 膝の上に置いたままステージに戻り、女性に演奏に参加させたり。guitar を抱え弾く Murzac を取り囲んで、Stefanet がネックの弦を爪弾き、Caldararu もネックを撥で 叩いて、一台の guitar を3人で弾くという芸当も見せてくれた。馬車旅を楽器音で 模写したようなユーモラスな "In Drum Spre Chisinau" (「キシニョフへ行く途中」) とか、3人による地声コーラス曲 "Haulita" (「ハウー歌」という意味) とやったり、 アンコールではダンスステップの音をリズムにした曲をやったり。CDで聴いている だけでは、楽しめないようなパフォーマンスを展開してくれた。 Trigon は1992年に結成。デビューアルバム _The Moldovan Wedding In Jazz_ (Silex, Y225046, 1994, CD) が France で賞を取り、知られるようになった。 リーダーの Stefanet は、汎黒海沿的な folk infrenced で alternative な jazz / improv. のプロジェクト Black Sea Orchestra にも参加している。 (_The Black Sea Project_ (Lyra, ML0660, 1998, CD) というリリースもある。) Trigon の最新アルバムは 4th の _Glasul Pamantului (The Voice Of My Earth)_ (Green, 005, 2001, CD)。録音はいまいちで、_Free Gone_ の方が良いように思う けれども。リリースしているのは、Bucharest, Romania の jazz club Green Hour のレーベル。"The Alternative Music Label" と銘打っていて、club も jazz に 限らず運営しているよう。Romania でも、こういうオルタナティヴな動きが 出てきているのだなぁ、と思う。こういうシーンの今後を期待したい。 2001/11/18 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕