Le Tigre _Feminist Sweepstakes_ (Mr. Lady, MRLR-19, 2001, CD) - 1)LT Tour Theme 2)Shred A 3)Fake French 4)FYR 5)On Guard 6)Much Finer 7)Dyke March 2001 8)Tres Bien 9)Well Well Well 10)TGIF 11)My Art1 12)Cry For Everything Bad That's Ever Happened 13)Keep On Livin' - Produced by Chris Stamey and Le Tigre. - Kathleen Hanna, Johanna Fateman, JD Samson. 1990年代初頭に Riot Grrrl 界隈で活躍していた Hanna (ex-Bikini Kill) の バンドの2nd アルバムは、今まで同様 Chris Stamey (dB's) の制作。といっても、 メンバーチェンジがあったよう。(新メンバーの Samson はゲイだろうか。) 「フェミニストの賭け事」とでもいうタイトルといい、芝居がかったジャケット デザインといい、どこまでマジめなんだろうか、思わせるものがあって、歌詞や コンセプトの面では気になるところはあるのだが。ただ、正直に言って、1st アルバム _Le Tigre_ (Mr. Lady, MRLR-07, 1999, CD) を聴いたほどのひっかかりが、 音の点では無いようにも感じる。物足りないのは、リズムだろうか。疾走感の あるリズムの時のベースラインが弱いので、ノリがロックっぽいように思う。 かといって、ダウンテンポで electro な曲も魅力的という感じでもない。 確かに、最近の歌詞付きの音楽の中では、最も気にいっている類の音楽なのだが。 やはり、こういうバンドは出だしの活きの良さが重要なのだろうか、と考えさせ されてしまった。 ちなみに、このアルバムから、欧州では Germany を拠点に活動する女性3人組 Chicks On Speed の自身のレーベルからリリースされている。 Chicks On Speed _The Re-Releases Of The Un-Releases_ (K, KLP120, 2000, CD) - 1)Intro 2)Turn Of The Century 3)Night Drive 4)Turn Of The Century 5)Bjorn Swein Interviewing Kiki 6)This Nation Is A Rave Nation 7)Euro-Trash Girl 8)I Wanna Be A DJ... Baby / Angel in Black 9)Lush Life / Oh 10)Gimme Back My Man 11)Glamour Girl 12)26 13)Pana Rip-Off 14)Six Billion Humans Can't Be Wrong 15)Do You Understand RMX 16)Mind Your Own Business 17)Stop Records Advert 18)Pulsinger RMX Again 19)This Is House Magic 20)Ped Stang (Re)issue By Hecker 21)Night Of The Pedestrian 22)Monsters 23)Kaltes Klares Wasser 24)This Is For You [Excerpt] / Melissa Introducing 'Etg' 25)Procrastinator 26)Melissa Talking To Stephan In The Cos Lounge Room 27)For All The Boys In The World 28)Preparing For 'Monsters' 29)Warm Leatherette 30)Yes I Do! 31)Song For A Future Generation 32)Rave Nation 33)Alex Testing - Remixed by Ramon Bauer and Gerhard Potuznik. - Melissa Logan, Alex Murray Leslie, Kili Moorse. その Chicks On Speed のUSデビュー盤は、Kレーベルから、今までリリースした 音源や、ライヴやインタヴューの音源を、Austria の electronica レーベル Mego の Bauer & Potunik に編集再構成させたもの。曲はさほど弄られていないし、 主要なカヴァー曲は全て収録されているので、これから聴こうという人にはお薦め。 Chicks On Speed も electronica meets Riot Grrrl とでもいうべき音楽性を 持ったバンドだが、Le Tigre よりもずっと electronica 寄りだろうか。しかし、 ほとんど digital hardcore 的な "Turn Of The Century" のような曲から Euro Disco 的 (良く言えば1990年前後の New Order 的) な "Glamour Girl" まで 音楽性は多様。何かスタイルを突き詰める音作りというより、スタイルの文脈と そのズラし方を意識した音作りだろうか。 Le Tigre を始めて聴いたとき、初期の B-52's を連想したのだが、このバンドも そう。というか、B-52's のカヴァー曲集 _Chix 52_ (Chicks On Speed, COS002CD, 1999?, CDS) というものもリリースしているほど。このアルバムにも "Song For A Future Generation" (_The B-52's_ (1979)) と "Give Me Back My Man" (_Wild Planet_ (1980)) の2曲をカバーを収録している。 しかし、この時期の曲のカヴァーで聴き物は、Delta 5, "Mind Your Own Business" (Rough Trade, 1979)。Rough Trade 最初期の、そして Gang Of Four などが元気 だった頃の Leeds 一派の名曲を、メタリックな electro に仕上げているのが、 とてもカッコ良い。直前に収録されたダブワイズからノイジーに展開するリミックス "Do You Understand RMX" と併せて、これだけでも一聴の価値があると思う。 1980年代初頭の German New Wave 女性バンド Malaria!, "Kaltes Klares Wasser" (Le Disques Du Crepuscule, 1982) のカヴァーは、元曲の雰囲気をあまり崩さず 仕上げていて良い。この頃のドイツ語圏の New Wave といえば Liliput なども 思い出すわけで、その手のカヴァーをリクエストしたくなる程だ。 あと、The Normal, "Warm Leatherette" (Mute, 1980) のカヴァーもしているが、 こういったカヴァーの流れを見ると、Grace Jones によるカヴァー (Island, 1981) のカヴァーと見なすべきなのかもしれない。 1980年代にこの手のオリジナルにハマっていた人にとっては、かなり楽しめるように 思う。特に、この頃の女性バンド/男女混成バンドの試みは、今でも耳を傾けるに 値するものが多いとは思う。しかし、その一方で、カヴァーというのもちょっと 寂しいなあ、と思うところもあったりするのだ。 ちなみに、上に挙げた以外のカヴァーとしては、Cracker (ex-Camper Van Beethoven) の "Euro-Trash Girl" (from _Kerosene Hat_ (1993)) がある。 Electrelane _Rock It To The Moon_ (Let's Rock!, LROCK03CD, 2001, CD) - 1)The Invisible Dog 2)Long Dark 3)Gabriel 4)Film Music 5)Blue Straggler 6)Many Peaks 7)Le Song 8)Spartakiade 9)U. O. R. 10)The Boat 11)Mother - Mixed and Produced by Matthew Ryan / Electrelane / Rupert Cobb. - Verity Susman (keyboards), Emma Gaze (drums), Rachel Dalley (bass), Mia Clarke (guitar). Chicks On Speed や Le Tigre といったバンドの間でネットワーク的なものが 出来つつあるように感じるのだが、この Electrelane もそんなバンドの一つ。 (Le Tigre, _Feminist Sweepstakes_ の裏ジャケットにも、その名が見える。) UK の女性4人組で、自身のレーベル Let's Rock! からのデビューアルバムが _Rock It To The Moon_ だ。(ちなみに、US では Mr. Lady と契約したようだ。) Le Tigre や Chicks On Speed が The B-52's 的なポップさを持っているのに対し、 この Electrelane はインストゥルメンタルバンド。ネットワークの中にこういう 音楽性の幅を持っているのは良いように思うのだけれど。いささか地味なように 感じられる。1990年代半ばに出てくれば post-rock 的なバンドとしてもっと 耳を惹いたかもしれないが。 Blectum From Blechdum _Haus De Snaus_ (Tigerbeat6, MEOW030, 2001, CD) - 1)Rock-A-Mallard 2)To Enos & Cleatis 3)Robophobic 4)Santa Clara 5)Shithole 6)Audio Stool 7)Machete 8)Audios Tool 9)Cosmic Carwash 10)Welcome To The Haus De Snaus 11)Knock Knock 12)The Fancy Torture Chamber 13)Right Time, Right Place 14)Antiducktion 15)Caravan Voyeger 16)Son Toe Fury 17)Mummy Secret Storage 18)I Miss My Toes, You Didn't Take All Of Them, Did You? 19)Bastardchild 20)Love Leter 21)Going Postal (It Is The Right Time) 22)Knock Knock Too 23)Hotradderdam 24)In Case You Forget, We Talked On This Record 25)In Search Of The Non-stop Party Planet 26)Bad Music - All songs and music by Kevin Blechdom and Blevin Blectum. - 1-9)Originally released as _Snauses And Mallards_ (Orthlorng Musork, 2000). 10-23)Originally released as _De Snaunted Haus_ (Tigerbeat6, 2000). 24,25)Previously unreleased. Le Tigre や Chicks On Speed と直接繋がる文脈には居ないが、Kid 606 率いる San Francisco, CA, US の IDM (intelligent dance music) のレーベル Tigerbeat6 を拠点に活動していた (今は既に解散) 女性2人組 Blectum From Blechdum も、 ジャケットデザインなどのノリはかなり近いように思う。 オフ気味な女性の会話声コラージュ的なところは彼女ら独特のようにも思うけれど、 明確な歌詞が無くグルーブ感の無い音作りは、基本的に IDM 的で、比較的音が近い Chicks On Speed に比べても魅力に欠けるところもあるのだが。 しかし、Le Tigre の Johanna Fateman も Various Artists, _Tigerbeat6, Inc._ (Tigerbeat6, MEOW012, 2001, 2CD) にゲストで参加しているようだし (未聴)、 このような IDM / electronica 的なアプローチも増えてくるのだろうなぁ、と 思うところもある。 ちなみに、彼女らは、メディアアートの祭典 Ars Electronica の2001年音楽部門で 入賞している。1980年代の Ars Electronica が現代音楽の文脈からの電子音楽で 占められていたことを考えると、彼女たちがクラッシック的な音楽教育を受けて いるからとはいえ、こういう音楽パフォーマンスが入賞するようになったというのも、 感慨深いものがある。 2001/12/24 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕