2001年に発売された (2000年に発売されていたが2001年に入手したものを含む) 中 から選んだ10枚。 第一位: Radio Boy, _The Mechanics Of Destruction_ (Accidental, AC03, 2001, CD). "Leave Me Now" のような良い歌もあったとはいえ、Herbert, _Bodily Functions_ (Soundslike / Studio K7, !K7097CD, 2001, CD) はいま一歩物足りなかったのだが。 Radio Boy 名義でのこの作品は、9.11テロを受けて出てきた音、というだけでなく、 いささかナイーヴな反グローバリゼーションの立場を取っているとはいえ、音楽的な ユーモアが、その組織化されたノイズを聴くに値するだけのものにしていた。 第二位: Spring Heel Jack / The Blue Series Continuum, _Masses_ (Thirsty Ear, THI570103-2, 2001, CD). ecstatic jazz meets DJ をついに実現した作品。Cecil Taylor Unit の試みを Spring Heel Jack の編集によって構成してみた、とでもいうべき "Masses" も 秀逸な仕上りだった。編集上とはいえ、Tim Berne と Evan Parker の共演なども 聴くことができたのも、新鮮だった。 第三位: Richie Hawtin, _DE9: Closer To The Edit_ (NovaMute, NOMU90CD, 2001, CD). 74曲を53分24秒にまとめた、超絶ハードディスクレコーディングDJミックス盤なの だけれど、単なる編集プログラムのデモのような仕上がりにならずに、ドライブ感を 生かした minimal techno 〜 micro house のDJミックス盤に仕上がっていた。 第四位: David S. Ware Quartet, _Corridors & Parallels_ (AUM Fidelity, AUM019, 2001, CD). 打ち込みや synthesizer を全面的に導入した新作。今までの quartet だと free jazz 的な時間的な伸縮を感じるリズムのことが多かっただけに、 "Superimposed" や "Corridors & Parallels" のような反復感のあるリズムに Ware の tenor が乗るのは、新鮮だった。 第五位: Noir Desir, _Des Visages Des Figures_ (Barclay, 589 275-2, 2001, CD). 9.11テロの日に発売され、"Le Grand Incendie" の炎上する NY を予言するような 内容の歌詞が話題になったのだけれど。むしろ、Brigitte Fontaine が参加した 23分余りの大曲 "L'Europe" の緊張感の高さが良かった。 第六位: Locust, _Wrong_ (Touch, TO:51, 2002, 2CD). 同時再生を想定した2枚組という試みの斬新さというより、electronica な トラックと軽めでちょっとひっかかるような歌唱の女性歌手の組み合わせが 魅力的なポップ、という所が良かった。 第七位: Besh O Drom, _Macso Himzes_ (Fono, FA-082-2, 2000, CD). Balkan Gypsy brass band をベースにしたバンド。drum'n'bass 的な打ち込みと turntablist 的なDJプレイをフィーチャーした "Space Maudi" は、想像した以上の ものではなかったが。folk 的な要素を元に、様々な音楽性をうまく取り込んで 楽しい作品だった。 第八位: Chicks On Speed, _The Re-Releases Of The Un-Releases_ (K, KLP120, 2000, CD). B-52's を思わすような音というと Le Tigre (Katherine Hanna (ex-Bikini Kill) のバンド) も悪くはなかったが。しかし、この Germany 出身の女性3人組の 今までの総集編的なCDでまとめて聴かれる B-52's はもちろん、Delta 5 や Malaria! などの1980s post-punk のカヴァーのカヴァーのセンスは、ツボに はまった感があった。 第九位: Bebel Gilberto, _Tanto Tempo Remixes_ (Ziriguiboom, ZIR10, 2001, CD). 元ネタ由来 Bossa Nova 〜 MBP 的な風味が、欧州でゆるやかなネットワークを 感じさせる jazzy な house 〜 breakbeats のDJたちによるリミックスにはまった、 そんな一枚。 第十位: Taraf De Haidouks, _Band Of Gypsies_ (CramWorld, CRAW24, 2001, CD). Romania の strings を多くフィーチャーした Gypsy band のライヴ盤は、 Macedonia の Gypsy brass band である Kocani Orkestar との共演。異なった 音楽性が勢いや骨太さを補完しあって、ノリが格段に良くなっている。そして、 そのノリを、来日しての共演ライヴ (Shibuya AX, 2001/9/2) で実際に体験する こともできたのも、良かった。 番外特選: 反グローバライゼーションの示威行為をネタにしたような Radio Boy 名義での ライヴ (Liquidroom, 2001/11/30) も面白かったけれども、やはり、Herbert 名義での Matthew Herbert のライヴ (Liquidroom, 2001/2/2) は、ライヴで サンプリングして音楽に組みたてて行くというだけでなく、パフォーマンスとして 観せるということまで考えた、とても楽しいライヴだった。フィーチャーされた 女性歌手 Dani Siciliano の振舞も魅力的だった。 2002/1/1 嶋田 "Trout Fishing in Japan" 丈裕