Cabaret Voltaire _Original Sound Of Sheffield '83/'87 - Best Of_ (Virgin, CVCD5, 2001, CD) - 1)Just Fascination (12" Mix) 2)Crackdown (12" Mix) 3)The Dream Ticket (12" Mix) 4)Sensoria (12" Mix) 5)James Brown (12" Mix) 6)Kino 7)I Want You (12" Mix) 8)Don't Argue (John Robie Extended Version) 9)Here To Go (Francois Kevorkian Extended Mix) 10)Than You America (Francois Kevorkian Bonus Beats) - 2,1) from _Crackdown_ (Some Bizarre / Virgin, CVS1, 1983, 12"). 3) from _The Dreamticket_ (Some Bizarre / Virgin, CVS2, 1983, 12"). 4) from _Sensoria_ (Some Bizarre / Virgin, CVS312, 1984, 12"). 5) from _James Brown_ (Some Bizarre / Virgin, CVS412, 1984, 12"). 6) from _Kino_ (Some Bizarre / Virgin, CVM1, 1985, 12"x2). 7) from _I Want You_ (Some Bizarre / Virgin, CVS512, 1985, 12"). 8) from _Don't Argue (Parlophone / EMI, 12R6157, 1987, 12"). 9) from _Here To Go_ (Parlophone / EMI, 12R6166, 1987, 12"). 10) previously unreleased. 1970年代に Sheffield, England から登場したこのバンドは、当初はテープや リズムボックスを中心とした音作りで、post-punk の文脈で Throbbing Gristle などと "industrial music" と一緒に言われるような音作りをしていた。 こういう音作りと、1910年代末の Zurich で Dadaist の拠点となった場所を ユニットの名前にしていたこともあって、punk よりもアート的な意味で前衛な 雰囲気を担っていたバンドでもある。 しかし、このCDに主に収録されている Some Bizarre / Virgin レーベル時代の Cabaret Voltaire は、Chris Watson が抜けて、Stephen Mallinder と Richard H. Kirk の duo となり、後に electro と呼ばれるような、funk や 最初期の hip hop に影響を強く受けた、さらに、影響を与えた音でもある。 このCDは、この electro 期のシングル曲を集めたもの (1曲は未発表リミックス)。 全て、アルバムに収録されたものではなく、12"シングルのヴァージョンだ。 この手の曲は、アルバムよりシングルのヴァージョンの方が良いことが多いし、 この頃の Cabaret Voltaire の入門盤として、うってつけの内容だろう。 もちろん、個別のアルバムを持っていて気に入っているなら、ヴァージョン違い として買って良い内容だろう。 Cabaret Voltaire の electro 化第一弾は、Some Bizarre 移籍直前にリリース された _Yasher_ (Factory, FAC82, 1982, 12") の John Robie (Afrika Bambaataa のミキサー) によるリミックスだが。_The Wire_ Issue 215 (Jan. 2002) の Cabaret Voltaire に関する記事 Ken Hollings, "Decoding Society" によると、 Robie の方からオファーがあって、最初は Tommy Boy からリリースする予定 だったという。そういう経緯を見ても、この頃の electro の影響が双方向的 だったということが伺われる。 Some Bizarre 時代の Cabaret Voltaire は昔から好きで、以前から良く聴いていた つもりだし。彼らの20年以上にわたる経歴からすると、electro 時代と括ることが できると思うが。こうして通して聴くと、変化しているのだなぁ、と気付かされる。 移籍直後の 1st アルバム _Crackdown_ (Some Bizarre / Virgin, CVCD1, 1983, CD) の頃には使っていなかった Emulator を使い出す 2nd アルバム _Miscrophonies_ (Some Bizarre, CVCD2, 1984, CD) への変化 (1,2曲目と3曲目以降の違い) など、 音の綺麗さが全然違う。Cabaret Voltaire の移籍は、高価な機材を使って 12"シングルを出し続けられるための資金のため、という目的もあったようだが。 そういう点では、この移籍は成功だったのかもしれない、と、思ってしまった。 _Microphonies_ の頃の Emulator は、Depeche Mode (_Construction Time Again_ (Mute, 1983) や _Some Great Reward_ (Mute, 1984)) の使い方とそっくりで、 続くミニアルバム _Drinking Gasoline_ (Some Bizarre/ Virgin, CVMCD1, 1985, CD) から 3rd アルバム _The Covenant, The Sword And The Arm Of The Lord_ (Some Bizzare, CVCD3, 1985, CD) にかけて、独自の使い方に消化したのだろうか、 と、思うところもあった。 しかし、Some Bizarre / Virgin から Parlophone / EMI に移籍した1987年以降、 その勢いも失速してしまうのだが。その失速感も、このベスト盤で感じることが できてしまう。現在、Virgin も EMI 傘下であり、一緒に扱い易いということはある のだろうが、勢いの良かった Virgin / Some Bizzare 時代に焦点を絞っても良かった ようにも思う。しかし、当時、漠然と house 化してしまったという印象があった のだが、こうして聴いてみると、むしろ downtempo だったとこに気付かされた。 このベスト盤では、_Crackdown_ (Some Bizarre / Virgin, CVS1, 1983, 12") のみ についてしか、シングルの両面を収録していない。しかし、同時にリリースされた CD3枚組と併せれば、全ての Some Bizarre / Virgin 時代のシングル音源がCD化 されたことになる。ちなみに、この2つの編集盤の編集は Richard H. Kirk が 行っている。デザインは、The Designers Republic。 Cabaret Voltaire _Conform To Deform '82/'90 - Archive_ (Virgin, CVBOX1, 2001, 3CD) このCD3枚組は、Some Bizarre / Virgin 〜 Perlophone / EMI 時代に残した シングルB面の曲、未発表曲を集めたCD2枚と、Perlophone 時代最末期の 1990/6/8 の Edinburgh でのライヴ音源 (未発表) を収録したものである。こちらはファン向け。 それより先に、Some Bizarre / Virgin 時代の3枚のアルバム (_Crackdown_、 _Microphonies_、_The Covenant, The Sword And The Arm Of The Lord_) を聴く ことをお薦めしたい。 このCDには32頁のブックレットが付いているのだが、その中で興味深いのは、 多くの他のミュージシャンからのコメント。書かれている内容については、 真に受けられないところもあると思うが、当時の人気とか思い出しても、一般的に 人気が出るというより、ミュージシャン受けする音だったんだなぁ、と思う。 Some Bizarre / Virgin から Parlophone / EMI に移籍して、Cabaret Voltaire は 2枚のアルバム _Code_ (Parlophone, 1987) と、_Groovy Laid Back And Nasty_ (Parlophone, 1989) の2枚のアルバムをリリースしている。この頃のの Cabaret Voltaire は、electro な音がルーチン化する一方、1990年代に入って techno 化 する前ということもあって、面白い音ではなかった。 Cabaret Voltaire _Remixed_ (EMI, 7243 5 32573-2, 2001, CD) 実際、Parlophone 時代の2枚のアルバムは廃盤になったままだが、ベスト盤の リリースに合わせるかのように、若干先行して、Parlophone 時代の音源を編集した CDもリリースされている。主に、シングルに収録されたリミックス・ヴァージョンを 集めている。この頃の音のアンソロジーを作るなら、リミックスを集めた方が 良いだろうし。ある意味で _Original Sound Of Sheffield '83/'87 - Best Of_ の 続編ともいえるが。やはり、それに比べてインパクトが薄いな、と思ってしまう。 ファン向けの編集盤だろうか。 ここに紹介した編集盤を含め、Cabaret Voltaire に関する詳細なディスコグラフィは Brainwashed によるサイト (http://www.brainwashed.com/cv/) で参照できる。 詳細な曲目については、ここを参照すると良いだろう。また、Unitary PR のサイト (http://www.unitarypr.freeserve.co.uk/cv_index.htm) で、編集盤のブックレットに 載っているテキストを参照することもできる。 2002/1/14 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕