Vangelis Katsoulis _Silent Voyage_ (Libra Music, LM021-2, 2001, CD) - 1)Unseen 2)Memories 3)Silent Voyage 4)Crying In Silence 5)Transition 6)Land Of Oblivion 7)Let By Rain 8)Traces 9)Strange Afternoons 10)Transition II 11)Rumble Fish 12)Desert Sky 13)First Rate, Second Hand 14)He Said To Me - Paolo Fresu (trumpet,flugelhorn), Bendik Hofseth (soprano & tenor saxophone), Tanya Nikoloudi (vocals), Takis Farazis (piano), Vangelis Katsoulis (keyboards,piano,percussion), Arild Andersen (bass), Paul Wertico (drums,percussion); Vassilis Tsabropoulos (piano), Vojislav Ivanovitch (guitar), Petros Kourtis (percussion,drums), Spyros Panayotopoulos (drums), Apostolis Anthimos (drums), Yannis Ekmektsoglou (electric guitar). Vangelis Katsoulis は1970年代末から活動するキーボード奏者。Floros Floridis や Sakis Papadimitriou といった Greece の free jazz / improv.の近傍で名前を 見かけたことがあるが、僕が音を聴くのは、去年末にリリースされたこのアルバムが 初めてだ。リーダー作は、これが5作目。 前作 _Through The Dark_ (Lyra, ML0624, 1997, CD) に Norway の Arild Andersen と Germany の Markus Stockhausen という ECM を拠点に活動するミュージシャンが 参加しているようだが。この新作にも、Arild Andersen が参加し、Andersen や Ketil Bjornstad のバンドで最近は活躍している Bendik Hofseth が sax を 吹いている。それなりに聴き知っているせいか、この Andersen - Hofseth の線の 音が目立っているように感じる。ブラインドで聴いたら、ECM 系の Nordic jazz の 録音と思うかもしれない。 しかし、リーダーの Katsoulis の音が ambient 風で存在感があまり無いのは ちょっと惜しい。ま、目だった "Rumble Fish" の keyboards の音使いが1980年代の synth pop みたいな感じでもあるので、それよりは良いかもしれないが。電子音響的 な音弄りとかにも挑戦してみれば面白いのに、と思ってしまう。 地中海音楽的な要素を期待した所もあるが、あまり地域性を感じさせない仕上り。 Tanya Nikoloudi のスキャットの声色も含め、jazz 的なニュアンスが強い仕上りだと 思う。France や北欧のミュージシャンとの共演も目立つ Italy の Paolo Fresu、 Pat Metheny Group の Paul Wartico、Arild Andersen と trio を組む Vassilis Tsabropoulos ("Silent Voyage" や "First Rate, Second Hand" での彼の、派手目な 音色の piano も jazz 的なニュアンスを強くしている。) など、面子も豪華だ。 こういう音は好きだし、B.G.M. には気持ち良いとは思うけれど、 もうひと癖欲しいような気がする。 ちなみに、このリリースをしているのは1995年に活動を始めた Greece のレーベル Libra Music。jazz 〜 world music をカヴァーしたレーベルのようだが、 post-ECM と言いたくなるような要素を強く持ったレーベルのようだ。 少し前のリリースになるが、一緒に入手した音盤がけっこう気にいったので、 これも紹介。 Andreas Georgiou _Vananda_ (Libra Music, LM016, 1998, CD) - 1)Constantina 2)Vananda 3)Gathering 4)Knowledge 5)Afro 6)Crossing The Nile 7)Lament - Recorded 1998/2-9. - Andreas Georgiou (16-string acoustic guitar,electric guitar,vocals), Eberhard Weber (5-string electric bass), Savina Yiannatou (vocals), Floros Floridis (soprano saxophone), Kora Michaelian (piano), Yerevan Symphonic Orchestra, Alfred Shtuni (1st violin). 1980年代から Greece の jazz / improv. シーンで活動してきた Cyprus 出身の guitar 奏者 Andreas Georgiou の5作目のリーダー作。やはり、僕が音を聴くのは、 これが初めて。 Georgiou の演奏は、フリーキーになることなく、手数多くコードを爪弾いていく ような演奏。oud 的というか中近東風かな、と感じるところもあるけれど、 聴いていて最初に連想したのは、Brazil の guitar 奏者 Egberto Gismonti だ。 こういう演奏をする guitar 奏者を僕はあまり知らないこともあり、冒頭の "Constantina" での Georgiou - Weber - Floridis の音の組み合わせから、 Charlie Heden / Jan Garbarek / Egbert Gismonti, _Folk Songs_ (ECM, ECM1170, 1981, LP/CD) を連想した、ということもあるのだが。 そういう意味で、Vangelis Katsoulis, _Silent Voyage_ 同様、Greece 的という 要素は強く感じ無い。 全体としては、Georgiou と Weber (1970年代から ECM や MPS のセッションで 活躍し続けてきた Germany の bass 奏者) の2人が軸になり、他がそれに絡んで いくという感じの展開だろうか。Georgiou がコードを爪弾く背景に、Weber が 緩くリードを取ったりするところが、気に入っている。"Gethering" や "Lament" のような duo の曲の、間合いの取り方なども良いと思う。 Floridis の飄々とした soprano sax (少々 Steve Lacy 風だろうか。) と Yiannatou (Primavera En Salonico と共に汎地中海的で folk-influenced な 活動が目立つ Greece の女性歌手。Vangelis Katsoulis, _Through The Dark_ にも 参加している。) のハイトーンな詠唱が Georgiou - Weber を背景に掛け合う オープニングの "Constantina" が、緊張感が高くて良い。最も気に入った曲だ。 しかし、orchestra が入り、Yiannatou のハイトーンな歌唱が漂う "Vananda" や "Crossing The Nile" ともなると、癒し系の編集盤にでも収録されそうな感じで、 映像のB.G.M.ならいいけれど…、という感じる時もあるのだけれど。全体としては さほど気にならない。ちなみに、オーケストレーションは基本的に Armenia 出身の Michaelian が手掛け、Armenia の首都 Yerevan の交響楽団が演奏している。 ただし、Armenia の音楽からの影響については、僕には判断し難い。 2002/03/11 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕