Myra Melford Trio _Alive In The House Of Saints_ (hatOLOGY, 2-570, 2001, 2CD) - CD1-1)Evening Might Still 2)Now & Now 1 3)Between Now & Then 4)Parts I & II Frank Lloyd Wright Goes West To Rest CD2-1)Breaking Light 2)Some Kind Of Blues 3)That The Peace 4)And Silence 5)Now & Now 2 6)Live Jump - Recorded live on 1993/2/5 except CD2-5,6) Recorded live on 1993/2/3. - Myra Melford (piano), Lindsey Horner (bass), Reggie Nicholson (drums). - CD1-1,4,CD2-4,3,1,6) originally relieased as (hatART, CD6136, 1993, CD). Chicago, IL, USA 出身で、AACM 界隈だけでなく New York の downtown 界隈の ミュージシャン (Dave Douglas とか) とも交流がある jazz piano 奏者 Myra Melford の出世作 _Alive In The House Of Saints_ が、同ライヴの 未発表録音も収録したCD2枚組になって再発された。Myra Melford のリーダー作、 そして trio として、_Jump_ (Enemy, EMY115-2, CD, 1990) と _Now & Now_ (Enemy, EMY131-2, CD, 1991) に続く3枚目のアルバムで、初のライヴ録音の リリースだった。 Chicago blues の流れを汲むメロディアスでノリの良い演奏と、Cecil Taylor 的 とも感じるパーカッシヴなフリーキーな演奏が、良い感じで同居しているのが Melford の良さだ。彼女の場合、特に、トレモロを多用した華やか目の音使いが、 僕は気に入っている。 このアルバムの後、アンサンブル指向を強め、Melford が弾きまくる場面が減って しまっただけに、この彼女の最初期の trio 編成の方が、彼女の演奏が堪能できる ように思う。そして、彼女の勢いが最も良い形で出たのが、このライヴ録音だろう。 もちろん、脇を固める元 Muhal Richard Abrams Quintet の Horner と Nicholson も良い。伴奏に徹するというより、Melford の演奏に負けない勢いで弾きまくり 叩きまくるという感じだ。特に、ブーンと唸る Norner の強い bass の音色が、 ノリに重要な役割を担っている。 オープニングの "Evening Might Still" は、5拍子 (時折6拍子) ながら、畳み 掛けるようなノリも最高な曲。3人のソロ回しも皆テンションが高く、勢いが 殺がれることなく盛り上がる。CD1の最後 (元は2曲目) の "Parts I & II Frank Lloyd Wright Goes West To Rest" は変化に富んだフリーな感じの曲で、 ノリという点で "Evening Might Still" と対称的なのだが、そこでの強いタッチの ピアノも強い印象を残すものになっている。そんな勢いの良い演奏の中、スローで 甘い旋律の "Breaking Light" (CD2のオープニング) の雰囲気も、とても良いと思う。 今回新たに収録された曲を聴いて新たな発見があった、という感じでもないが、 CD2枚になっても間延びすることなく充分なテンションが保たれていると思う。 Myra Melford の作品の中でも、いや、1990年代に録音されたパーカッシヴな jazz piano trio のレコード (より improv 寄りな Marylin Crispell や、 より jazz 寄りな Geri Allen とか) の中でも、最もお薦めのアルバムだ。 この再発を期にぜひ聴いて欲しい。 2002/03/24 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕