Suba
_Tributo_
(Ziriguiboom, ZIR13, 2002, CD)
- 1)Cereia, Amor D'Agua (Cibelle) 2)Futuro Primitivo 1 (Suba & Joao Parahyba)
3)Felicidade mix (Buscemi) 4)Segredo remake (Boyz From Brazil)
5)Tantos Desejos mix (Modern Quartet & Cibelle)
6)Nightly Sins (Joao Parahyba) 7)Samba Do Gringo Paulista (Zero dB)
8)Futuro Primitivo 2 (Suba & Joao Parahyba)
9)Lagoa Pinheiros (Suba & Marina Lima) 10)Voce Gosta mix (Phil Asher)
11)Are You Sleeping? (Suba, Katia B & BiD)
12)Felicidade mix (The Funky Lowlives)
13)Na Neblina Dos Sonhos (Taciana & Apollo 9)
14)Samba Do Gringo Paulista (Bigga Bush)
15)Futuro Primitivo 3 (Suba & Joao Parahyba) 16)Felicidade mix (Juryman)
- 3) from _Voce Gosta_ (Ziriguiboom, ZIR03, 1999, 12")
10,12,16) from _Felicidade_ (Ziriguiboom, ZBOOM121, 1999, 12").
7,14) from (Ziriguiboom, ZBOOM127, 2001, 12").
2,8,15) recorded live 1996.

Suba は Novi Sad, Serbia 出身で、1980年代後半に IRCAM, Paris で活動、
1990年代に Brazil に拠点を移し、1990年代半ばに Arnaldo Antunes らの制作で
頭角を現したプロデューサだ。1999年に Belguim のレーベル Crammed Discs の
傘下に Brazil の新しい音楽を紹介するレーベル Ziriguiboom が設立され、
Suba, _Sao Paulo Confession_ (Ziriguiboom, ZIR03, 1999, CD) だけでなく
Bebel Gilbert, _Tanto Tempo_ (Ziriguiboom, ZIR05, 2000, CD) の制作を手掛け、
レーベルの鍵となるプロデューサとなることが期待された矢先の1999年11月に、
事故死してしまった。そんな Suba こと Mitar Subotic を追悼するアルバムが、
Ziriguiboom からリリースされた。

といっても、3枚の12"シングルとしてリリースされたリミックス音源6曲を中心に、
彼と縁があったミュージシャンによる再演やリミックス、当時制作途中だった曲を
完成させたもの、さらに1996年のライヴ音源などを集めた内容になっている。
通して聴くと音的には散漫だが、12"を集める代わりに買うにはお徳な内容だし、
リミックス以外にも興味深い曲が収録されている。

このCDの一番の聴き所は、_Sao Paulo Confession_ でも活躍していた打楽器奏者
Joao Parahyba との1996年のライヴ音源だ。打楽器音の live electronics での
音弄りなのだが、その粗さに、Joao Parahyba, "Nightly Sins" でのスタジオで
丁寧に組み上げた音とは違う生々しさを感じて、とてもかっこよいのだ。この手の
音源がアルバム1枚作れるだけ残っていないようなのが、少々残念だ。

リミックス物で最も気に入ったのは、女性歌手 Monica Vascolcelos をフィーチャー
したアップテンポな Zero dB, "Samba do Gringo Paulista" だ。house なリミックス
も嫌いではないが、こういう中では印象薄いように思う。

未完に終わった Brazil のプロデューサ BiD (Chico Science など) との協働した
音源を、女性歌手 Katia B をフィーチャーして仕上げた "Are You Sleeping?" は、
trip hop 〜 drum'n'bass がちょっとオフな感じで歌が漂う感じが Locust とかと
共通する感じがあって、とても気に入っている。rabeca と思われる fiddle 風の
弦楽器の音も効果的だ。

Suba の出身地である Serbia からも縁のミュージシャンとして、Suba と幼馴染だ
という Vanjus (a.k.a. Modern Quartet) が参加している。ここでは無難な house
をやっている。しかし、_Belgrade Coffee Shop_ (Free B92, CD004, 2000, CD) や
_Belgrade Coffee Shop 2_ (Stereo Freeze / Free B92, CD302, 2001, CD) に変な
リズムがとても印象的な曲を提供していた Modern Quartet が、Suba とこういう
繋がりがあったというのは、ちょっと驚きだった。ちなみに、ジャケットの
イラストも、Suba や Vanjus と幼馴染の cartoonist の Zoran Janjetov による
ものだ。

Arnaldo Antunes
_Paradeiro_
(BMG (Brazil), 7432187426-2, 2001, CD)
- 1)Atencao 2)Essa Mulher 3)Paradeiro 4)Se Tudo Pode Acontecer 5)Na Massa
6)Debaixo D'Agua 7)Do Vento 8)Luzes 9)Escurississimo 10)Exagerado 11)Cidade
12)O Mosquito 13)Santa 14)Lembranca Vo
- Produzido por Carlinhos Brown e Ale Siqueira.
- Arnaldo Antunes, Carlinhos Brown, Leonardo Reis, Edgard Scandurra,
Paulo Tatit, Zeba Moreau, Juninho Costa, Orlando Costa, Boghan Costa,
Davi Moraes, Marisa Monte, etc

Suba を僕が知ったのは、Arnaldo Antunes, _O Silencio_ (BMG (Brazil),
7432139014-2, 1996, CD) や Antunes のバンドのギター奏者 Edgard Scandurra の
_Benzina_ (Virgin (Brazil), 813420-2, 1996, CD) といったアルバムの制作で
だった。Suba, _Sao Paulo Confession_ (Ziriguiboom, ZIR03, 1999, CD) にも
Antunes は参加していた。

そんな Antunes の新作は、Timbalada で知られる Carlinhos Brown の制作。
Titas の Leonardo Rais や、_Nome_ (BMG (Brazil), 3-01500, 1993, VHS) で
共演した女性歌手 Marisa Monte など、豪華なメンバーによる。

Antunes の一癖ある力が抜けた歌唱といい、歪んだ音やちょっとオフな音の使い
方も良い、ポップな佳作だとは思う。音数少ない背景に Monte とデュエットする
表題曲 "Paradeiro" も好きだ。けど、ポップソングの枠を守り過ぎている。
_Nome_ で聴かれるような、突き抜けた音世界をもう一度、とも思ってしまう。
こういうアルバムとは別企画になるのかもしれないが。

2002/05/12
嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕