毎年観に行っている横濱ジャズプロムナードは、ワールドカップに合わせての 5月末の開催だったもよう。例年、海外特集のセッションを追いかけがちなの だけれど、今回は特に惹かれるものが無かったので、新しい赤レンガ倉庫の ホールに腰を据えてのんびり。いつか観られるだろうと、普段は優先順位が 低くなりがちな日本のミュージシャンを観ることができたのは、よかった。 2002年の横濱ジャズプロムナードから観たセットについて簡単な感想を。 姜 泰煥 (alto sax) - 佐藤 允彦 (piano) - さが ゆき (vocals,electronics) 赤レンガ倉庫ホール, 横浜 12:00-13:00 Lauren Newton (vocals) - 沢井 一恵 (koto) - 斎藤 徹 (bass) 赤レンガ倉庫ホール, 横浜 13:30-14:30 女性ヴォーカルを中心に据えたトリオを2セットを続けて観たこともあり、 比較して観たくなるのだが、後者の方が楽しめた。piano/sax と koto/bass という楽器の特性も差もあると思うが。前者は皆一緒に強奏になって一緒に 静かになる、という単調な展開に感じた。姜の sax と さが の vocals の 音が重なってしまう、というか、展開に広がりを感じられなかった。まるで 篳篥か何かのようなピーという sax の高音とか、連続的なクラスター音のように ゴロゴロ響く piano とか、個々の音で良いなぁと思った時はあっただけに 残念だった。そういう点では、後者はいつもどこかに音の隙間をあけておき、 そこに夫々の音が良いタイミングで飛び込んでくる、という印象だ。単に たくさんの弦を張った木箱のように琴を扱う 沢井 も、ふっと琴の響きを 繰り出したり。立ち振る舞いもユーモラスなNewton (ex-Vienna Art Orchestra) も、抽象的な歌唱だけでなく詩を朗読したり、と、声の表情を変えていたのも 良かった。もちろん、斎藤の bass の時折くりだす打楽器的な演奏での アクセントのタイミングも良かった。 Mika Pohjola (piano) - Yusuke Yamamoto (drums,percussion,berimbau,flute,etc) 赤レンガ倉庫ホール, 横浜 15:00-16:00 それぞれ Finland と日本の出身だが、New York で活動する2人のデュオ、 という予備知識しか無かったのだが、予想より楽しめた。Yamamoto は手や ブラシを多用して、あまり強い音を出さない。berimbau を弾いたり flute を 吹いたり、thumb piano を (おそらくライヴでループして) リズムを作ったり と小技は効いている。Pohjola も強い音は使わず高音を多用する。内部奏法 とかもするが、印象派 (というか Debussy) を連想させられるような旋律を 断片的に弾くという感じだ。piano と berimbau の duo とか良かったと思うし、 こういう繊細な感じは嫌いじゃないのだが、もう一癖欲しいかな。というか、 ライヴよりもスタジオ録音の方が映えそうな音作りと展開だ。実際、 ライヴの後に Mika Pohjola & Yusuke Yamamoto, _Sound Of Village_ (Splasc(h), CDH824.2, 2001, CD) を買って聴いてみたのだが、Pohjola も Rhodes や harpsichord も弾いているし、そちらの方が良く聴こえた。 flute を吹いたときに思ったのだが、clarinet か flench horn のような 柔らかい音の管楽器を加えると展開が広がって良くなるように思う。 で、一休み入れた後…。 Mark Dresser (bass) - Denman Marloney (piano) 赤レンガ倉庫ホール, 横浜 18:00-19:00 Various Artists, _Visions Volume One_ (AUM Fidelity, AUM007/8, 1997, 2CD) の Mark Dresser Quartet での演奏くらいしか聴いたことが無かった Marloney だが、研磨剤抜きグラインダのようなものを使う内部奏法で、piano をギュイーン と唸らせるのが、ギミックも効いた感じで良かった。といっても、そういう フリーキーな演奏は味付けの一つで、基本はリズミカルな作曲に基づく演奏と いう感じだった。スゥィング感と微妙に違う変なノリが楽しめた。Dresser は、 以前、Say No More のライヴで演奏を観ているが、そのときよりもフリーキーな 控えめに、ノリを繰り出していたのが良かった。ちなみに、去年この duo で _Duologues_ (Les Disques Victo, CD073, 2001, CD) をリリースしている。 最後のセットは、途中退場してしまったので、レヴューはなし。 2002/05/25 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕