Karsten Vogel _Light When Dark_ (Tutl, HJF73, 2000, CD) - 1)I Believe You 2)Grottoccata #1 3)Gandagadur 4)Grottoccata #2 5)Grotimol 6)St. James Infirmary 7)You Are In My Heart 8)Grottoccata #3 9)Grottoblues 10)Stick'n'Stone 11)Crosscurrents 12)Se Nu Stiger Solen 13)Cavebirds 14)Prelude - Recorded May 2000/5/22,29. Produced by Karsten Vogel and Kristian Blak. - Karsten Vogel (alto saxophone), Kristian Blak (keyboards). 北海に浮かぶ Denmark の自治領の Faroe Islands では、島を取り巻く切り立った 岩壁にある洞窟を使って、コンサートを時々行っている。このCDは、そのコンサート の様子を捉えたものだ。演奏は、Faroe Islands の音楽シーンのキーマンでもある Blak と、Denmark の sax 奏者 (Stunt などからリーダー作を出している) の Vogel の duo だ。 深いナチュラルエコーだが、ざわざわいう波の音も収録されているので、音からは 洞窟という閉塞された空間というより、もっと開けた野外のような印象も受ける。 その独特の音空間だけでも十分に楽しめたように思う。 Vogel の sax は、ナチュラルエコーを生かすためか、ゆったりしたメロディーを 吹いていることが多い。節回しとか、ECM な北欧 jazz っぽい、と思う。ちょっと 軽やかさがたりない気もしたが、soprano ではなく alto のせいか。時々フリーキー になったりするのだが、もっとこういう音もあると、メリハリが利いて良かった ように思う。以前に Evan Parker のライヴを大谷石採石場跡の洞窟で聴いたことが あるのだが、ノンブレスを使った圧倒的な演奏と思わず比べてしまうだけに。 もちろん、Vogel にそれと同じものを求めるものではないと思うが。 Blak は伴奏に徹している、という感じだ。PA のせいもあるのか、keyboards の 音色がいささか薄っぺらい音なので、ググググと通奏低音のような音を出している ときは良いのだけれど、中高音を弾くとペラペラっとした音になってしまうのが いささか残念。 Tutl は、この他にもこの洞窟コンサートの録音をリリースしている。最初に、 Karsten Vogel, _Light When Dark_ を選んだのは、試聴した感じでは、編成が 小さく音数が少ない方がエコーや波音の効果が際立つように感じたからなのだが。 参考までに、カタログから判る範囲で他のリリースを紹介しよう。 Kristian Blak & Yggdrasil, _Dranger & Concerto Grotto_ (Tutl, HJF33, 1984/95, CD) Blak 率いる jazz バンド (7人くらいの大きめの編成) Yggdrasil による1984年と 1995年の録音を併せたもの。ちなみに、Yggdrasil のメンバーには、bass 奏者 Anders Jormin がほぼレギュラーで参加している。1984年の録音には、Africa 系で Denmark 生まれ、1960s 前半の free jazz の伝説的なバンド New York Art Quartet のメンバーだった John Tchicai が参加している (彼も準レギュラーメンバーだ)。 Kristian Blak, _Klaemint_ (Tutl, HJF55, 1998, CD) Blak の drum-less 4tet 編成での1998年の録音。 John Tchicai, _Anybody Home?_ (Tutl, HJF76, 2001, CD) Yggdrasil をバックに従えての Tchicai の2000年の録音。 2002/05/26 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕