Teagrass _Vecirek_ (Indies, MAM176-2, 2002, CD) - 1)Zidovske Z Mada'rska 2)Zakukala Kukulenka 3)Kedz Sa Mily Do Vojny Bral 4)Doina A Skoena 5)Paslo Divea Pavn 6)B-Complex 7)Crazy Man Michael 8)Stoji Dzievea U Senkysa 9)Pisen Tarogata 10)Tezko Temu Kameni 11)Cajovy Frejlax 12)Vcera Som Si Fialenku Zasala 13)Boogie Time 14)Ej, Janku, Janicku - Zajdi, Slunko, Zajdi 15)Tajela Som, Tajela 16)Sweet Georgia Grass - Produced by Jiri Plocek & Jaromir Kratochvil. Recorded live in Brno, Moravia, Czech, 2002/2/13,14. - Jitka Malkova (vocals), Tatana Malkova (vocals), Stanislav Paluch (violin), Jiri Plocek (mandolin,koncvka), Petr Sury (conrabass), Michal Vavro (guitar), Michal Zpevak (clarinet,tarogato); Katerina Garcia (vocals), Lubos Malina (banjo,low-whistle,tarogato). Moravia (Czech rep. の東部) の Brno を拠点とする Teagrass は、もともと bluegrass を演奏するバンドとして1990年に結成された。 (Czech rep. は country music が盛んだそうである。) その後、Moravia や Slovakia、さらに その周辺の Hungary や Romania (Transylvania), Bulgaria や Ukraine の 伝統的な民謡を bluegrass や jazz などの要素も含めた現代的な演奏で聴かせる バンドへと変化していった。このアルバムは4作目であり、地元 Brno での ライヴ盤である。リリースは、地元 Brno の world music 〜 alternative 系の 大手独立系レーベル Indies から。 Moravia の伝承曲が6曲、Slovakia と Ukraine の伝承曲が2曲ずつ、Hungary、 Romania、England の伝承曲が1曲ずつ、自作が2曲、ルーツ不明の伝承曲が1曲、 という構成。2nd アルバム _Moravian Love Songs_ (Gnosis, G-MUSIC009, 1999, CD) に収録された曲が4曲含まれている。フィーチャーしている2人の女性歌手も2nd アルバムと同じだ。 この界隈の伝統的な演奏スタイルは詳しくないので、いささか誤解があるかもしれ ないけれども、drum 無しとはいえ guitar や violin の演奏はかなり country 〜 folk rock 的な印象を受けるもの。Fairport Convention がよく取り上げていた England の伝承曲 "Crazy Man Michael" を取り上げていて、影響を受けた元が 伺われる。女性歌手の歌唱は、東欧 folk でよく聴かれるようなジャミっとした 感じではなく、伸びやかで、時折 country と思わせるような歌い方だ。それに、 リズムもシャキシャキしている。東欧的な要素を最も感じるのは、ゆうたりした 感じの展開のときの節回し、特に管楽器 (clarinet や taragato) のものだろうか。 "Doina A Skocna" や "Cajovy Frejlax (Ukraine の伝承歌) や "Pisen Tarogata" (Romania の伝承歌) などは klezmer 風 (Jewish の音楽) にすら感じる。 その一方で、"Zidovske Z Mada'rska" は Muzsikas with Marta Sebestyen, _The Lost Jewish Music Of Transylvania_ (Hannibal, 1993) にも出てくる旋律 のようだが、klezmer 風なアレンジではない。 特定の folk 的な要素を巧く相対化するような感じと、さらっとした歌唱やシャキ シャキしたリズム感が、モダンな感じで、下手な alt. country なバンドより 同時代的な生きの良さを感じる音楽に仕上っているように思う。そこが気に いっている。東欧 folk vs country というと Camper Van Beethoven なんかも 連想させられるわけだけど、雑食的な如何わしさを押し出さないあたりが、 1990年前後と今の違いかな、とも思う。 2年前のリリースになるが、前作も良かったので、この新作に併せて紹介したい。 Iren Lovasz and Teagrass _Wide Is The Danube_ (CCn'C, 00902, 2000, CD) - 1)Nem Egyszer 2)Vostyi, Vustyi 3)Kdyby Mne Tak Bylo 4)Berjen Meg Az Iten 5)S Orozgeti Vala 6)Ustyen, Ustyen 7)Szol A Kakas Mar 8)Piros Pantlikamat 9)Kedz Sa Mily 10)Marton Szep Ilona 11)Hegyen, Foldon 12)There Was A Road 13)Byla Cesta 14)Szeles Az A Duna - Produced by Jiri Plocek and Ulrich Ruetzel. - Iren Lovasz (vocals); Jiri Plocek (mandolin,end-brown flute), Michal Vavro (guitar,voila da gamba), Stanislav Paluch (violin,hurdy-gurdy), Michal Zpevak (clarinet,taragot,soprano saxophone, Slovak six-hole whistle flute), Petr Sury (upright bass); Dalibor Strunc (cimbalom), Dusan Kovarik (viola). Teagrass の前作 3rd アルバムは、folk から出てきて幅広い活動をしている Hungary の女性歌手 Iren Lovasz をフィーチャーしたものだった。歌手が Hungary 人ということもあって、取り上げている曲も Hungary 〜 Transylvania (Romania の北西部) の伝承曲が多めになっている。題名からしても、 汎ドナウ川的なコンセプトを感じるアルバムだ。ちなみに、リリースは、 Eslohe, Nordrhein-Westphalen, Germany の world music 系レーベル CCn'C。 Lovasz の歌唱は Marta Sebestyen (同じく Hungary の女性歌手) と比べると、 さらっとした歌唱。しかし、coutry 風というわけでもなく、コブシも軽くまわすし、 ちょっと鼻にかかったような印象も受ける (ハンガリー語の特徴かもしれないが)。 Lovasz の無伴奏の詠唱もあるし、Teagrass のアルバムの中では、country 的な 雰囲気が抑え目で、東欧的な雰囲気を強く感じる作品ではないだろうか。 しかし、Jewish の曲をそれなりに演っているが、_Vecirek_ で聴かれるような klezmer っぽさはあまりないように思う。いずれにせよ、Muzsikas with Marta Sebestyen に比べて、ずっと folk rock 的なアプローチだ。 folk / roots 的なものを取り入れながら、country 的な形式とかを巧く利用して 拠点である Moravia に拘らない脱領域的なアプローチも気にいっている。 今後の活動も期待したいバンドだ。 ちなみに、1st アルバム _Eastbound_ (Gnosis, G-MUSIC005, 1995, CD) と 2nd アルバム _Moravian Love Songs_ (Gnosis, G-MUSIC009, 1999, CD) は Brno の folk 系レーベル Gnois からリリースされている。残念ながら未入手で インタネット上で試聴しかできていない。 2002/09/29 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕