Bumcello
_Nude For Love_
(Tot Ou Tard, 8345 10501 2, 2002, CD)
- 1)3 Bandits 2)Death In Brest 3)Malcolm 4)Money Money 5)Beautiful You
6)Multicolored Coffin 7)Circle Dance 8)Sarareve 9)In The Nude For Love
10)I Got A Loop 11)Africa Dance N 1 12)Frbom 13)Check It Out 14)Funkeiros
15)Clap Dance 16)Blind Fish 17)Over Now 18)Yuri Norstein
- Produced, Composed and Arranged by Bumcello except 9) Composed by Vic Moan,
5) Produced by Chief Xcel, Composed by V. Segal, C. Atef, X. Mosley, T. Parker,
L. Daumont, Lyrics By Lateef The Truthspeaker and The Gift of Gab.
- Cyril Atef (drums,percussions,santur,steel drum,TR 808,melodica,lead vocals),
Vincent Segal (electric and acoustic cello,bass,guitar,fender rhodes,ritchak,
kass-kass,vocals); Herve Cavelier (violin), Jean-Marc Apap (viola);
Manou N' Guessan (vocals), Jean-Claude Ghrenassia (bass),
Mathieu Chedid (guitar), Sebastien Martel (guitar) on 2; Gift of Gab (vocals),
Lateef the truth speaker (vocals), Joyo & Bear (background vocals) on 5,
Lola Khatira (background vocal) on 9,
"SanXe" aka Oswami Bin Loveji (intro vocals) on 11.

Yves Robert Quintet/Trio の drums 奏者 Cyril Atef と、ex-Glenn Fellis Trio で
Dick Annegarn や Thomas Fersen といった Tot Ou Tard レーベルのミュージシャン
のセッションにも参加していた cello 奏者 Vincent Segal による、France を拠点に
活動するユニットが Buncello だ。2人とも jazz 界隈で目にしていた名前だが、
Segal は hip hop 界隈とも交流があるようで、その手のセッションにも多く参加して
いるよう。今年出た _Nude For Love_ でアルバムは3作目だ。(前2作は未聴だが。)

"Beautiful" のように rap をフィーチャーした曲もあるが、全体としては abstract
な hip hop というか、downtempo breakbeats といった仕上りだ。それも、jazz の
文脈で雰囲気的にビートを導入している、というようなものでなく、かなりグルーブ
感がある。全体的に、cello で弾いているとは思えないようなぶっといベース音が、
ぐいぐい引っ張るようなグルーブを出しているのが気持ち良い。

rock / pop のセッションミュージシャンとしての活動も多いせいか、音の引出しは
豊富だ。オープニングは、ちょっと 重めの downtempo に Arab 的な節回しが
乗る "3 Bandits"。感傷的な旋律で rock 的な guitar もフィーチャーされる
"Death In Brest"、ソフトな rap ナンバー "Beautiful You"、攻撃的に dubwize な
"Circle Dance"、cello の爪弾きも軽快な "Sarareve"、South African jive 風だが
割れるようなベース音の "Africa Dance N 1"、手拍子で5拍子を刻む "Clap Dance"
など印象に残る。が、いささか散漫になってしまって、アルバム全体の印象が薄く
なってしまったような気もする。

直接的な影響ではないと思うが、ビート感、編集感覚、音の質感あたりに、1990年代の
Mitchell Froom / Tchad Blake が制作していた一連の作品と似ているように思う。
jazz 的な背景もある生演奏と、hip hop からの影響もあるグルーブ感という点でも、
Soul Coughing と共通するところも多いだろう。その手の音が好きだった人なら、
気に入るだろう音だろう。しかし、プロデューサー的なセンスがありそうなので、
自作よりも、個性的な歌手やミュージシャンをバックアップして制作に回った方が、
作品は面白くなりそうにも思う。

Dupain
_Camina_
(Virgin (France), 7243 812498 2, 2002, CD)
- 1)Camina 2)Diga Janeta 3)Au Jovent 4)Lo Carejaire 5)Cambarada
6)Poble Montanhou 7)La Luna (instrumental) 8)Presonier 9)Margherita
10)Lo Claveau 11)Per Dos Cambaradas
- Produced by Vincent Segal.
- Sam De Agostini (percussion,drums from Marseille,backing vocals),
Noel Baille (bass guitar,backing vocals),
Samuel Karpienia (voice,mandole,tambourine),
Pierre-Laurent Bertolino (vielle a roue,backing vocals);
Vincent Segal (cello,keus-keuss), Cyril Atef (daf).

南仏 Marseille, Provance を拠点に活動する Dupain は、vielle (hurdy-gurdy) や
tambourin (frame drum) といった folk の楽器を用い、Provance 語 (Oc 語) による
歌を歌うバンドだ。といっても、伝統的なスタイルの音楽ではなく、重いベース音と
ビートの反復が生むグルーブは、reggae や hip hop と共通するものさえ感じる
音楽を演奏している。

Bumcello の Vincent Segal を制作に迎えた新作2nd アルバムは、Atef も演奏に
参加しており、Bumcello のバックアップで制作された作品と言っていいだろう。
前作 _L'Usina_ (Virgin (France), 7243 849317 2 8, 2000, CD) は音も荒削りで
勢いを感じさせる作りだったが、この新作ではかなり音が整理されている。特に、
前作ではささくれ立っているかのようだった vielle の音が、新作では柔らかく
なっているのが少々惜しい。しかし、グルーブ感を殺がないようにしているのは
さすが Bumcello の制作だと思う。ただ、_Nude For Love_ でいろいろやっている
だけに、Dupain の音楽性の幅をもう少し広げてやっても、と思うところもあるが。

というわけで、新展開は無いが、前作同様、単調に唸る vielle と重いグルーブの
取り合せが、充分楽しめる作品に仕上っている。

2002/10/30
嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕