Sonic Youth / I.C.P. / The Ex
_In The Fishtank_
(Konkurrent / In The Fishtank, 9, 2002, CDS)
- 1)III 2)IV 3)V 4)VI 5)II 6)VIII 7)IX 8)X
- Recorded 2001/6.
- Sonic Youth: Lee Ranaldo (guitar), Thurston Moore (guitar),
Steve Shelley (drums), Jim O'Rourke (electronics), William Winant (percussion);
I.C.P.: Ab Baars (reeds), Han Bennink (drums), Wolter Wierbos (trombone);
The Ex: Luc Ex (bass guitar), Terrie Ex (guitar).

Netherlands の post-punk / avant-rock 系の独立系レーベル Konkurrent の企画
ミニアルバムCDシリーズ_In The Fishtank_ の第9弾に、Netherlands のベテラン
post-punk バンド The Ex が再登場した。3年前の第5弾では、Chicago の post-rock
バンド Tortoise との共演だったが、今回は、New York の post-punk のベテラン
Sonic Youth と、同郷 Netherlands の free jazz / improv. 集団 I.C.P. との
共演だ。といっても、フルメンバーでではなく、Sonic Youth の Kim Gordon は
いないし、I.C.P. からは3人、The Ex からは2人の参加だ。

Sonic Youth や I.C.P. の面子をゲストに迎えた The Ex のアルバムといえば、
_Joggers & Smoggers_ (Ex, EX040/041D, 1989, 2CD) があるし、1990年代は
The Ex & Guests, _Instant_ (Ex, EX063/064D, 1995, 2CD) など I.C.P. をゲスト
に迎えての録音も多い。この _In The Fishtank_ も improv. 色濃く、それらの
延長にあると言える。しかし、それらとの耳につく音の違いといったら電子的な
音弄りだろう。派手に音を弄っているわけではないが、違うテクスチャーを感じる。
そういう意味で、Jim O'Rourke の参加は大きいと思う。その一方で、_Instant_ に
感じられたような、玩具箱をひっくり返したようなチャカポコした音感やユーモアは、
あまり感じられない。それはちょっと惜しい。といっても、3年前の Tortoise との
共演盤より、ずっと楽しめると思う。

Ex Orkest
_Enn Rondje Holland_
(Ex, EX096D, 2001, CD)
- 1)De Weg 2)Kokend Asfalt 3)Symfonie Voor Machines 4)Meer Nieuws 5)Spruitjes
6)Een Rondje Holland 7)Gronings Liedje 8)My Happiness 9)Rosenkohl 10)Uitgeest
11)Stukverdriet 12)De klokkenluider
- Recorded live 2000/6/8-11.
- Terrie (guitar), Andy (guitar), Luc (acoustic bass), Katrin (drums,vocals),
G.W. Sok (vocals); Jaap Blonk (vocals), Han Buhrs (vocals),
Jan Mulder (vocals), Roy Paci (trumpet), Felicity Provan (trumpet),
Wilf Plum (drums), Michael Vatcher (drums,percussion),
Ferry Heyne (valve trombone,trumpet,tuba), Wolter Wierbos (trombone),
Joost Buis (trombone), Michael Moore (saxophone,clarinet),
Wilbert de Joode (double-bass), Ernst Glerum (double-bass),
Gert-Jan Blom (singing saw,groove-box),
Hamish McKeich (director,electric bassoon).

2000年に The Ex が結成20周年を記念して企画し、地元 Amsterdam での記念ライヴ
を始め欧州ツアーしたのが、The Ex を核とするビックバンド Ex Orkest だ。
Han Bennink が参加していないとはいえ I.C.P. で活躍するミュージシャンが多く
参加しており、I.C.P. Orchestra の avant-rock 版ともいえる。2000年のライヴ
音源を集めたアルバムが去年リリースされていたのだが、最近、やっと入手した。

オープニングは控えめな演奏を背景にしたテキスト朗読 "De Weg"。それに続く
"Kokend Asfalt" は、The Ex + Tom Cora, _Scrabbling At The Lock_
(Ex, EX051D, 1991, CD) のオープニングを飾っていた "State Of Shock" の
歌詞を変えたヴァージョン。Cora が弾いていたテンション高めの cello の
フレーズを、trombone や singing saw のソロ、ビックバンドでの合奏で聴かせて
くれる。迫力のある切れ味良い演奏だ。それに続く "Symfonie Voor Machines" は、
Russian avant-garde の名曲 Alexander Mossolov, _Zavod (The Iron Foundry)_
(1926; 『鉄工場』) の Ex Orkest ヴァージョン。electric guitar のノイズも
あって、まさに工場という感じの迫力になっている。"Kokend Asfalt" と
"Symfonie Voor Machines" の2曲が、このアルバムのハイライトだろう。
もちろん、それに続く曲も、東欧っぽい曲もあったりと、悪くない。

編成が大きいバンドは、音が厚くなる一方でノリが甘くなって鋭さが無くなり
がちだと思う。The Ex は punk 的な鋭さを持った演奏がウリだっただけに、
この Ex Orkest の企画を知ったときは、ちょっといやな予感がした。しかし、
実際に音を聴くと、勢いや鋭さは殺がれていないように思う。厚いブラスによる
伴奏を付けるいうより、比較的ソロに重きを置いていることも、大きいように思う。
punk 色濃い avant-rock な演奏と jazz big band の共演の試みとしては、
なかなかの秀作ではないだろうか

The Ex
_Dizzy Spells_
(Ex, EX085, 2001, CD)
- 1)Town Of Stone 2)Nobodies' Dream 3)Walt's Dizzyland 4)Time flies
5)Oskar Beck 6)Burnsome 7)The Chair Needs Paint 8)Fistful Of Feed
9)Haydays 10)River 11)Karaoke Blackout 12)Little Atlas Heavyweight
- Produced by Steve Albini.
- Katrin (drums,voice), Terrie (guitar), Andy (guitar), Luc (bass),
G.W. Sok (voice).

Ex Orkest, _Enn Rondje Holland_ に若干先行して、The Ex のアルバムもリリース
されていたのだが、遅れ馳せながら紹介。

制作は、前作 _Starters Alternators_ (Ex, EX074D, 1998, CD) に続いて
Steve Albini で、相変わらず、1980年頃の post-punk がかった punk の音
(Wire や The Fall あたり) を思わせる音だ。Sonic Youth / I.C.P との共演盤や
Ex Orkest と並べて聴くと、ちょっと単調かな、と思う。ただ、France の
Noir Desir や、Russia の Leonid Fedorov などとも共通する、ザラッとした
強さを感じる。最近は英米の rock の多くは聴く気になれないのだが、The Ex
や Noir Desir を聴く気になれるのは、そういう質感のせいのようにも思う。
Sonic Youth や Fugazi の影も見え隠れするし、緩やかなシーンというか
ネットワークが出来ているようにも思う。

2002/12/09
嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕