Arnaldo Antunes / Carlinhos Brown / Marisa Monte _Tribalistas_ (Phonomotor / EMI Brasil, 542148-2, 2002, CCCD) - 1)Carnavalia 2)Um A Um 3)Velha Infanicia 4)Passe Em Casa 5)O Amor E Feio 6)E Voce 7)Carnalismo 8)Mary Cristo 9)Anjo Da Guarda 10)La De Longe 11)Pecado E Lhe Deixar De Molho 12)Ja Sei Namorar 13)Tribalistas - Produced by Marisa Monte. Co-produced by Ale Siqueira, Arnaldo Antunes and Carlinhos Brown. - Arnaldo Antunes (vocals), Carlinhos Brown (percussions,vocals), Marisa Monte (viola de nylon,vocals,etc); Cezar Mendes (viola de nylon,etc), Dadi Carvalho (viola de aco,etc); Margareth Menezes (viola de aco,vocals) on 4, Dora Buarque de Hollanda (fala) on 9. Arnaldo Antunes は、元 Titas で、詩と音と映像のコラージュとでもいうべき _Nome_ (BMG Brasil, M30.072, 1993, CD) で衝撃的なソロデビューを飾り、以降も、 Suba などとも先鋭的な音作りをしてきた男性歌手・詩人だ。Carlinhos Brown は、 打楽器中心の楽団 Timbalada を率いていた打楽器奏者だ。Marisa Monte は、 Arto Lindsay 制作の _Mais_ (EMI-Odeon Brasil, 796081-2, 1991, CD) を契機に Brasil 外でもポピュラリティを獲得している女性歌手だ。そんな、1990年代以降の Brasil のポピュラー音楽の一面を引っ張ってきた感もある3人が結成したバンド _Tribalistas_ が、アルバムをリリースした。 最近の Monte のアルバムは甘過ぎに感じることが多いわけだけれども、そんな中で 雰囲気を引き締めていたものの一つが、Antunes のちょっと鼻にかかったような癖の ある声だったと思う。そもそも、_Nome_ で2人のデュエット "Alta Noite" を聴いて 以来、Monte と Antunes の声の相性がとても気に入っていた。ロマンチックな曲も ぐっと引き締まると思う。そして、ほとんどの曲で2人の声が交わるこのアルバムは、 この2人の声の取り合わせが堪能できる。 Antunes の側から見ても、慣習的な rock / pop のフォーマットを取らなかった _Nome_ の後、rock / pop のフォーマットに従っているにはいささかキャッチに 欠ける感があって、半端な印象も否めなかったのだが。Monte をフィーチャーして ぐっとキャッチのある曲になっているように思う。曲は全て3人による自作曲 (数曲、他のミュージシャンもクレジットされているが) で、bossa nova や MPB の クラッシックのカヴァーは無し。そんなこともあって、直接的な Brasil っぽさは 控えめで、明るめの pop という感じだ。柔らかく歌うバラード調の曲が多いのだが、 "Je Sai Namorar" のような rock 的なアップテンポな曲の方が気に入っている。 こういう曲がもっとあったら、と思う。 _Tribalistas_ は、Monte のアルバムとしても _Mais_ に次ぐくらいに、Antunes の アルバムとしても _Nome_ に次ぐくらいに、僕はこのアルバムを十分に楽しんでいる。 もちろん、Brown が鍵となっていると思われるグルーヴ感も良い。期待以上では なかったけれど、期待は裏切っていない作品だった。 しかし、残念なのはオーヴァープロデュースな印象もあるサウンド。音を厚くし 過ぎで、とても耳当たりがいい印象を受ける。そういう意味で、良く出来た pop の アルバムだとは思う。金をかけた音だとも思うし、「大物」っぽいとも思う。 しかし、もっと音数をミニマルにして、_Nome_ のときのような、一つ一つの音の 質感が際立った音作りで聴いてみたいようにも思ってしまった。このアルバムには、 初めて "Alta Noite" を聴いたときのようなインパクトは無いように思うし。 この2人の歌声を聴いていると、_Nome_ のような試みを再び、と、つい思って しまうのだ。_Nome_ と同じことをするわけにもいかないだろうけれども…。 2002/12/23 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕